できる男たちの結婚事情① プロローグと人物紹介 : マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ (livedoor.blog)
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「よく見てるね、宮古さん。」
「いえ。ただ仕事としてどちらが正しいかはともかく、旅行はお客様のものだから。あの人たちの心をつかんだほうが添乗員としては・・・って話です。」
「うん。わかるわかる。」
「添乗員の評価で、一番重く見られるのが、お客さんのアンケートでしょ?今日のディナー会場で、一番高評価を得られたのは、間違いなく国定さんだと思います。仕事をやってた感がすごかった。駒形さんのやり方って、理想論というか、うまくいっても、お客さんには伝わりにくいんじゃないかなあ。」
「うんうん、当たり。宮古さん、本当によく見てる。確かに、アンケートの添乗員評価は、国定君のほうが全然高いの。」
「やっぱり!」
「半期ごとに、社内で集計取るんだけど、国定君は、いつもトップ3に入っている。5点満点の評価で、平均4.9は下回らない。ほとんど満点。お客さんのコメントも熱いものが多い。一生この人を応援します!みたいな。」
「すごーい。」
「ちなみに、トップ3は、ここのところ不動でね。あとは、桐生君と私。自慢じゃなけいけど、と言いつつ自慢だけど。あはは。」
「そんなすごい人たちとご一緒できて光栄です。・・・でも、不思議。」
「なにが?」
「それって、国定さんが駒形さんよりも格上ってことですよね?それにしては、駒形さんが強くありませんか?八木崎さんの評価も、駒形さんのほうが上みたい。このツアーに来る前も『駒形のやり方をよく見ておけ』って。」
「駒形君だって、いいことはいいんだよ。平均で常時4.8はあるんだから。五本の指に入るくらいのところにはいるの。」
「そんなに高いんですか・・・。国定さんのほうが全然高いって言っても、そのレベルでの争いなんですね。」
「と言っても、駒形君が国定君を上回ったことは一度もないし、そこには明確な差があるのよ。でも、評価は駒形君のほうが高い。なぜか?」
「どうしてなんですか?」
「アンケートの一番最初の項目は、旅行の満足度。『今回の旅行には満足しましたか?』っていうあれね。あの平均値が、彼は異様に高いの。そこは国定君を圧倒しているし、私も桐生君もかなわない。」
「そうなんですか?」
「うん。わかると思うけど、添乗員評価と違って満足度についてはお客さんは厳しいの。あそこは5点満点で、平均4行けばまあまあ。4.3行けばわりと高い部類に入るんだけど、彼は4.5以下をほとんど取らない。ほとんどっていうか・・・たぶん、4.5以下は取ったことないんじゃないかな。」
「それじゃ、さっき国定さんに言っていたのは・・・」
「駒形君にとっては、理想論ではなくて、現実的なアイディアなの。彼が仕切りをまかされていたら、さっき言った通りにスムーズにやったと思うわよ。宮古さんが言うように、お客さんにとっては、それが当たり前だろうけど、サービスマンが足りない、ホテル側の要領が悪いというような印象は残らなかったでしょうね。添乗員の評価は上がらなかったかもしれないけど、ホテルの評価を下げずに済んだ。お客さんの心の中に、このホテルを五つ星ホテルとして残せたかもしれない。」
「駒形さんは、満足度にこだわる人なんですか?」
「そうよ。たまに言ってるけど、『添乗員の仕事は、現地で見せるべきものを見せるとき、その価値を実際の価値以上に感じられるくらいにすること。満足度第一。それを心がけていれば、添乗員の評価は自然に上がる。添乗員評価なんて4.7くらいあれば十分な高評価。それ以上はおまけ。』なんだって。」
「はー・・・。そんな考え方、会社はどう思っているんですか?」
「八木崎さんは、とてもいいと思っているみたい。でも、添乗員のランクってアンケートの添乗員評価だけで決まるでしょ?あの人、たまにランク落ちそうになるの。そんなときは、『少しはパフォーマンスしろ!落ちるぞ!』って、激入れるんだって。すると、ギアを入れて添乗員評価も上げてくるんだってさ。」
「嫌味だなー。普通できませんよ、そんなこと。」
思川は、駒形の添乗哲学を宮古に理解してほしかったのだが、逆に嫌悪感と拒否感を感じ始めているようだ。
「接客って、その場でお客様に心地よく感じていただくものだと思います。無駄なパフォーマンスはともかく、私は自分のしたことに「ありがとう」って言われたい。そうでないと報われない気がする。満足度を高めるための伝わらない接客なんて、添乗員の自己満足だと思うけど。」
「いや、伝わってるって!」
少し昂ってきた宮古を、思川は慌てて抑えた。
「実際に、すごいの駒形君は!私達、旅行会社から依頼されて、たまにパンフレットに顔写真載せるの。『この出発日は、この添乗員が行きます』みたいな感じで売り出すんだけど、一番お客さんを集めるのは駒形君なの。」
「え?国定さんは?」
「国定君も集客力はあるけど、駒形君とは比べ物にならない。」
「・・・・・どうして?」
宮古は、狐につままれたような顔をしていた。
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