マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

July 2021

ワクチンパスポートの受付が、各自治体で、徐々に始まっている。僕も二回目の接種が818日で、終わり次第申し込もうと思っていたが、対象者に「現に海外渡航予定がある方」とあった。

これだと、現時点で海外ツアーの仕事がない添乗員は対象外ということになりそうだ。今はこれでいいと思うが、将来、いざ必要となった時、窓口が混雑して、発行が間に合わないなんてことがないように祈る。

 

ところで、今年2021年5月の大型連休中、僕は足利への帰省を自粛した。

「さすがに、東京でも足利でも、これだけ感染者が増えてきたら、近所の目が厳しい。兄貴が、ふだんから注意をして、PCR検査なども受けて、陰性であることを確かめてから来ているのは分かる。でも、今は、理屈よりも感覚と感情の問題だ。」

と、信頼できる弟に言われてしまっては、仕方ない。これまでは、他の家族と完全隔離生活できることなどを理由に、時々帰っていたが、今回初めて控えた。

まあ、父が亡くなって1年以上経ち、様々なことが落ち着いてきて、僕にとっての帰省は、不要不急になっているのは確かだ。

 

正直、ちょっと傷ついたが、考えてみれば、足利の人の中にも、たとえ仕事であっても感染者が多い東京への往来を自粛している人はいる。それなのに、実家があるとはいえ、東京に住んでいるこちらが好き勝手やってしまったら、面白く思わない人はいるだろう。そう考えると、弟の言葉は、かなり説得力があった。

 

ところが昨日電話した時は、「お盆?いいとは思うけど・・・」と、少し柔らかい感じになっていた。家族も、近所も高齢者が多く、コロナワクチンの二回接種を済ませている。高齢でない人たちも、職域などを利用して1回は接種している。それが理由らしい。

「いつものように注意して行動してくれればいいと思うよ。俺たちはワクチン打っているし。兄貴も一回は済ませているなら、なおさらね。」

とは言え、周りの目もあるし、関東では、感染者が爆発的に増えていることもあり、今回も帰省はとりやめた。しかし、それでも、とりあえず、家族と帰省の話が、気軽にできるようになってよかった。

 

一部で効果を疑問視する声もあるが、「重症化を防ぐ」と言われているワクチンが、体だけでなく、精神面でもワクチンになっていることがわかる。少なくとも、僕の周りではそうだ。

(あくまで個人の意見であり、希望していない人に接種を促すものではありません。接種したほうが、いいとは思っていますが)

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太陽に向かってほわ~んとした猫。クロアチアのスプリットにて。写真と文章は関係ありません。


7
月23日。オリンピック開会式。

たまに通っていた寿司屋に持ち帰りを頼んだ。

「いつもお店で食べているのとは違うよ。」

と、職人さんに説明された。持ち帰り用は、容器の中で寿司が動きにくいようにするため、シャリが大きめになるそうだ。確かに、ふだんお店で食べるものと比べると、おにぎりのような寿司だった。

そのお店は現在、国の要請を守ってお酒を出していない。今回だけでなく、要請が出るたびに従っている。せめて、持ち帰りをたまに買って、応援しようと思っている。僕にも、それほど余裕はないけれど。

その日は、その寿司屋に限らず、テイクアウトを利用している人たちをよく見かけた。お店はどこもガラガラ。どこかで、宅配ピザのオーダーが大混雑との話も聞いた。
おそらく、この日だけに限れば、オリンピックは、ステイホームにある程度貢献していたように見えた。スポーツに興味はないけど、オリンピックの開会式と閉会式は別という人が、たくさんいるということだろう。

 

開会式は、寿司を食べながらテレビで楽しんだ。文字通り簡素化されてた、観客がいない大イベントは、視覚的にも音的にも寂しい部分はあったが、全体的には、感動のほうが大きかった。

 

競技が始まった。うまくいかない競技もあるが、概ね日本人アスリートは健闘している。柔道、体操、ソフトボール。特に自分が好きな競技での金メダルは嬉しい。しかし、やはり無観客は寂しい。たとえテレビであっても、歓声がないと寂しい。思っていた以上にそうだった。

「テレビでしか見られないのなら、せめて観客のCGでも入れて、ビジュアル的に盛り上がればいいのに。」

などと、勝手なことを思う。

 

オリンピックが始まれば、コロナの脅威は、気分的に和らぐのではないかと思いきや、そうでもない。頭の片隅から消えたことは一度もない。毎日増え続ける新規感染者数。

727日。東京では3000に迫り、28日は初めて3000を超えた。そして29日。もはや4000に迫る3865

 

 28日の夜と29日の朝。オリンピックが始まって以来、ニュースのトップは、ずっと活躍するアスリートの姿で飾られてきたが、とうとうコロナ関連に取って代わられた。

だが、感染が拡大している実感がない。昨年のこの時期、今よりもはるかに新規感染確認者数が少なかった夏に比べても、はるかに緊張感が薄い。

強く実感するのは、医療現場がメディアに登場した時くらいかもしれない。

 

手洗い、うがい、マスクや外食を控える等の対策は怠っていない。これらは、コロナ対策というよりも、習慣になった。ワクチンも一回目は済ませた。世間で言われている必要なことはやっている。手を抜いているわけではない。

だが、緊張感に欠ける。自分の本業に、再開のめどが立ってもいないのに、自分の中の、収束モードはなんなのだろう。

 

新規感染者数が一気に増える反面、重症者数の増え方は、今までの波と違って緩やかだから?オリパラや甲子園が。今年は行われるから?音楽フェスが開催されるから?いや、人や物事のせいではなく、自分の中の問題だ。

そんなことを思っていたら、友人からメッセージが来た。

 「こっちは、7月に入って隣の部署で、保育園児の子供の看護休暇とった同僚が、その子からコロナ感染、昨日は別の同僚の御主人さんが陽性反応で本人も今日から休みと、本当に感染の可能性をリアルに感じてます。」

