マスター・ツートンのちょっと天使な添乗員の話

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

December 2021

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一昨日、マンションの玄関に下りたら、クリスマスツリーが、ただのツリーになっていた。
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25日まではこんなだったのに。クリスマス直前になって、部屋で音楽をかけまくって、ようやくクリスマスモードになったと思いきや、あっと言う間に年末モード。
陽性者が減ってきて、穏やかな年末年始になるかと思いきや、オミクロン株の市中感染とともに全国の感染者数も増加傾向。
そういえば、去年も年末は感染者が一気に増えましたね。お盆も大型連休も、過去のグラフを見ると増加傾向になるようです。ワクチンや経口薬もできて、去年の今頃とは状態が違うとは思いますが、いろいろな意味でまだまだ本業の再開までは遠そうです。
というか、ここまでくると元通りになるかどうかも怪しいけど・・・。でも、それでも自分は海外旅行の世界に戻りたい。
時々いただけたオンラインイベントの仕事や、ワクチンコールセンターの仕事のおかげで、旅の仕事に対するモチベーションは下げずに済んだのでした。
と、思いながら、昨日の夕方は銀座界隈を散歩しながら、新橋に向かいました。
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最近は、ガラス張りのビルが多いから、空がきれいな時は、ビルの景色も美しいですね。
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そのあとは、気の合う仲間たちと忘年会。こういう気軽な飲み会ができるようになっただけでも、今年は、まだよかったのかな。
ブリのカマ焼き、おでん、鳥の塩カマ焼き、なんでも美味しかったけど、やはり会話が一番楽しかったですね。

明日は、このブログの「N美物語」の登場人物の一部と、年内最後の飲み会です。
これまた、いろいろな話を聞けることでしょう。

ということで、年内のブログ更新は、これでおしまいとさせていただきます。
部屋の掃除、帰省、年賀状(まだ書いてない)、そして大晦日が締め切りの出版コンクールの原稿提出など、いろいろあります。それらが終わった元旦から、また連載の続きなどを書いていきます。

今年も、本当にいろいろお世話になりました。毎日このブログを読んでいただいたみなさんには、心よりお礼申し上げます。
来年こそ、皆さんの旅と僕の仕事が再開することを祈って、年末のご挨拶とさせていただきます。
来年もよろしくお願いします。
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おまけ。今日もいい天気です!
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できる男たちの結婚事情① プロローグと人物紹介 : マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ (livedoor.blog)

これまでの登場人物は、上のリンクをご覧ください。

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ようやく二人での生活にたどり着いた国定と舞だが、同じマンションに住みながら、二人の環境はまったく違っていた。

国定は、ようやく愛する人との生活を得た。それまで、帰国してからは、いつも誰もいないワンルームマンションに帰っていたが、初めて舞が「おかえり」と出迎えてくれた時は、これまでの人生では経験したことがない心の温もりを感じた。おそらく、舞が想像つかないほどの感動だった。一方で、失ったものはなにもなかった。

舞も、ようやく愛する人との生活を手に入れたが、多くのものを手放さなければならなかった。故郷での生活を捨てた。大好きな家族との時間を捨てた。たまに会う友達とお茶をしたり遊んだりする自由を捨てた。ようやくやりがいを感じつつあった保育士の仕事を捨てた。数えるだけなら、得たものよりも失ったもののほうが、はるかに多かった。

それでも、国定と一緒に暮らしたかったのだ。若さ故に突っ走ってしまったところはあるが、新幹線でないと移動がままならない場所へ、移り住んでの同棲や結婚は、彼女にとって一大決心だった。少なくとも、国定にそれはなかった。

「結婚とはそういうもの」という人もいるが、その時に感じる重みは人によって様々だ。一刻も早く国定と一緒に住みたかった舞だが、そのために手離さなければいけないものの大きさに気付いたのは、東京に発つ時、長野駅で新幹線に乗る前だった。

