マスター・ツートンのちょっと天使な添乗員の話

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

こんにちは。海外添乗員のマスター・ツートンです。天使の添乗員です。

長年している海外添乗員という仕事の中で、経験したことを、ドキュメント小説風にシリーズとして書き上げていきます。

海外旅行好きの方、旅行や添乗のお仕事に興味のある方は、ぜひお立ち寄りください。時には、旅の情報も載せますよ。

コメントはお気軽に。返信は必ずします。ただし、誹謗中傷や内容に関係ないものは、ただちに削除いたします。

昨日、仲のいい友人と食べて、飲んだ。
街中はすっかりコロナ禍前と同じようになっている気がした。外を歩く時にマスクを外している人も増えた。
さすがに店の中に入ると、店員さんはマスクをしている。そこだけかな。前と違うのは。

コロナ禍前、接客している人間がマスクをしているのは無礼だくらいのことを言われていたことを思い出す。再びそれが常識となる日がやってくるだろうか。着用は自由、または衛生的で良しとされるような気がしないでもない。

久しぶりにバーに行った。出会った頃は、ベストを来てカウンターの端で仕事をしていた女性が、今や、その店ではメインバーテンダーの証である黒いジャケットを来て、店の中心で凛々しくカクテルを振っていた。
しかも、めちゃくちゃ美味い。考えてみると、彼女がその店に入ってから10年近く経っている。その間にコンクールでタイトルを取った。コロナ禍に入って休業に追い込まれた日々があっても、陰で努力を重ねて、着実にキャリアを積んでいくことを怠らなかった証だろう。

昨日、来年2月のツアーの依頼が来た。随分と先の話だ。だが、今度はパンフレットに名前が載るらしい。振られた仕事は全て受ける。今は何もかも受けて、結果だけを出すことを考える。
しばらくの間は、リクエストされるツアーしか仕事がないだろう。でも、勝手に僕が考えている戦略がある。
ツアーの数が増えてきた時、現在協力的で結果を出せる添乗員が多い派遣元に旅行会社はツアーを提供するだろう。
そう思うと、今はなにからも逃げてはいけない。

ということで、今日も働くか。コールセンターで。
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上から洋梨のダイキリ、巨峰を使ったカクテル。いずれもフレッシュフルーツ。下はフラパン。とても美味しいブランデー。贅沢したから、週末は大人しくしています。
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ここに来て、海外ツアーの添乗員レポートをシェアしてもらったり、直接LINEメッセージでアドバイスをもらうのだけど、コロナ感染対策については、驚くほど少ない。
公共交通機関利用の際は、マスク着用を義務付けているケースがあるようだが、ほとんど専用バスで移動するツアーには関係ないから、そのあたり実感がないのだろうか?打ち合わせで確かめるだけで十分ということか?
物価高についても殆ど記されていない。どこかの芸能人など「日本が終わった」くらいの勢いでブログに書いていたのに。地域や訪問国によって、実感に差があるのは確かだろうけど、僕の知り合いは、だれもそこに言及していないってどういうことなのか?
ネガティブなことを避けているのか?当たり前だから書かないのか?それとも久々の海外で、物価以上に気分が舞い上がっているのか。
これも打ち合わせまで待つか。

久しぶりの添乗まで、あと15日。
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(これまでの登場人物は、こちらでご覧ください。)

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「心配しないでください。絶対後悔しないし戻ってきませんから。」

「いや、とっとと後悔して戻って来い。後悔先に立たずだが、この場合、後悔後に立っても問題なしだ。正社員の復職とは訳が違う。添乗員の派遣登録などあっと言う間だ。すぐに復帰できる。」

礼儀正しく辞める報告をしようとしたのに、匡人には、気持ちよく送り出そうとする様子が全く見えなかった。二人は、居酒屋でビールと枝豆と茄子の浅漬けだけを頼み、それすら全てたいらげずに出てきた。

