マスター・ツートンのちょっと天使な添乗員の話

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

こんにちは。海外添乗員のマスター・ツートンです。天使の添乗員です。

長年している海外添乗員という仕事の中で、経験したことを、ドキュメント小説風にシリーズとして書き上げていきます。

海外旅行好きの方、旅行や添乗のお仕事に興味のある方は、ぜひお立ち寄りください。時には、旅の情報も載せますよ。

コメントはお気軽に。返信は必ずします。ただし、誹謗中傷や内容に関係ないものは、ただちに削除いたします。

東京見物の案内は思ったよりもうまくできた。日頃散歩に行ったり食事に出かけたりするところを通ったりしたので、東京に住んでいる者としての案内はうまくできたと思う。

スカイツリーの麓に、あれほど大きな団体バス専用駐車場があるのは知らなかった。また、駐車スペースの利用時間はかなり規制されていて、ヨーロッパよりも遥かに厳しく管理されているようだった。
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スカイツリーの団体バス用駐車場にやってきたハトバス。リラックマのデザインがなんともかわいらしい。微笑ましいどころか笑えた。中からは子供たちでなく、台湾人のマダムたちが恥ずかしそうに降りてきたので、よけいに笑えた。
浅草、スカイツリーの自由行動では、「地元民」としての知識を披露しながら、おすすめのお菓子や飲食店などもご案内した。
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歩きなれた浅草寺も団体を案内するのはとても新鮮だった。
今回のツアーは、東京二泊三日の旅。初日のみ添乗員が案内をして、その後は帰着まで完全フリーという内容。面白いことに、かなりの方が東京のリピーターだった。

「明日はね、私は銀座で姉夫婦に会うの。主人は横浜で兄弟たちと会うのよ。」

なら、ご自身でホテルや航空機をとればいいのに。

「個人で取るよりもこういうパッケージのほうが安いのよ。帰りはバラバラだから好きに帰れるし。」

そういえば、ホテルはけっこうな上ランクの素泊まり。そして九州各地のからの往復航空券込みで五万円少々というのは安い。こういうツアーの使い方もあるんだな。しかも添乗員が関東の人間ならある程度の情報を得られる可能性もある。よくよく聞いてみると、この手のツアーの使い方をされる方が大半だったようだ。

そんなこんなでスカイツリーと浅草寺の案内という、東京経験値高めのお客さんたちのわりに、超初心者向け内容の観光を終えてからホテルに到着して仕事を終えた。

最後は、笑顔でツアーを終えた楽しい仕事だった。

 

ところが、アンケートの結果はイマイチだった。決して悪くはないが、日頃の海外ツアーのものと比べると、ずいぶんと差があった。

褒めちぎってくださっているものもあったが、一部の方にとっては、空港での添乗員とツアー客の待ち合わせ方について不満が解消されていなかったようだ。

そこで気分を害されたお客さんたちからの信用を回復しきれなかったのだろう。

「最初、自己紹介の時に拍手がすくなかったもんなあ。たった一日で全員分の信用を回復させるのは無理だったか。」

「仕方ない」という気持ちでそんなことを呟くと、厳しい指摘が飛んできた。

「いや、違うね。」

「何が?」

「何がじゃないよ。お前はこの仕事に全力で取り組まなかったんだよ。だからこうなった。」

「は?そんなことないよ。ちゃんとやったよ。」

「ちゃんと?まあ、ちゃんとはやったな。でも、全力じゃない。最初にお客さんたちから不満を持たれた後、きちんとフォローをしなかった。」

「したよ。空港ターミナルを移動しながらのミートだから、どうしてもお待たせすることになってしまったって。」

「あんなバスの中での一言が36人に届くわけないだろう。コミュニケーションがとりやすい少人数ツアーじゃないんだから。お前、ふだんはそんな能天気に考えないだろうに。」

「だとしても、リカバリーするには時間が短すぎる。」

「そういう決めつけも普段はしない。」

「は?」

「これが、海外ツアーなら、お前は必死に考えて行動して、どうにかなるところまで辿り着こうとしただろう。『自分は平気でお客さんを待たせる添乗員ではない』ということを証明して見せただろう。いつものツートンなら、どんなケースでも諦めないからな。