やはり、自分のまわりで感染者が出てくると、気持ちが引き締まるのだろう。緊張感が伝わってきた。

たまたま、自分の周りに、今は感染者がいないだけ。

 

以上、オリンピックが始まってから、一週間の自分でした

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できる男たちの結婚事情① プロローグと人物紹介 : マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ (livedoor.blog)

これまでの登場人物は、上のリンクをご覧ください。
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優菜と別れてから最初の週末。駒形のアパートに、彼女から段ボールが届いた。

 

「思ったよりも、たくさん敬の物がありました。五年間は、自分の人生の中で大きかったなと感じました。最後に、私がよく知っている敬の優しさに触れられてよかったです。」

 

開けて一番上に、そのメッセージが置いてあった。中身を出して、あらためて優菜との関係が終わったことを悟った。このメッセージが、二人の最後のやりとりとなった・・・と言いたいところだが、そうはならなかった。

優菜が言っている通り、20代の頃の五年間は大きいもので、別れて片付けが終わったつもりでも、時々お互いの痕跡がお互いの部屋で見つかった。いきなり別れて、それぞれの部屋を訪れる機会もなかったので、無理もなかった。一か月くらいは、LINEや電話で、「あれない?これない?」といったやり取りが続いた。

ただし、また会おうとか、よりを戻そうとかという流れには一切ならなかった。優菜は、思いを断ち切っていたし、駒形も、最後に「別れたくない」と粘ってダメだったことで、力尽きていた。

「恋愛で別れるって、付き合い始める時と同じくらいエネルギーを使うな。」

と、いうことを駒形は、優菜との別れで学んだ。

 

それから一年ちょっと経ってから、彼女が結婚した話を聞いた。相手は、駒形も知っている大学時代の同級生で公務員らしい。

優菜は、学生時代からとてもモテたので、早く次の相手が見つかったのは不思議ではなかった。それよりも、駒形と別れる時に言っていた、「いつも一緒にいられる」公務員を相手に選んだことに、

「よほど僕との付き合いに懲りたのかな。しかし、反省した後の優菜はブレないなあ。」

と、感心したのだった。

 

一方で駒形は、かなり精彩を欠いた生活を送っていた。彼もそれなりにモテたから、わりとすぐに次の相手を見つけたが、間違えて「優菜」と呼んでしまうなど、ふだんの彼なら、ありえないほど無神経と思われるような言動を繰り返した。二人ほどデートをしたり付き合いかけたりしたが、全くうまくいかなかった。

自分を「病んでいる」と感じた駒形は、無理に次の相手を探すのをやめた。

仕事では、ほかの同期社員と同様に、入社三年目を過ぎて、仕事の重点が、添乗中心から内勤の企画中心へと移行していった。

そういう環境の変化の中で、以前はめったに参加しなかった、会社の飲み会にも顔を出すようになった。

安い居酒屋で、安い酒と食事を楽しみながら、たいして酔ってもいないのに酔ったふりをして、上司や会社の悪口を言う事が、こんなにも楽しいものなのかということを知った。

愚痴で面白かったのは、自分と年齢の近い女性社員たちのそれだった。面白いというよりも、男性のそれと、あまりにノリが違うので、新鮮で興味深かった。

「入社前、聞いていたのと全然違う。旅行会社も添乗員もブラックよ、ブラック。」

「添乗員の仕事をしているところなんて、親に絶対に見せられないよね。あんなバタバタしてボロボロになっているところなんて。絶対に親に見せられない仕事ナンバーワンよ。まちがいない!」

「私、辞めるから。今度絶対辞めるから!でも、その前に彼氏見つけるから!」

こんなことを言ってはいるが、現場では皆、キリッとした態度で、傍から見ると天職であるかのように、きっちりと仕事をこなしている。お客さんが、彼女たちの姿を見たらびっくりするだろうなと、思った。

ある程度盛り上がってくると、みんな好き勝手なことを言うだけで、あまり人の話を聞いていないようだ。そして、タイミングよく連発される「わかるー」の連発。

「女子の『わかる』は、女子でいるための必須アイテムだから。別に中身はないの。信じちゃだめよ。」

と、高校時代に付き合った彼女から教えてもらったことがあるが、改めて意識して聞いていると面白かった。本当の「わかる」と、うその「わかる」が、意外と聞き分けやすいことにも気づいた。

男女入り乱れた飲み会で女性の数が多いと、途中から、女性は男性の存在を無視して、好き勝手言うようになる。男性は、完全に空気と同じ扱いになり、会話に入ろうとすると、露骨に邪魔者扱いだ。同じテーブルに座っているのに、理不尽な話だ。

とはいえ、自分が邪険に扱われる対象でなく、眺めている分には面白い。空気でいるままに、話を聞いて適当に頷いているだけで、駒形には新鮮な経験だった。

考えてみると、優菜と付き合っている頃は、仕事終了と同時にすぐに帰っていたから、同じ部署内の忘年会くらいしか、同僚とは飲んだことはなかった。上司がいない、若手だけのはっちゃけた飲み会は、学生時代のものとは、また違った。

数年後、自分の妻となる絵梨と、初めて会話らしい会話をしたのも、こういう飲み会での席だった。

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なにもかも、いきなり終わった。考えに考えた末のシンプルな一言に一言だけの返答。もう終わりだと思ってはいたが、いざそうなってみると、受け入れ難い。駒形は、ただ優菜を見つめていた。

優菜は、彼の言葉もその事実も受け入れる準備があったかのように、落ち着いて駒形を見つめていた。

二人の間に流れる沈黙を、近くで急に上がった花火がかき消した。最初、手前のビルに隠されて音だけだった花火は、だんだん高く上がり、クライマックスの時は、ビルの上に姿を現して、二人の周辺を明るくした。