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「それ本当?巴さんが、あなたにそんなことを言ったの?」

失望とさえ言ってもいいような気持ちを匡人に抱いた杏奈は、やるせない気持ちをぶつけるべく優佳に電話をしてきた。あの時の美しい涙の別れはなんだったのだろう。

「ひどいですよ!頑張れの一言もなしですよ。優佳さんが、巴さんのことを悪く言うのがよく分かりました。」

杏奈が、泣く一歩手前のテンションで訴えているのを聞きながら、優佳は匡人がそんなことを言うなど信じられずにいた。

派遣元での匡人の立ち振る舞いは、かなりはっきりしている。例えば、後輩たちに対してなら、多少能力的に劣っていても頑張っている者には、優しく声をかけて聞かれたらなんでも答える。能力の有無にかかわらず努力が見えない後輩には、びっくりするくらい見向きもしない。能力があって努力している後輩はかわいくて仕方ないようで、自分からなんでも教える。時に迷惑がられるくらいだ。傍から見ていて驚くほど分かりやすい。「この人は、添乗中、複数のお客さんと公平に接しているのだろうか」と心配になるほどだ。

杏奈は、最後の、「能力があって努力するタイプ」だ。おまけに背の高い美人だし、他のどんな若手や後輩よりもかわいがっていた。彼女が辞めることで残念な気持ちは分かる。優佳もそうだ。だが、本当にかわいがっていたなら、別れ際、最後に励ましの言葉くらいは贈って欲しいと思った。

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匡人の冷たく厳しい態度の理由が分かったのは、それから二日後のことだった。

スカイツアーズの打ち合わせに出向いた優佳は、添乗員ルームで匡人を見つけた。この旅行会社の打ち合わせ時、添乗員のデスクは常に指定制だ。だいたい同じ派遣元の添乗員同士でまとめられる。この日、ドルフィンから来た添乗員は四人。優佳と匡人は隣同士だった。ふだんの優佳なら「げ!」と思うが、この日は違った。杏奈とのことを聞くいい機会だと思った。

「お!珍しい。今日はこっちなのか。」

優佳に気付いた匡人が先に声をかけた。優佳が軽く会釈をしてとなりに座った。

「有事ならではのアサインだそうです。私はあっちのほうがいいんですけど。」

「僕にとっては、あっちのツアーに行くほうが、よほど有事だ。」

「こっち」というのは、この場合スカイツアーズのことだ。「あっち」は、ニューワールドを指す。現場では、旅行会社の名前を出さないのがマナーだ。ともに格安系のパッケージツアーを主要商品としている。匡人は、このスカイツアーズと、高額商品のGTS、そして超高額商品のファーストクラストラベルで仕事を回している。

優佳の仕事の大半はニューワールドだ。その中で格安から高額商品まで、いろいろこなしている。稀にスカイツアーズの仕事が入る。

添乗員が働く旅行会社は、営業が決める。細かい行き先が添乗員の思い通りになることはあまりないが、旅行会社は添乗員個人との相性があるので、ある程度願いがかなえられることが多い。

慣れないスカイツアーズのオフィスで、優佳は匡人にいろいろ聞きながら準備を進めた。他のベテラン勢二人も、よくここには来るはずなのだが、匡人の仕事のスピードが断然早い。彼の準備の早さについては、自分も見たことがあったし、他の添乗員からもよく聞く。しかし、これほどだったろうか。

優佳は、舌を巻きながらハッと気づいた。杏奈のことを話さなくては。

「巴さん。今日、準備の後、少し時間を取ってくれませんか?たまにはご飯でも行きましょうよ。話したいことがあるんです。」

「珍しいね。福居が誘ってくれるなんて。」

と、言いながら、匡人は少し不満そうだ。

「嫌なんですか?」ムッとして優佳が尋ねた。

「せっかくだから行きたいよ。でも、夕飯の時間まで待たないとだめなの?僕、もうすぐ終わるんだけど。」

「え?まじ?まだ始まって一時間ちょっとしか経っていないですよ。お客さんへの挨拶電話は?」

「これから始めるけど、二十人のグループで、夫婦が八組だから。一時間もあれば終わるよ。」

「二十人で夫婦八組。一人の方が四人・・・合計十二件の電話を一時間?」

「終わるよ。よほど質問が多い方がいなければね。」

ベテラン二人のうち、四十代後半の男性が呆れた顔で二人のほうを向いた。

「こいつ、本当にやっちまうからなあ。必要最低限のことしか話さないし。あれでいいのかって思うよ。」

「電話なんて、お客さんのほうだって早く切りたいんですよ。暇じゃないんだから。どうしても言わなきゃいけないことを言って、細かいことは、その場その場で案内したほうがいいに決まってます。電話でいろいろ言われたって、なかなか理解できませんよ。それこそ添乗員の自己満足です。」