確かに国内添乗では、品質の均一化のために添乗員のパフォーマンスは好ましくないとされているから、余計な動きはしにくい。でも、自分のせいでもないのにお客さんが不満を募らせていたなら、それを解消するために動くのは当然だろう?少しくらい上から指摘を受けたって『クレーム防止と満足度向上のため』と言えば、納得させられるだろう。こんな結果になるくらいならな。こういう辻褄合わせは得意だろうに。」

「・・・・・・。」

「手配で足りない部分は、現場でなんとかする。内勤に文句を言うのは、無事に帰着したうえで建設的に。それがいつものツートンだろ?」

「・・・・・・。」

「分かったか?お前は今回の仕事を、海外ツアーと同じモチベーションでやっていなかったんだよ。しょせん本職じゃないみたいな気分でやっていたんだよ。お客さんがそれを見逃すはずがない。たまにこんなことがあるから、ツートンは一人前の添乗員であっても一流にはなれないんだ。」

グサッときた。肝に銘じよう。次のツアーはすぐにやってくる。

国内ツアーは、海外ものとは比べ物にならないほど数が多いので、よほどの大問題が記載されていなければ、アンケートはスッと目を通して終わりだ。今回のものも「問題ありませんね」で終わりだった。

でも、僕個人にとってはそれで片づけていい問題ではない。

厳しい言葉を肝に銘じよう。次のツアーはすぐにやってくる。
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当日朝、僕は最初に羽田空港の第二ターミナルに向かった。まずは10名のお客さんのお出迎えだ。

「あら、今回はたったこれだけ?」

集合後に目をキラキラさせて喜ぶマダム。でも、そんな都合のいいはずもなく、

「いえ。この後第一ターミナルに移動してJAL便でいらした方々と合流します。」

「それはそうよね。で、今回は全部で何人?」

36人です。」

マダムだけでなく、10人全員の瞳からキラキラが消えた。

「ん?知らなかったのかな?」と考えながらすぐに思い出した。このツアーでは、海外ツアーのように事前の挨拶電話をかけなかった。ふだんなら、そこで人数をお知らせするのだが今回は機会がなかった。

確かに、36人ともなると昭和の学校の遠足レベルの大所帯だから嫌だろうなとは思う。

少々不機嫌なオーラを背中に感じながら誘導する。ちょっと落ち着いてきたかなと思ってところで、

「ツアーと言っても、みなさんでまとめて動くのは今日だけです。それもどこの観光も自由行動。人数はそれほど影響しません。」

「それもそうね。」

少し和らいだ空気を感じながら、第一ターミナルの集合場所に着くと今度は別の不機嫌が待っていた。

「あんた、いつまで待たせる気だったんだ?」

「え?」

ここでの集合は10時だったはずだ。

「私たちがもっと早い時間に着いているのは分かっていただろう。それを見越してもっと早く来なきゃだめじゃないか。前の添乗員なんて30分前には来ていたぞ。」

あーそうか。この人たちは、僕が別のターミナル経由でここに来たことを知らないのだ。

「理由は後から説明します。」と言いながら点呼をとった。全員集合されていたのでバスが待つパーキングに向かったが、歩きながら先ほどとは比べ物にならない不機嫌オーラを背中に感じた。

バスに乗って、添乗員の自己紹介をしても拍手は殆どなし。少なくとも僕の耳に入って来たのは、斜め後ろに座っていた女性客が「パチパチ」とした二回のみ。

「やばい。嫌われている。」と思った僕は、慌てて「後から説明します」という公約を果たすことにした。

「今日は空港への皆さんの到着が、ターミナル二つに分かれておりまして、後からお伺いした第一ターミナルに集合された方々には大変お待たせいたしました。」

と言うと、「あら、そういうことだったの。」、「そういうことは早く言えよ」、「朝からおつかれさま」といった声とともに張り詰めた緊張が解けてきて、やっとそこから普通のツアーになった。