優菜の、涙で潤んだ瞳と濡れた頬が、浮かび上がり、その美しさに駒形はドキッとすると同時に、本当の終わりを実感した。

花火が終わって、静かになった。駒形は、なにを言っていいか分からない。ふだんは、饒舌にペラペラ言葉が出てくるのに、こんな時に限って、ろくでもないことしか思いつかない。

「あの・・・お互いの部屋に置いてある、お互いの物はどうしよう?」

「敬の物は、私が送るよ。着替えも他の物も、だいたいまとめておいてあるから、すぐに送れる。」

「送るほど、お互いの家は離れていないと思うけど。」

「歩いて持っていけるほどの量じゃないでしょ。」

「そうか。そうだね。君の物も送るよ。パジャマとか、部屋着とかあるし。」

「いらない。捨てて。」

「いいの?」

「家に置いてあったら、捨ててもいいものを、そっちに持って行ってたから。送られてもしまうところがないし、いいよ。」

「僕の物を送れば場所はできるだろ」と、言いかけて、駒形は言葉を止めた。

「分かった。文庫本の小説は?」

「一度読んだのはいらない。」

「そうか。」

ふたたび沈黙。駒形は激しく動揺していた。まさか、こんな突然に終わりがやってくるだなんて、思ってもいなかった。最後になんて言っていいか分からない。自分に原因があるということは分かっている。しかし、なにをどう言っていいか分からない。

「あの・・・なんか、ごめん。いろいろ努力してみたつもりなんだけど、全然君の気持にこたえられなくて。本当にごめん。」

自分から「別れよう」と言ったのに、別れたくない、未練たらたらな気持ちに気付いた。

「そんなことないよ。悪いのは私だよ。」

涙声で、しかし、しっかりした口調で優菜は語り始めた。

「私が、あなたを応援してあげられなかった。就職が、今のところに決まった時は、私も本当にうれしくて、将来は、外国のいろいろなところを案内してもらえるのかなって、とても楽しみにしてたの。

でも、私は、自分が思っているよりも寂しがり屋で・・・。彼氏が、いつもそばにいてくれないと、だめな人だったんだよ。・・・だめなの。今みたいな状態は無理なの。遠距離恋愛は、私にはできないの。」

「もうすぐ、内勤で企画の仕事中心になるけど・・・」

「だめなの!」

駒形の言葉を、強く遮った。

「私ね、敬のことは好き。大好き。敬が、仕事で充実しているところも好き。かっこいい。でもね、あなたの仕事は大嫌い。今まで、他の女の人に嫉妬したことはないけど、添乗って仕事には、ずっと嫉妬してた。そして、絶対にあなたは、仕事を変えられない。生き方を変えられない。内勤になったとしても、きっとあなたは、外に出続ける。それを、私はきっと耐えられない。」

しっかりとした口調の中に、涙の部分が大きくなってくる。駒形は、動けない。優菜は話し続けた。

「私はそういう人間だから・・・それに、心のどこかで敬に仕事を変えて欲しいって願っている自分は、もっと嫌なの。私のために、生き方を変えて、それで苦しんでいる敬を想像すると、もう耐えられない。」

大きく息をしながら、大粒の涙を流している優菜を見て、敬は、彼女が、どれほど二人でのことを考えて悩んできたかを知った。そして、別れの言葉を切り出したのは自分なのに、実際に振られるのは自分であることも思い知った。

時々ケンカをして仲直りする時、優菜は、相手だけに原因や責任を求めることをせずに、必ず自分も一緒に反省した。100%敬が悪い時も、その中に「私も・・・」とつけて、必ず敬に心理的な逃げ場をつくって、相手の心が潰れないように接した。一方で、自分の反省点が多い時ほど、本気で怒っている時だった。この日の「私が悪い」という内容は、今までで、一番駒形にこたえていた。

「もう・・・限界なの。」

少し落ち着いて、しかしすすり泣いている優菜の肩を、駒形は優しく抱いた。

「本当に、いろいろごめん。帰ろうか。送っていくよ。」

「いいよ。敬の家、逆じゃん。」

「最後くらい、送らせてよ。」

「・・・うん。」

公園を出て、祭りから帰る人々の雑踏に混ざりながら、無言で二人は歩いた。なんの思い出を語ることなく、メイン通りから、ひとつ裏側にある優菜のマンションの入り口に来た。駒形は、無意識に優菜の手を握りしめた。これで終わってしまうことが信じられなかった。

優菜は、駒形の気持ちを察したのか、一瞬手を握り返した後、にっこりと笑って彼を見つめた。

「敬、最後に聞いて。」

「うん。」

「次に素敵な女の人と付き合ったら・・・添乗から帰った時、よく話を聞いてあげて。これが私の最後のお願い。」

「・・・うん。」

「同じ、会えない一週間でも、現地で夢中になって仕事をしているあなたと、日本で待っている彼女さんでは、感じる時間の長さが違うから。待たせるほうと、待たされるほうでは、時間の感じ方が全然違うんだよ。分かる?だから、まずは話を聞いて欲しいの。面倒くさくても、少しでいいから聞いて欲しいの。そうすれば、たまに聞いてくれなくても我慢できるから・・・。」

こんな時になって気付く。彼女が望んでいる、簡単で一番些細なことを、全くできていなかった自分に気付く。

「敬もね、前は、いつも話を聞いてくれたんだよ。『大変だね』って、いつも慰めてくれてね。だから、私も、とても大切にされている気がして、あなたの言葉にいつも耳を傾けられたの。」

確かに以前は、今と違ってよく優菜の話を聞いた。だが、彼女の役に立っているのは、話を聞くことではなく、その後の自分のアドバイスだと思っていた。彼女とうまくいっていた時も、いっていなかった時も、ずっとしていた自分の大きな勘違いに、ここで気付いた。