ベテラン男性添乗員は、顔を真っ赤にして、何か言いたいことがあるのを堪えているかのように作業に戻った。年齢でなく、実力が全てである添乗員の世界を象徴している風景だった。

かつて人間関係に苦労したせいか、他人から自分の仕事への干渉、ことベテラン添乗員からつまらない指摘を受けた時の匡人は容赦がない。意見が対立した時は、寄せ付けないどころか遥か彼方に相手を遠ざけるような物の言い方をするところがある。口調は冷静でも、言葉の端々に突き刺すような何かを感じる。

少々怒っているような匡人の表情を見て優佳は思った。「雰囲気悪くなったし、今日は話さなくてもいいかな・・・。」

今日は自分が気圧されていた。精神的に不利な立場で匡人と話したくない。

「巴さん。私、もう少し時間かかりそうだから、また今度にしましょうか。」

「いや、いいよ。待つ。」

「え?待てないんじゃないんですか?」

「待つのは嫌だけど、今日は待つ。夕飯の時間までかかるならそれまで待つよ。僕も福居と話したかった。たぶん、お互いに同じことを話したいんだと思う。」

「・・・そうかもしれませんね。」

「木崎のことだろう?」

「はい。」

「待つよ。」

「ありがとうございます。」
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2022102日の夕方。知り合いからメールが入った。

「ハワイ行きの便が取れたので急遽行くことにしました。今、羽田です。国際線は賑わっていますよ。ラウンジにもけっこう人がいます。ツートンさんの本業再開も近そうですね!」

僕自身、各空港の国際線エリアには、20203月以来行っていない。直接の知り合いから聞いた現場の情報は初めてだ。

そうか。賑わっているか。それはよかった。思わず電話をかけて話してしまった。

10月に入り、もう3日なのかまだ3日なのか。あー・・・下旬が待ち遠しい!

 

ところで、オミクロンワクチンは、せっかく政府が早く対応にしたのに、いまいち予約の出足が鈍い。検査陽性者数が少ない時は、こんなものなのだな。
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週末の隅田川周辺。特に永代橋付近は最高に美しかった!
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-20114月中旬 東京-

ドルフィンを去るにあたって、杏奈は、大半の仲間には電話で知らせた。ふだんはオフィスで会わない添乗員同士のお知らせなどそんなものだ。

しかし、三人だけには実際に会って報告した。一人は同期の元子。そして優佳と匡人だ。一年半の添乗員生活の中で、この三人とは、特に付き合いが深かった。

二人の先輩のうち、優佳は残念がりながら杏奈の決心を尊重した。

「あなたの力があれば、どの業界でもやっていけるよ。」

引き止められなかった自分の無力さを感じながら、精いっぱい前向きな笑顔で送り出そうとしたが、・・・だめだ。涙が出てしまう。

杏奈ももらい泣きだ。初添乗前の研修旅行ツアーでは優佳が講師だった。小柄だがパワフルに動き、優しいが強い言葉でお客さんを導き、きめ細やかなサービスで喜ばせていた。

「添乗員は、英語ではツアーリーダーって言うでしょ?文字通りリーダーなの。だからリーダーシップを発揮しないとお客さんがついてこないんだよ。」

そう言いながら、お手本のようなリーダーシップを見せてくれた。事あるごとにメールでアドバイスをくれた。まだまだ教わりたいことがたくさんあった偉大な先輩であり、師匠だった。

「絶対にやめちゃだめだよ」と言われ続けていたので、この時は、いろいろ厳しいことを言われると思っていたが、様々な思いを堪えるように優しくしてしてくれるから、よけいに切なく涙が出た。
一度も肩をつけない杏奈のカフェラテは、ラテアートのラスカルがそのまま残っていた。