「たまに帰省しても、もうここで生活することはないんだ・・・。」

ところが、東京に出て来て、唯一得ていた国定との生活の中に、いるべきはずの彼がほとんどいない。彼の仕事が、海外添乗員であることも、世界中を駆け巡る仕事であることも知っていた。おかしな話ではあるが、なぜかほとんど日本にいないということは、同居生活を始める前まで実感できなかった。そのうえ、せっかく日本にいる時も、彼はやたら家を出ようとした。

 

結局、次の日、国定はレクチャーを後輩にした後、飲み会に行ってしまったようだ。帰ってこない。

恥ずかしくなるくらい感情を丸出しにして、涙をポロポロ流しながら、二人の関係について話し合ったのに、「ごめん。でも、人脈は大切だから。」の一言で済まされてしまった。

「私、なんのために、ここにいるのかな・・・。」

ひょっとしたら国定の気が変わって、飲み会に参加しないで帰ってくるかもしれないと、下手に期待してしまっていた舞は、余計に打ちのめされた。

薄暗くなってきた部屋の中で、電気もつけずにクッションを抱きしめながら、ぼーっとしていた。

本当は、二人で出かけて、今頃はどこかのレストランでディナーを楽しんでいるつもりだった。人脈のためと言っていたけれど、いつも、家でたった一人で夫を待っている妻をほったらかしにして行かなければいけない飲み会があるなど、舞には信じられなかった。

食欲が湧かなかった舞は、何も食べずに、そのまま夜の八時を迎えた。そして、長野の友達にLINEをして、電話で話したいと頼み、愚痴を聞いてもらった。

数少ない舞の友人の一人は、親身になって話を聞いてくれた。

「なんか、職場の上司が言ってたんだけどね、そういうのって、『釣った魚に餌をやらない』とか言うんだって。もっともっと本気で怒ったほうがいいよ。」

「釣った魚って・・・」

友人にとっては、ちょっとした例えのつもりではあったが、まさにそういう状態である舞には、強烈にその表現が心に突き刺さった。

 

「お前、なにやってるんだ。すぐに帰って彼女と過ごせ。」

飲み会の場では、桐生による国定への説教が始まっていた。

「同棲と言っても、実質新婚みたいなものだろ?普通、日本にいる時は、奥さん最優先だろ。こんなところで飲んでいるのはやばいよ。」

「いや、これはこれで大切な集まりだよ。しばらく皆と会っていなかったから、たまには出ないと。」

「彼女だって、たまにはお前と過ごしたいと思っているよ。一緒に住んでいたって、たまーにしか時間を取ってもらえないんだから。ここに来ること、奥さんに何も言われなかったのか?」

「いや・・・それは・・・。」

「添乗員の仕事は、最初に理解してもらえなかったら終わりだぞ。」

「脅かすなよ。」

「脅してないよ。事実だ。離婚されている男性添乗員はやたら多いだろう?敬ちゃんや俺たちの努力を見習え。敬ちゃんなんて、こういう飲み会にはほとんど来ないだろ?」

「あいつは、すげー愛妻家だからな。・・・桐生ちゃんは?今日は大丈夫なの?」

「香織の仕事帰りが遅い日だから、晩御飯だけつくって出てきた。飲み会のことも知らせてある。でも、彼女が早く帰って来る日なら、今日は来なかった。」

「そうなの?」

「そうだよ。ついでに言うと、新婚の頃は、香織の帰りが遅くても、家で待っていたよ。」

「え?そんなもの?」

「常識だろ。分からないなあ。お前の長野への通い方は普通じゃなかったよ。すっげーラブラブになるかと思っていた。それなのに・・・一緒に住み始めた瞬間にどうでもよくなっちゃうわけ?ずっと一緒にいたいから同棲したり結婚したりするんじゃないの?なんだよ、その、釣った魚にえさやらないみたいなの。」

「釣った魚って・・・」

黙っている国定に、桐生が言葉を付け足した。

「もうこれ以上は言わないよ。でも、ここにいるメンバーを見てみろよ。ほとんどが彼氏彼女なしの独身だ。相手がいる添乗員は、日本にいる時はそれを最優先にしているから、こういう場にはあまり来ない。」