「ごめん。僕は勘違いしていた。話を聞いた後のアドバイスが、大切だと思っていた。」

「うん。知ってる。それはそれで嬉しかったよ。話を聞いてくれた後だから、私も前向きに聞けたし。」

「今からは、話を聞く。」

「え?」

「今までごめん。こんなに傷つけて、本当にごめん。いつの間にか、自分のことしか考えられなくなっていた。一番大切なのは、お互いの気持だってことを忘れていた。優菜が言う通り、学生の頃の、子供の僕のほうが、よほど君の気持を理解しようとしていたと思う。」

「うん。気づいてくれてありがとう。・・・え?」

駒形は、優菜を素早く、優しく、そっと抱きしめた。思わず、優菜も駒形の背中にそっと腕を回した。

「もう忘れない。絶対に忘れない。君がせっかく気づかせてくれたことを、絶対に忘れない。」

「・・・うん。」

「・・・だから、これからも一緒にいたい。君の話を、聞きたい。今まで聞かなかった分も、全部聞きたい。」

駒形の胸におさまりながら、優菜は顔を上げた。彼の優しい言葉も、その表情も、一緒にいるだけで楽しかった時に、よく聞いて、よく見たものだ。懐かしさと嬉しさで、涙が止まらない。「大好きな敬が戻ってきた」という気持ちになった。でも・・・

優菜は、そっと駒形の腕をほどいた。

「敬。ありがとう。嬉しい。・・・私ね、あなたの言葉に感動してる。本当にすごく嬉しい。でもね、どうしても気持ちがついていかないの。」

優菜の表情が、わずかに困惑したものになった。それは、駒形の前で、初めて彼女が見せたものでもあった。絶望感が、駒形の身も心も支配した。

「ごめんなさい」と、頭を軽く下げて一歩下がった優菜は、完全になにかを決心した表情になっていた。

「本当に、今までありがとう。とても楽しかった。最後は、こんなことになっちゃったけど、ずっと大好きだったよ。」

「優菜・・・」

「さよなら。」

優菜は、駒形に背を向けて歩き始めた。いつも、マンションの入り口手前で振り返って手を振ってくれたが、この日は振り返らない。

五年間続いた二人の恋愛は、こうして終わった。

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二人の関係が、もとに戻ることはなかった。

お互いに努力はした。駒形は、添乗から帰国するたびに、優菜のことを最優先にして、デートの行先も、食事も、たまに観に行く映画も、すべて優菜の好みに合わせて選んだ。何よりも、彼女の言葉に耳を傾けようとした。

優菜も、駒形の気持ちは、痛いほど感じていたから、彼の行為と好意には、すべて笑顔で返した。嬉しかった。

いや、違う。嬉しいと思おうとしていた。

なにもかも自然ではない、つくられた優しさと笑顔は、お互いの心をまったく癒すことなく、疲弊させた。

「おかしいな。前は、敬が何を言っても、何をしてくれても嬉しくて、楽しかったのに・・・。」

「どうして、自然に優菜に優しくできないんだろう。どうして優菜の笑顔を、素直に感じ取れないのだろう。」

一度だけ、言い合いになったが、すぐにやめてしまった。それが別れを早めるだけだとわかっていたからだ。二人とも、なんとかやり直したいとは思っていた。

 

しかし、この手の事が、一度悪い方向へ流れると、止めるのは難しい。そして、とうとうその日が来てしまった。

毎年、なぜかその日だけは、駒形が必ず日本にいた夏の日。付き合い始めてから毎年行っていた夏祭りに、今年も向かおうとしていた。

お祭りそのものはどうでもいいのに、駒形が、とても楽しみにしていたのは、毎年、この日だけは優菜が浴衣を着たからだ。かわいい優菜が、白地に青とクリーム色の百合がデザインされた浴衣を着ると、さらに美しさが際立ち、会場ですれ違う人が、しばしば振り向くほどだった。

駒形は、こんな素敵な彼女が隣にいることが誇らしかったし、優菜は、自分の浴衣姿を、毎年、駒形がこれ以上ないほどほめてくれるのが、嬉しかった。

「今日は楽しければいいな。」

ここ最近、優菜に会う度に、重い気分だった駒形は、久しぶりに少し明るい気分で、彼女の家に迎えに行った。

 

「こんばんは。おまたせ。」

「やあ。・・・え?」

静かな笑顔で玄関に現れた優菜を見て、駒形は一瞬止まった。軽く胸の奥を、なにかで突かれたようだった。

「どうしたの?」

ここ最近よく見られる、無機質な言い方だった。

「いや、毎年お祭りには、浴衣で行ってたから。今年は着ないのか。」

「うん。・・・今年はいいなかって。」

「そうか。」

優菜が浴衣を着ていないだけなのに、なぜか駒形は、打ちのめされたような気分だった。自分が拒否をされているように感じていた。

二人は、無言で祭りの会場に向かって歩き始めた。去年までと違って、まだ遠くにある太鼓と笛の音がよく聞こえるのは、会話がないからだ。

楽しくない。楽しもうとしているのに、楽しくならない。

歩みが、だんだんとゆっくりになってきた。二人とも、祭りの会場へたどり着くことにためらいを感じているようだった。

会場の手前に、小さな公園があった。薄暗くなり、もう誰も遊んでいない。

「ちょっと、そこのベンチで休もうよ。」

「うん。いいよ。」

三人ほど座れるベンチに、少し間を空けて座った。二人とも、無言のまま座っていた。

皆で浴衣を着ている中学生くらいの女の子のグループ、高校生の男女グループ、家族連れ、カップル、やたら盛り上がっている男子のグループなどが、楽しそうに通り過ぎて祭りの会場へ向かっていた。

 

 彼らの様子を眺めながら、優菜とまたやり直したいと、駒形は考えていた。本当は、もうあの頃のようには戻れないと分かっていながら、必死に考えていた。そして、一言だけポツリと言った。