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「すぐに取り消せ。この時期にそんなことで辞めるなんて馬鹿げている。」

予想していなかった匡人のきつい反応に、杏奈は一瞬呼吸が止まるほど驚いた。報告の際、優佳からは厳しい言葉を、匡人からは優しい言葉をかけられると思っていたが、実際は真逆だった。

熱血指導の優佳に比べて、匡人はいつも冷静なアドバイスをくれた。くだらない悩み事を言っても、怒られたことがない。若手の自分の言葉を、いつも吸収してくれた。しかも、会話がウィットに富んでいて実に面白かった。スリムでやや長身の美人である杏奈は、時々男性陣から飲みに誘われたが、二人だけの誘いに応じたのは匡人の時だけだ。そのスマートなエスコートは日本人離れしていて、時々誘われるのが楽しみだった。

この日も、最後の「デート」を楽しみにしていたのだが・・・。

「だいたい居酒屋ってなに?今アルバイトしているところだろ?」

「はい。店長に正社員の登用制度があるからやってみないか誘われました。添乗員みたいに、急に仕事がなくなることもないし、安定していそうだし、いいかなって。」

「添乗員だって、今みたいなことは滅多にないよ。」

「それはそうかもしれないけど・・・」

「本当の理由はなんなんだよ。安定だけ?目先のお金のこともあるんじゃないの?家賃が重くなっちゃったとか。一気に貯金を切り崩すのが怖いとか。」

図星だった。仕事が安定してきて、前職も含めてやっとの思いで貯めた七十万円ほどの貯金が、一気になくなってしまうような気がして怖かった。優佳から、「巴さんは、お金に困ったことがないから、駆け出しの頃の貧乏添乗員の気持ちは分からない」と聞いていたが、そんなことはなかった。

気持ちは分かるかと言われたら、分からないかもしれない。だが、匡人はこの件で優佳に「苦労知らず」呼ばわりされたことで、金銭の話には敏感になっていた。それに家賃は、急な節約を求められた時、突発的に出費を削ることができない唯一のものだ。使用を控えることで、多少コストを抑えられる光熱費とは違う。辞める動機に挙がることは容易に想像できる。

「一気にお金がなくなるのが精神的に負担だったら借りればいい。」

「え?誰から?」

「親に決まっているだろ。」

「そんな・・・実家に帰って来いって言われちゃいますよ。」

「こんな時のための親だろ?事情を話せば貸してくれるって。くださいって言っているわけじゃないんだから。家賃いくらなの?」

「・・・六万八千円です。」

「じゃ、とりあえず三か月分だな。二十万円を親から借りろ。必ず返すからって。それくらい猶予があれば、添乗員の仕事は戻ってくる。木崎なら、添乗が始まれば問題なく返せる金額だ。しかも親なら無利子だぞ。たぶんな。」
尤もげではあるが、匡人にしては、かなり強引な言い方だった。

「ちょっと、なにを勝手に・・・」

「居酒屋の仕事で安定してたとして、お金の心配がなくなった後、その仕事を続けられるのか?二か月で添乗の仕事が戻ってくる保障はないかもしれない。なら、居酒屋のほうはどうなの?正社員の登用制度ってなに?試験はあるの?あるとして、いつから受けられるんだ?確実に正社員にたどり着けるのか?」

「それは・・・」

「調べてないのか?せめて調べてからそこに行けよ。」

厳しい言葉に、杏奈は唇をかんだ。

「きっと続かないけどね。居酒屋の仕事は、添乗員の仕事があって、その合間だから今までは続けられた。それ一本に絞ったら無理だよ。君が続けられる仕事じゃない。」

「なんですかそれ!居酒屋の人に失礼じゃないですか!」

「居酒屋の悪口を言ったんじゃない。君には続けられないって言ったんだ。」

この日の匡人は、今までの優しい先輩である彼とは違った。杏奈は、優佳が「あの人とだけは合わない」というのが、初めて分かったような気がした。
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