確かに、桐生や駒形が、こういう場にいるのは稀だ。彼らは、お互い近所で、本当の仲間内の食事にしか参加しない。せいぜい、慕ってくる後輩とたまに飲むくらいだ。国定は、舞と暮らすことで、自分の生活が劇的に変わってしまうかもしれないことを、この時初めて意識した。
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昨日、寝る前にあんなブログを書いたのに、実は、あまりクリスマス感がなかった。

たぶん、自分の仕事のせいだろう。毎年、お盆と年末年始は捨てているかわりに、クリスマスだけは、添乗を休ませてもらっていた。ツアー本数とスケジュールの兼ね合いで、仕事が減ったとしても、そうしていた。

仕事で力を出し切った後のクリスマスは楽しかった。いつもより明るい街の雰囲気や音楽に癒されていたのは、充実した仕事があったからだろう。仕事がなければ、息抜きはできないという、当たり前のことを、コロナ禍の中で学んだ。抜く息を溜めこみたい。コールセンターの仕事が嫌なのではない。海外添乗の仕事が好きなのだ。

今できないことを、グチグチ言っても仕方ないが、今の自分の気持ちを把握しておかないと、思わぬところで急にダメージを感じることがあるので、素直に認めて書きとめておく。

 

今朝は、気まぐれでCDの整理を始めたが、失敗した・・・。懐かしくて仕事にならない。最近は、YouTubeやデータで音楽を聴くことが多かったから、たまにジャケットを手にしてしまうと見入ってしまうな。今朝は、この懐かしいボーイズトゥーメンのクリスマス盤(これがまた秀逸なのだ)と、

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このクリスマスCDを聴いている。

二枚目のCDは、ドイツのクリスマスツアーに行った時に買ったもので、とてもお気に入り。

このケルンのクリスマスマーケットで買った。
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冬のヨーロッパは、早く暗くなるけど、ドイツのクリスマスマーケットシーズンは、本当に楽しい。あとで、同じものを日本でも見つけたけど、ドイツで買ったほうが安かったので、ほっとしたのを覚えている。

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昼間のケルン大聖堂。市の条例で、周辺に高層建築が禁止されているため、街のどこからでもよく見える。この巨大建築が、
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夜は、うっすらとライトアップされて、冬は大聖堂そばの広場にクリスマスマーケットが広がる。絵的には、ドイツ国内のマーケットで、最も美しいもののひとつだと思う。
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せっかくだから、ローテンブルクのクリスマスの様子も載せておきます。
ついでだから、日本橋、銀座、丸の内を歩いた時の写真も載せておこう。人がたくさんいるけれど、明るくきれいな夜の街には、不可欠だ。群衆は夜の街の明かりを際立たせる。高級ブランドのお店に行列ができている姿も久しぶりに見た。

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最後はおまけ。2017年に買ったコージーコーナーのケーキ。

こんな写真を見て、クリスマスの音楽を聴いていたら、ちょっと元気になった。クリスマスの週末を楽しむか。
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メリークリスマス!

来年は、いいことあるさ!

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できる男たちの結婚事情① プロローグと人物紹介 : マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ (livedoor.blog)

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「明日は出発前だし、美味しいご飯をつくるね。歯医者も早上がりだから。一緒にスーパーに買い物に行こう。」

美味しそうに焼き鳥を食べている国定の様子を見て、なんとなく嬉しくなった舞は、帰り道に彼と腕を組みながら言った。

「明日は、晩飯いらない。早めに家を出て成田空港近くのホテルに泊まる。」

「え?」

素っ気ない国定の言葉と言い方が、舞の心の一部をスッと切り裂いた。

「明後日の便が朝早いから。今度の旅行会社は、出発が十時前の便だと前泊許可が出るんだよ。それを利用する。」

「私たちが住んでいるのは浦安だよ?空港なんてすぐ近くじゃん。当日家から行くんじゃだめなの?」

「今は、スケジュールがタイトだからな。無理はしない。」

舞は、むくれて国定の前をスタスタ歩き出した。

「ごめん。そのうちスケジュールの余裕が出たら、たっぷり穴埋めするから。」

背後から聞こえてくる声は、口先のものとしか思えなかった。仕事と分かっていても面白くなかった。国定がせっかく日本にいて楽しいはずなのに、ちっとも楽しくない。自分が言うことが、したいことがまったく思い通りにいかないのだから、楽しくないのは仕方なかった。