 「僕、もう限界だ。別れようか。」

優菜は、この時が来るのを分かっていたようだ。見る見る目に涙が溢れてきたが、言葉も態度も落ち着いていた。

「わかった。今までありがとう。」

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「なにをそんなに我慢していたんだ?」と、優菜に言い返しながら、駒形は傷ついていた。彼女に「なにかを我慢させている自覚」が、なかったのだ。

元々海外旅行の仕事にあこがれて、この業界に入った。希望通り、世界中を案内する仕事をしている。社歴も三年目を迎えるころに入った。社内での所属は企画部署だ。あと一年もすれば、添乗は年間50日程度となり、内勤が中心となる。その過程で、優菜にプロポーズをしようと思っていた。彼女から見て、自分のことしか考えていないように見えても、彼なりに、彼女との将来を考えているつもりだった。

優菜のために頑張っているつもりで、それを、彼女も応援してくれていると思っていた。なにかを我慢させていたかなど、考えたこともなかった。

 

正面からムキになって言い返した後、少し冷静になった駒形は、言い直した。

「気づいてないところがあったらごめん。どうすればいい?」

「・・・もういい。」

優菜は、駒形に顔を背けた。

「なんだよ。我慢していたことがあるなら言ってよ。わからないよ。」

「もういい!」

今度は、声を少し荒げながら駒形をにらみつけて、背を向けた。

「悪かったよ。ごめん。」

「なにがごめんなの?」

「いや・・・優菜が怒ってるから・・・」

「なにも分かっていないのに謝るな!」

「だから・・・なにも分かっていなくてごめん。それだけは分かった。なにかあったら直すから教えてよ。」

優菜はため息をついた。自分は感情をぶつけ合いたかったから、最初、駒形がムキになったときは、望むところだった。自分が泣いたり喚いたりすることになっても、とにかく爆発した感情をぶつけたかった。自分が怒っている理由さえどうでもよかった。この日だけは、盛大にケンカをしたかった。

しかし、残念ながら、駒形は冷静になってしまった。ムキになっていない彼に用はない。

駒形も、まったくなにも分かっていなかったわけではない。「確かに、仕事優先になり過ぎていたかもしれない。優菜の話も、たまには聞かなきゃ。」くらいのことは思っていた。ただ、そのニュアンスは「ご機嫌取り」程度のものだった。

まさか数か月、いや、ひょっとしたら一年分くらいの積もり積もったものが優菜の中にあるだなんて思いもしなかった。

「今、優しくするなら、もっと前にしろ。バカ・・・」

少し間を置いて、優菜が呟いた。

「え?なに?」

「うるさい!」

「どうすればいいんだよ。」

「うるさい!」

どうすればいいかなんて、優菜にだって分からない。ただ、今は駒形のすべてに腹が立った。

「シャワーを浴びてくる。」

優菜は、一人でバスルームに入った。シャワー浴びてリラックスするうちに、感情とともに涙があふれ出てきた。今までだって、数えきれないほど駒形とケンカをした。だが、これまでのものとは違う。もう取り戻せない何かがあるような気がした。

出てくると、駒形が待っていた。こちらを見つめている。

「なに?」

優菜は、冷たく突き放すように言った。

「今日は帰るよ。」

その言葉に、また優菜はカチンと来た。

「へー、帰るんだ。このまま私を放って帰るんだ。へー。」

「どうしろっていうんだよ!」

駒形が声を荒げた。

「知らないよ!」

お互いに一言ずつ言い合った後、沈黙が流れた。いつものケンカなら駒形は帰ってしまったかもしれない。でも、この日は留まった。優菜の様子がいつもと違うことに、さすがに気づいた。

気まずい沈黙を、先に破ったのは、駒形だ。

「優菜。君がそこまで怒るのを、どうしても理解できない。・・・なんか、いつもと違うのはわかる。でも、僕にはどうにもできない。頼むからどういうことか教えてよ。」

シャワーを浴びながら、少し泣いた優菜は、少しだけ気持ちが落ち着いていた。そして、駒形の態度に、誠意を感じようと努力して、興奮状態の頭の中から言葉を選んで話し始めた。

「あなたが、自分の仕事にやりがいを感じていて、忙しいのはわかるけど、もう少し話を聞いて欲しい。」

「私の話を聞きながら、寝ちゃうのは悲しい。聞くならちゃんと聞いて。」

「デートの時は、たまには私が行きたいところに行って、私が食べたいものを食べたい。」

「添乗の日数は減らないの?もう少し一緒にいられる時間が欲しいよ。」

結婚のことは言い出せなかった。こうして事柄だけを並べたら、他愛もない。どうってことない普通のお願いだ。「こんなことでどうしてそんなに怒るの?」という内容だ。だから、口に出して言いたくなかった。

それでも、優菜は期待した。以前の駒形だったら「つらい思いをさせていたんだね」とか「分かった。努力する」と言ってくれた。それが、たとえ無理であっても、優しい嘘をついてくれた。そっと抱きしめてくれた。あの頃に戻れるかもしれない。と、わずかに思ったのだ。

 

しかし、違った。

「学生の頃のようにはいかないよ。でも、これからは話を聞くようにする。」

「話を聞きなが寝ちゃうのは、失礼だけど、少しは多めに見てほしいなあ。時差ボケに疲れが重なると、耐えられないよ。ごめんね。」

「デートで行きたいところがあったら、言ってよ。食べたいものも。別に、僕に合わせてなんて頼んでないだろ?」

「添乗を減らすのは、あと10か月くらいは、待って。今は、とても大切な時だから。わかるだろ?」

駒形は、優菜が発した言葉に、すべて返してきた。だが、そこに彼女が必要としている言葉はなかった。自分の気持ちを、感情を受け止めてもらえていないと思った優菜の中で、なにかがはじけた。