「正しい言い訳は必要だな」と思った。「適切な説明」とても言うべきか。

昭和から平成初期ではあれば、それでも「見苦しい言い訳はするな!」とか「そういう事情があるなら前もって分かるようにしておきなさい!」というさらなるお小言が待っていただろう。

でも、最近のお客さんは、あまりそういうことは言わない。「添乗員からの出発前連絡はない」ということは案内書面に書いてあったし、たかだかこの程度の案内のために電話や書面などのアイテムで、案内する側とされる側がお互いに拘束されるのはバカバカしいと思う方が増えてきた。

最近は、とんでもないクレーマーの、理不尽過ぎるクレームがある一方で、大半のお客さんの理解がとても深く優しい。でも、それを得るために必要なのは、「正しい言い訳」であり「適切な説明」なのであった。
そういえば前日に、国内添乗員からもらったアドバイスは「普通に立ち回れば問題ない」だった。「普通の対応」ではなく「立ち回り」というのは、こういう意味だったのだろうか。

さて、次回は東京見物。
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「これは大変そうだな。」

打ち合わせの書類を眺めながら思わずつぶやいた。

「どうかしましたか?」

隣に座っている若い添乗員が声をかけてくれた。彼は、添乗員ルームでたまに見かける人なのだが、国内専属で仕事をしているため、会話を交わしたのは初めてだった。

「これです。羽田の第二ターミナルで、920分にANAで岡山と宇部から来たお客さん10人を出迎えた後、第一ターミナルに移動してJAL利用で来たお客さんたち26人を10時にお出迎えです。飛行機遅れたらどうすればいいんだろ。タイトだなあ。」

「それくらい国内の仕事では常識です。普通に立ち回ればなんの問題もありません。」

サラッと言い放った彼の言葉に、そばで聞いていた別の添乗員たちが頷いた。

「あ・・・そうなんですね。はい。すみません。」

やばいやばい。多少年齢が行っていても国内添乗の現場での僕など、ど新人のひよっこ同然。偉そうに物を言える立場などではなかった。

少々焦りの汗をかきながら、準備をすすめる。

しかし、国内添乗の仕事は書類の文字が多く分かりにくい。実は海外添乗のほうが準備書類だけを見れば、シンプルで分かりやすい(慣れ不慣れの問題かもしれないが)。

「大丈夫ですか?」

そんな落ち着かない様子を見てか、しばしば他の添乗員たちが声をかけてくれた。添乗員だけあって皆、面倒見は良い。そこは助かる。でも、なんでそんなに助けてくれるのだろう。

「時々、うちの添乗員にアドバイスしてくれているの見るので。そのお返しです。」

「アドバイスって海外の仕事で?」

「もちろん。」

そんなお世話などした覚えがない。人違いじゃないか?それとも、知らないうちに無意識にしていたのだろうか。だとしたら、僕がすごくいいやつということになる。
そうか。僕っていいやつだったのかあ・・・。

というわけで、久しぶりの国内添乗は、わりといい気分で出発することになった。
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一昨日トルコから帰ってきて、次は10日間ほど空けてクロアチア。

その合間に東京見物ツアーの国内添乗をすることになった。で、準備を進めているのだが、東京の案内って難しいな。特に車窓。別に気取って言うわけではないが、ロンドンやパリのほうが簡単だぞ。アテネの車窓観光のほうがきっとうまくできるぞ。

まあ、訓練したかどうかの問題なのだが。

それにしても、同じ添乗でも国内と海外では全然仕事が違うから気持ちの切り替えが大変だ。帰ったばかりだと時差もあるし。

でも、それをスタッフたちの前で言ってしまうと、「あの人も以前のような対応力がなくなった」とか「前よりも文句が多くなった」とか「そろそろ歳かな」なんて言われてしまうので、かるーくこなさないといけない。

ひょっとして、そういうことを考えてしまう僕の足元を見られているのかも?・・・考え過ぎか。

 