「ごめん。機嫌なおせよ。忙しいこの時期だけの話だから。」

何を言われても、振り向かずにスタスタ歩いた。

「ごめんて謝ってるだろ?なんか言えよ。」

何も言わなかった。言えなかった。なにか言ったら、涙がポロポロ出てくるような気がした。そんな子供っぽい自分も嫌だった。

結局この夜、舞は、この後ほとんど国定と口を利かずにベッドに入った。一緒のベッドには入ったが、国定にそっぽを向いていた。せめての腹いせに、ずっとご機嫌取りをさせたかったのだが、数回声をかけてきた後、すぐに彼の寝息が聞こえてきたので、余計に腹が立った。

 

翌朝、少し反省した舞は、きちんと朝食をつくって、まだベッドに入っていた国定に顔を寄せて、「昨日は、子供っぽい態度を取ってごめんなさい。」と謝った。国定は、優しく抱きしめて頭をなでてくれた。そして、

「仕事は早上がりだから、駅まで送るね。」

と言って、笑顔で出勤した。せめて、仕事に出ていく時は、気持ちよく送り出したかった。

だが、またしても思った通りには行かない。夕方四時に仕事を終えて勤務先を出ると、彼からLINEが入っていた。

「ごめん。これ以上待ってると、千葉辺りでラッシュに巻き込まれる。スーツケースを持っていると大変だから、先に出る。」

寂しさと悲しさと苛立ちで、どうにもならない何かが、心の中で生まれていた。三つの感情から生まれた何かは、三つのどれにも当てはまらない何かだった。

「間に合わなくてごめんね。添乗、頑張ってね。」

自分の感情をギリギリ抑えながらメッセージを送った。「ふー・・・」と息を吐くと、涙が出てきた。寂しさだけが、急に襲ってきた。今度のツアーは十日間。国定が帰ってくるまでの間、この2DKで、たった一人で過ごすのだ。

カレンダーを眺めてみた。今回、帰国してから出発するまでは中四日。前泊するから、家にいる時間だけを考えたら、実質中三日だった。次も帰国したら中四日だ。同じツアーに行くようだから、また成田に前泊するとして中三日になるのだろう。

「二人で過ごせる時間なんて、またないんだろうなあ・・・。」

大きくため息をついた。

「なにも期待しないでおこう・・・。」

次も、爆睡して、ツアー報告をして、忙しく準備をして、舞のことなどかまわずに出発してしまうのだろうと思った。中四日のスケジュールでは、二人の時間はどうにもならないことを、彼女は覚えた。

「あ、でもその次は、五日間も日本にいる!」

二週間以上先ではあったが、中五日のスケジュールが舞の目に止まった。

「この時は、少し二人で過ごせるかな。」

たった一日でも、そういう日があると思うと嬉しかった。その一日で何ができるかを考えた。次に彼が帰国したら、五日間の中で、いつ二人で過ごせるかを聞こうと思った。ワクワクした。

「ディズニーランドに行けるかな。」

たった一日のために、舞は、様々な楽しいことを想像した。この時から、どんなに一人で寂しくても、その一日のおかげで前向きでいられた。前向きにいようとした。国定が帰国すると、休日のスケジュールを合わせて、その日は仕事も休みにした。