「違う・・・違う。違う、違う!違う!!違う!!!違う!!!!」と、心の中で大きく叫びながら、静かに駒形に言った。

「やっぱり帰って。」

「え?」

「さっき帰るって言ってたじゃん。帰っていいよ。おやすみ。」

優菜の目から生気が消えていた。その様子と無機質な言葉に、なにも言い返せない駒形は、だまって玄関に向かった。

「おやすみ。」

駒形が靴を履いた時、もう一度優菜が言った。これまでにない、一切感情がこもっていない優菜の「おやすみ」に、駒形も力なく「おやすみ」と返して、彼女の家を後にした。

 

彼には、なにがどうなっているのか、分からなかった。この後、一人になった部屋で、優菜が泣いていることなど、想像もできなかった。かろうじて、二人の関係に危機が迫っていることだけは、感じていた。
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新たな登場人物

木崎優菜 駒形の元カノで、大学時代の同級生。三年生から社会人三年目の途中まで、四年少々付き合った。小柄。優しく明るい一方で、多彩な能力を持ち合わせながら、常に自信がない様子。

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「もう限界だ。別れよう。」

フレンドシップツアーズという旅行会社に入って三年目の夏。駒形は優菜に別れを告げた。別れる直前の時期、いつも喧嘩をしながら泣きじゃくっていた優菜だが、いずれはこういう時が来ると思っていたのだろう。溢れそうになる涙をこらえながら、努めて冷静に振舞った。

「わかった。今までありがとう。元気でね。」

 

二人は、大学三年の時に付き合い始めた。前向きで、自分が進みたい方向にグングン進んでいく駒形と違って、優菜は、自己否定的であることが多く、なかなか自分だけの力では前に進めないタイプだった。

心の支えになっていたのは、彼氏の駒形だ。話をそこそこ聞いてくれた後、ズバッと解決策を出して、彼女を引っ張った。駒形は、優菜にとって頼もしい存在だったし、駒形にとって優菜は、いつも自分に甘えてくれるかわいい存在だった。

お互いに親元を離れて一人暮らしだった。サークル活動などで忙しい時はあったが、基本的に、好きな時に会えて、好きなだけ一緒にいられた。大学生ならではの、自由な恋愛を満喫して、幸せな時を過ごしていた。そして、お互いを生涯のパートナーであると疑わなかった。彼らなりに、お互いのことを真剣に考えて結婚を意識していた。

だが、社会人になってお互いの環境と生活が変わると、学生の時と同じようにはいられない。二人の関係は変化していった。

駒形は、優菜の話を、学生時代のようには聞けなくなった。お互いに社会人として経験が浅いから、彼女の職場での悩みを、なかなかイメージできなかった。理解できないものを、一方的に聞かされるのは苦痛だ。また、自分の仕事も忙しく、帰宅してからも勉強することを余儀なくされていた。優菜に付き合わされる時間は、彼にとって、だんだん邪魔なものになってきていた。

優菜は、以前のように話を聞いてくれない駒形に、冷たさを感じてきていた。的確な助言をくれることはあるのだが、元々無能ではない優菜は、そんなものは、とっくに思いついていた。彼女は、駒形に、ただ話を聞いてほしかった。「大変だね」と言って、以前のように抱きしめて欲しかった。助言よりも、優しさを求めていた。

だが、駒形は、わずかな時間だけ話を聞いてくれた後、適当なアドバイスを口にして、すぐに机に向かうようになっていた。すれ違う二人の心。

この最初のピンチは、優菜が耐えることで乗り切った。

「大学時代は、ずっと私が話を聞いてもらっていたしな。今度は、私が少し我慢しよう。」

駒形は、そんな優菜の気持ちには気づかず、仕事に没頭した。

フレンドシップツアーズでは、入社して三年間は、添乗が仕事の中心になる。添乗日数は、一年目より二年目、二年目よりも三年目のほうが多い。彼が、仕事に慣れて職場でも評価されて、目に見えて充実感に満たされているのが分かるようになったある日、優菜が切なさそうに言った。

「私、いつまで我慢すればいいの?」

 

年間200日近く添乗に出ていた駒形が、日本にいる時は、時差ボケと疲れで寛ぎたいのは分かっていた。だから、いつも半同棲の生活は、彼の都合を中心に回すように心掛けてきた。シフト制だった優菜の仕事の休日は、駒形の添乗スケジュールに合わせた。家にいる時は、駒形が食べたいものを料理して、外食するときも、駒形が行きたい店に行った。

たまに話を聞いてほしい時に、途中で駒形が眠ってしまったが、そんなことが続いても怒らないでいた。

駒形敬という、愛する人が、好きな仕事で充実できるように耐えた。そして、いつか彼の優しさが自分に向かうと信じていた。

だが、そうはならなかった。彼女の思いやりは、駒形の中で当たり前のものとなっていた。言い方を変えると、感謝の気持ちに欠けていた。いや、欠けていたのではなく、全くなかった。大学時代、ひたすら優菜の話を聞いて、優しく彼女を抱きしめる駒形の姿は、そこにはなかった。

 

「添乗の日数減らないじゃない。いつになったら、ずっと日本にいられるようになるの?」

「いつになったら私の話をゆっくり聞いてくれるの?」

「私のことを大切に思ってないの?私たち、結婚するんじゃないの?いつになったらプロポーズしてくれるの?」

今まで口にはしなかったが、ずっと思ってきたことが、様々な感情が溢れ出てきて、ひとつの言葉になった。

「私、いつまで我慢すればいいの?」

自分のことだけで手いっぱいだった駒形は、優菜の心の内を察することなどできなかった。彼女の言葉を正面から受け止めて、返した。

「我慢てなんだよ。なにをそんなに我慢していたんだ?」

終わりが始まった。
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「香織さんたちみたいにロマンチックじゃないですよ。」

