できる男たちの結婚事情① プロローグと人物紹介 : マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ (livedoor.blog)

これまでの登場人物は、上のリンクをご覧ください。

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「なにかあったの?」

思川が、冷静にその場の全員に尋ねた。

「別に。僕的には、なにもなかった。」

駒形が素っ気なく言った。

「何もなくはなかったろ?」

国定が挑発的に言った。「ごまかしは許さない」というような態度だった。

宮古は、オロオロしており、思川に投げかける視線は、明らかに助けを求めていた。

「駒形君?」

駒形は、「なんなんだよ。」と言わんばかりに、わざと大きくため息をつき、ランチでのことを話し始めた。

「ランチで出た生魚なしのセビーチェに、宮古が不満そうだったんだ。だから、旅行会社によっては、お客さんがお腹を壊さないように、生魚を極力出さないようにしている地域があるってことを教えた。」

「それだけ?」

「ほかの雑談は覚えてない。ただ、旅行会社によってポリシーが違うから、それを理解しておくべきだとは言った。生魚の話は一例かな。」

「宮古さん、駒形君が言ったことは本当?」

思川は、優しく宮古に語りかけた。

宮古は、気遣うように国定のほうをチラッと見てから、思川のほうを向いて頷いた。

「はい。そう教わりました。」

少し、委縮している宮古に微笑みながら、思川は「大丈夫よ」とでも言うかのように、ゆっくり頷いた。

「僕は、先に会場に行く。早く会場にいらっしゃるお客さんに対応できるように。」

駒形は、その場から早く立ち去る言い訳を素早く用意して、他のメンバーに背を向けた。

「ありがとう。よろしくね。」

思川が、いくつかの意味を含んだ「ありがとう」を言って、その後、宮古に指示をした。

「駒形君を手伝ってあげて。先に行っていいよ。」

宮古は、ほっとしたように相槌を打ち、駒形の後を追った。

 

「駒形さん!」

小走りで追っていた宮古は、すぐに駒形に追いついた。

「思川さんに、駒形さんを手伝うように言われてきました。」

「あ、そう。大したことではないけど、よろしくね。」

駒形は、無駄な言い合いを避けるために、早くその場を離れたかった。日頃の会話では、彼から国定に突っ込むことのほうが多いのだが、いざ、仕事の話となると国定の熱量はすさまじく、議論は白熱した。それはそれで歓迎すべきことなのだが、今回はタイミングが悪かった。

「大切なイベントの前に、しかも宮古本人の前で、なぜあんなことを言い出したのだろう。」

疑問に思いながら、横を歩いている宮古の顔見ると、精神的な板挟みから解放されたからだろうか。眉間の皺が消えていた。

「宮古、僕が入口でお客さんを出迎える。僕がグループを確認して中に案内するから、グループのテーブルに誘導して。」

「わかりました。」

「それと、さっきの国定のことだけど・・・」

「・・・はい・・・」

「君が、僕に価値観を押し付けられたと感じているとは、僕は全く思っていないから安心して。『さっきは、そんなことないです!』って顔をしていたね。」

「そうなんです!」

よくぞ言ってくれたとばかりに宮古は声をあげた。

「彼は、時々妙に熱くなるんだけど、仕事に関しては、誠実で、能力が高いから無視できなくて困るよ。」

「はい。」

「さっき、ランチの時、国定からもいろいろ教わった?」

「はい。国定さんも、いろいろなことをご存知でした。それで、私が黙って聞いて入ればよかったんですけど、何回か『駒形さんはこう言った』みたいな事言っちゃったんですよ。それがまずかったかなあって・・・今、思ってます。」

「うん。それはまずかったね。あいつ、プライド高いし。」

駒形は、おどけたように、容赦なく宮古に言うと、彼女は「そうだよなあ・・・」という顔をした。

「まあ、大丈夫だよ。あとは思川さんがなんとかしてくれる。あの人頭いいし、国定は美人に弱いから。」

 

思川は、おそらく駒形が想像していたよりも、きつい態度で、国定と向かい合っていた。

「どうしたの?あれくらいなら、全然価値観の押し付けにならないと思うけど。仮に、なにか問題あったとしても、どうして宮古さんの前で言うのよ。あれじゃ、彼女板挟みじゃない!『価値観を押し付けられたと言え!』って言っているようなものよ。間接的なパワハラよ。」

「悪い。確かにそうだった。」

「ああいうパワハラって怖いのよ。分かってる?国定君らしくない。なにかあったの?」

国定は、しばらく黙った後、低い声で言った。

「僻みなのかな・・・」
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