ま、国内添乗員の人出不足は深刻らしいからたまには手伝わないとね。国内の仕事ではほとんどアテにされない僕にお願いくるくらいだからよほどのことなのだろう。

いっちょ、かるーくこなしてやるか(正確には軽いふり)。
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とりあえず商談のチャンスは確実になくなったので、先方に電話しようとしたが繋がらない。どうやら通信インフラにも問題が発生しているようだ。この時代、メールは既にあったが海外用携帯での使用はまだそれほど浸透しておらず、この時点では連絡手段が断たれた状態であった。

それにしても、川が氾濫するほどの雨はいつ降ったのだろう。朝までいたクラン・モンタナでは大雨の気配はまったく感じなかった。東西に延びるローヌ谷。ツェルマットは谷の南側でクラン・モンタナは北側に位置する。後から知ったのだが南側の谷でのみはかなり天気が荒れたとのことだった。

全然知らなかった。業界の研修旅行の行程はハードだ。ホテルで天気予報など見る暇などなかった。また、インターネットも、この時代はパソコンで見るもので、持ち歩ける端末で手に入れられる情報は限られていた。

とりあえずシェール方面とは反対、西側から来る列車はある程度動いており、フィスプまでの折り返し運転をしていたため、そのうち小さな駅舎は人で溢れ出した。ここまでは列車で来て、その先は現場で移動手段を確保するつもりで来ていた人たちは完全に足止めを食らった。

やがて、ローヌ川の氾濫がひどくなり、折り返し地点駅が手前になってしまったため、フィスプは完全に陸の孤島となった。

「ここまで来て家族に車で迎えに来てもらおうと思っていたのに。」

「予約しているホテルが車で迎えにきてくれるはずだった。」

「朝、確認したときは列車は止まってもバスは動くと聞いていた。」

ここまでの大雨を予想できなかったとはいえ、

「自然災害が原因で列車が止まっている駅にまで、わざわざ来るか?それも現在進行形の災害なのに。危機意識が甘いだろ、」

と思いながら、時分もその一人だということに気付く。

駅の窓口には多くの人が詰めかけていた。声を荒げている人もいる。怒っても仕方ないのに。

とりあえず命の危険はなさそうだったので、僕も長い列に加わって情報を集めようとした。すると、アナウンスが流れた。ドイツ語、フランス語に続いて英語も流れたのでホッとしたのも束の間、

「ローヌ川の氾濫のため、現在当駅発着の列車は全て運休です。復旧の見込みは立っておりません。本日の乗車券は販売いたしません。」

という内容に、いよいよ身動きを取れないことが現実的になってきて肩を落とした。がっかりした人々が長い列から一人ずつ重い足取りで離れていく中、朝に対応してくれた駅員さんを見つけた。

「今日の夕方から雨が弱くなり、明け方には止むようです。そうなったら明日はなにかしら対応できるでしょう。列車は明日も動かないだろうから、代替輸送になると思いますね。」

どんな深夜になってもいいからこの日のうちに戻りたいと思っていたが、この時本格的に諦めた。

「お客様、ホテルはお取りになりましたか?」

「いえ、まだです。」

「早く取られたほうがいいですよ。まだみなさんは諦めないでここにいますが、この人たちが一斉に動き出したらあっという間にどこも満室になります。フィスプにはそれほど多くのホテルはありません。」

確かにそうだった。10月の夜ともなるとスイスは寒い。そのうえオフシーズンだから休業しているホテルもある。部屋を確保できず、駅舎の中で丸まって一晩過ごすなんてごめんだ。この場合、あきらめを含めた決断は早いほうがいい。

「ありがとう。」と言って街に向かおうとすると「すいません。」と初老の日本人夫婦に声をかけられた。シーズンオフの10月のスイス。それもこんなところで日本人に会うとは。

「今のアナウンス、何を言っていたんですか?」

「え?」

「すみません。言葉が苦手で。ドイツ語もフランス語も英語も全然だめでして。」

「添乗員は?」

「いません。個人旅行です。」

言葉がまったくだめで個人旅行をしている人を時々見かけるが、こんな時は不便だよなあと思っていたら

「申し訳ないのですが、助けていただけませんか?」

と困った顔で相談してきた。
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