あまりに、目をキラキラさせている香織を見て、そんなに期待されても困ると絵梨は思った。

「お二人みたいに、最初からお互いに惹かれあったわけじゃないし。地味なもんです。」

「それでもいいから教えて。」

「彼氏のお腹をぶん殴ったみたいな話もないですよ。」

「それはもういいから。・・・でも、先に好きになったのはどっちなの?」

「それは敬です。付き合い始めるまで、ずっと一貫して彼。私からなにかしたことは一度もありません。」

「へー・・・。」

「最初は、普通に仕事後に飲みに誘ってきたり、休日に遊びに誘ってくれたり。でも、全然アプローチされてるとは気づかなかったです。」

「どうして?」

「いろいろな女の子を、気軽に誘う人だったんですよ。だから、自分もいろいろ誘われる女の子のうちの一人なんだと思ってました。」

「え?駒形さんてプレーボーイだったの?」

「そんな感じでもないんだけど・・・。ただ、感覚はちょっと日本人離れしているところがあったかも。本人に言わせると、仕事後の食事は、近くにいた人を、たまたま誘っただけだと言ってますけどね。女の子の中には、二人きりで食事に誘われたら、自分に気があるのかもって、思う人もいるでしょ?勘違いと言ったらそれまでだけど、結果的に傷ついてる人って、いたんじゃないかな。」

「それってけっこう罪深くない?」

「そうなんですよ。罪深いんですよ。だから私、あまり好きじゃありませんでした。」

「え?そうなの?」

「なんか当時は軽く見えちゃって。仕事はできたし、話題が豊富で、話すと楽しいから、誘われたら食事くらいは行っちゃうんですけど、どこか好きになれなかったなあ・・・。」

香織は驚いた。彼女自身の恋愛経験が乏しいせいもあるが、恋というのは、最初からお互いがある程度好印象を抱いていないと、うまくいかないものだと思っていた。

「今、絵梨さんと駒形さんて仲いいよね。」

「いいですよ。」

「どうやって、そこまで仲良くなったの?最初は好きじゃなかったのに。」

「んー・・・。いろいろありましたけど・・・当時の同僚に言わせると、敬が、私を一対一で食事に誘ったことにびっくりしたそうです。びっくりした理由を聞いて、なるほどと思いました。」

「どんな理由?」

「敬は、いろいろな女の子を誘ってはいたけど、誘う子のタイプには一貫性があったんです。小柄で、細身。笑顔がかわいくて明るく話す、いわゆる女の子って感じのタイプ。私は、彼のタイプじゃなかったんです。」

まさか「そうね。」とは、言えずに、香織は黙って絵梨の話を聞いていた。絵梨は美人だが、小柄ではない。身長は170cm近いし、笑顔は素敵だが、かわいらしいという感じではない。話し方も明るいというよりは、落ち着いている。この時聞いた駒形の好みとは、完全に真逆だ。

「私よりも、香織さんのほうが、彼の好みですよ。凛としているけど、かわいらしいし。」

ちょっと悪戯っぽい言い方に、香織は気の利いた言葉を返せずに赤面した。にっこりと笑って絵梨は続けた。

「敬には、学生時代から付き合っていた彼女がいたんですね。それはもうラブラブだったらしいです。本人も周りも、絶対にその子と結婚すると思ってたんです。でも別れちゃって。私は、その子の写真を見たことないんだけど、見た人は、『駒形さんが誘う子って、元カノとイメージ被るよね』って噂してたらしいです。」

「へー・・・。駒形さんは、誘う子に元カノの面影を求めていたってこと?」

「そういうことではなかったみたい。単純に、外見の好みにブレがなかったんだと思います。ごはんを食べに行ったり、飲んだりする時に、自分が楽しめそうな子を誘っていたんじゃないかな。その後、浮いた話に発展した話も聞かなかったし。

私は、元カノのことを、全然知らなかったから、彼から誘われたときに、自分だけが系統が違うことなんて、全然意識してなくて。ただ、いつも同じ子たちを誘うのに珍しいなあと思いました。」

この頃の絵梨は、駒形に対して、「ちょっとチャラい」と感じている以外は、特になんの感情も抱いていない。

だが、いつもと全然違う系統の女性を食事に誘った駒形は、絵梨に向ってしっかりとエンジンをかけていた。
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オリンピックは、今日いよいよ開会式。あれほど開催に微妙な感情を持ち続けて、今も消えていないのに、なんだかとても楽しみになってきた。MISIAの君が代は、絶対に聞き逃せない。サッカーとソフトで、日本の料理を知ったときは、拳を握りしめてしまった。

なんというか、「それはそれ、これはこれ」という感じだろうか。

始まってしまったら、全選手に頑張って欲しい。健闘を祈ります。僕らは、お家から応援します。

 

さて、このブログの読者の、あづさんからいただいたコメントを、ご本人の許可を得て、ブログの記事に転用しました。内容は、モデルナワクチンの二回目接種の体験談です。

身近なコメントは貴重だと思います。ニュアンスが変わらないよう、要約はせずに、原文ママで記載します。これから二回目接種をされる方は、よかったら参考にしてください。「想定内」は、ある程度の数があったほうがいいですからね。
なお、30代の女性だそうです。

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219:30頃ワクチン打って

「2回目どうだろうなぁ」と思いつつ「まあ自分は予防接種で反応したことないので大丈夫だろう」と思い込んでみたりもしていたのですが

その日の夜接種から10時間位して熱が出始め38.5まで上がりました

 

ある意味、コロナ禍のお陰で体調管理も万全だった分熱が出るなんて、久々でちょっと辛かったですが、いい具合に夜だったので我慢せずお薬だけ飲んでさっさと寝ました。

 

翌朝熱はスッキリ下がって気持ちよく目覚め。

因みに腕の痛みは一回目より全然軽いです。私は。

 

翌日は幾分ハリのない1日を過ごしましたが、それは多分いつもの倍くらいの睡眠時間をとったせいで疲れたのだと勝手に理解。

(いつも睡眠短い生活なので…)

 

感想としては
接種を午前中にしておいてよかった
翌日お休みの日を選んでおいてよかった

と思ってます。

 

やっぱり副反応来んのか〜って感じでしたけど、来たら辛くなりすぎる前に寝てやり過ごせばなんとかなります!()

 

 

今日も一歩前進(^^)
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「絵梨さん、早く子供が欲しいの?」

逆に香織が絵梨に問い返した。「質問したのは私なんだけどなあ・・・」と思いながら、絵梨はこたえた。

「欲しいです。子育ては、できるだけ若いうちに始めたいですね。まだ、貯えがあるうちに。」

「貯えがあるうちに?」

「もし敬になにかあったら、今とは生活が一変しますから。私も働いてはいますけど、香織さんほどの収入はないんです。なにかある前に、少しでも余裕があるうちに始めたいんです。」

似たような会話を繰り返す中で、香織は、ようやく絵梨が言いたいことを理解した。夫になにかあった場合の生活リスクは、自分よりも絵梨のほうが高いということにようやく気付いた。

人間というものは、自分を基準にものを考える。香織の場合、親戚にも医師が多く、医学以外の道で働く人たちの事情には疎い。絵梨についても、これまで自分と同じような基準で考えていた。

香織の顔を見ながら、絵梨は「やっとわかってくれたか。」と、思った。そのうえで、彼女なりの子育てに関する考え方を聞いて、自分たちの中で、参考にできるものはないかと考えていた。

「私たちはね、子供は、できたらいいなあ・・・くらいなの。」

「どっちでもいいってことですか?」

「うーん・・・そういうことではなくて・・・」

香織は、言葉を選んでいるかのような仕草を見せた。

「はっきり言ってしまうと、私、あまり子供ができやすい体質ではないの。いろいろ努力が必要というか。」

「そうなんだ。すみません。」

下手に子供のことも聞けないもんだと、絵梨は少し後悔した。

「いや、別にいいの。できにくいだけで、できないわけじゃないの。日頃の生活に気を付けて、不妊治療をすれば、たぶん問題ないの。」

「そうなんですか?」

「うん。絵梨さんとは、医師と患者の関係ではないから、一般論として言うけど、だいたいなんとかなるものよ。確かに大変だし、100%ではないけどね。だから利久が欲しいならって思うんだけど、彼がね。『そんな無理して作らなくてもいいよ。自然にできれば』って。」

絵梨への気遣いがあったのか、香織は、自分の仕事の知識の表面だけをくだけた軽い言い方に変えて、しかし真面目に説明した。急に出した凛とした雰囲気が、説得力を増す。

「ふーん・・・。」

「絵梨さんは?」

「私たちは、いつできてもいいんだけど、タイミングがなかなか。」

「タイミング?いつでもいいのに、タイミング?」

「いや、夫が日本にいるタイミング。」

「・・・そっちか。」

「そっちです。まあ、そのうち、合わせてもらいますけどね。」

なんだか、今日は話が嚙み合わないなと思いながら、絵梨は話していた。思い出してみると、これまで香織と会うときは、映画や小説、旅行、レストランの話ばかりだった。私生活や結婚観など、人生について、話したのは、これが初めてだ。趣味や娯楽に関しては、話が弾んだのに、プライベートの相談になったら、さっぱり噛み合わない。

「趣味だけのお友達って、本当にあるものなのね。お客さんがよく言ってる旅友って、これと似たようなものなのかな。」

そんなことを思いながら、最近飲んだおいしいワインや、気になるレストランに話を変えようかと思っていた時、香織から聞かれた。

「駒形さんて、家ではどんな感じなの?」

「どんな感じって?」

「いつもあんな紳士的で、面白いの?いつもあんな素敵な人なの?」

「そうですね。家の中と外で、極端にキャラクターは変わりませんね。家で特別だらしなくなることもないし。」

「そうかあ。いいなあ。利久から聞いたんだけど、日本にいるときは、いつも食事つくってくれるって本当?」

「はい、それは本当ですよ。ちゃんとつくってくれるから、助かります。家に帰った時に、温かい食事ができているって、うれしいです。一番のアピールポイントかな。夕食に関しては、敬が嫁で、私がおとーさんです。」

「あははは。素敵ね。いいなあ。家の中と外でキャラが同じなら、駒形さんの手料理を味わえるのは、絵梨さんだけの特権よね。」

「どうしたんですか?いきなり。」

「私、駒形さんのファンだから。今日は奥様から、直接お話をお伺いできると楽しみにしてきたの。」

「そうなんですか()いいですよ!なんでも聞いてください。なんなら、一日くらい無料で貸しますよ。」

「え・・・本当?」

「そのかわり、桐生様を一日貸してください。」

「別にいいけど、桐生様って何事()

「私、桐生様の大ファンだから。結婚したって聞いたときはショックだったなあ。でも、香織さんは素敵だから許します。私じゃ、到底かなわない女性だから。」

「なによ、それ!?」

そういいながら、愛する夫をよく言われて、香織は嬉しそうだ。

「ねえ、絵梨さんと駒形さんて、元々同僚なんでしょう?」

「はい。敬のほうが年齢も社歴も2つ上ですけど。」

「社内恋愛ってことよね?」

「まあ、そうですね。」

「どうやって付き合ったの?」

「え?」

「前から聞きたかったの。社内恋愛って、どんなふうなのか。それに、駒形さんのことだから素敵な口説き方したんだろうなあと思って。」

先ほど一瞬見せた、凛とした姿はどこへやら。乙女のように目をキラキラさせている。

「表情豊かな人だなあ」と、絵梨は思っていた。

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