そして、いよいよ待ち焦がれた二人の休日の前日になった時、またしても舞の希望は打ち砕かれた。

「ごめん、舞。明日レクチャーが入った。」

「レクチャー?」

「若手が、初めての国を添乗する時は、前もって誰かからレクチャーを受けるんだ。それを頼まれた。」

「えー!?他の人にやってもらいなよ。駒形さんは?」

「やつは、今日本にいない。」

「私との約束は?ずっと楽しみにしてたんだよ。仕事も休みにしたんだよ!?」

「ほんとにごめん!でも、若手にはレクチャーが必要なんだよ。」

「私にだって、隼人君が必要だよ!」

二週間以上、二人で過ごす日を楽しみに頑張ってきた舞は、素直に国定が言うことを受け入れられなかった。それでも彼は、拝み倒してくるので最後は

「・・・もう・・・。分かったよ。夕方からなら会える?」

と、折れた。しかし、国定は予想もしない言葉を返してきた。

「いや、それが夕方から、添乗員仲間と飲みにいくことになっちゃって・・・ごめん。」

舞は、耳を疑った。

「え?なにそれ?」

「珍しく、たまたま仲がいいのが、たくさん日本にいるんだよ。この時期にしては珍しいんだ。最近、しばらくの間、休みになったら長野ばかりに行っていただろ?全然会う機会がなかったから、たまには参加しようと思って。お願い。頼むよ。」

「・・・長野に行ってたから会えなかったって、何?私に会うのは、そんなに負担だったの?」

国定に悪意はなかったし、皮肉や嫌味も言った覚えはない。だが、その一言は、舞にとっては裏切り以外のなにものでもなかった。

今度こそ感情が丸出しになった。涙がポロポロ出て止まらなかった。

「隼人君にとって、私ってそんなに負担だったの?」

溢れる涙を時々拭いながら、舞は国定を問い詰めた。
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この時は、翌日の午前中が取引先での報告。午後が次のツアーの打ち合わせ。

その次の日は、自宅で次のツアーの準備をしていた。

「セルビア、モンテネグロ、マケドニアにアルバニア・・・バルカン半島は久しぶりなんだよ。しっかり準備しないとね。」

資料の整理が終わると、今度は、社用携帯で、参加客への挨拶電話を始めた。丁寧に、現地の気候や注意事項を説明している。

「打ち合わせ昨日だったんでしょ?どうして終わらせてこなかったの?」

早く国定に相手をしてもらいたい舞は、不満を漏らした。

「終わらないよ。お客さんが三十五人もいて、夫婦が五組しかいないんだもの。全部で三十件も挨拶電話しなきゃいけないんだぞ。」

「三十五人!?三十件!?」

舞は、前年に旅をした南米も含めて、まだ片手で数えられるくらいしか海外旅行をしたことがない。海外旅行は、常にツアーだったが、どのグループも十五人前後で、多くてもせいぜい二十人ほどだった。三十五人という大人数のグループなど、経験したことがなければ見たこともなかった。

「それはついていたな。南米だって三十人ぐらいのグループツアーは、たくさんある。大きなグループを見たことないということはないよ。見えていないだけさ。」

「そうだったのかな・・・。」

舞は考えた。

「三十件も電話するって、どんな作業なんだろう。一件が五分でも、百五十分・・・。二時間半!?いや、隼人君の電話はもっと丁寧だ。一件五分じゃ終わらない。・・・電話だけで三時間以上!?うそー・・・。やだ・・・うちのお母さんは、いつもどうでもいいことまで添乗員さんに聞いて長電話している。早く切ってあげるように言わなきゃ・・・。」

頭の中で、舞がいろいろ呟いている時も、国定は淡々と参加客への電話を続けていた。

そして、あと三件で電話が終わるところまで来た時、一度客への電話をやめた。社用電話を手離して、自分の携帯で、スピーカーを利用してLINE通話を始めた。相手は添乗員のようだ。いろいろと現地の様子を聞いている。

「今の声、なんか聞き覚えがある・・・。」

「駒形だよ。南米に行った時、男性の添乗員がもう一人いたろ?舞とはあまり接点がないから覚えていないかな。」

「あー・・・あの人かあ。なんとなく覚えてる。隼人君と同じツアーに行って来たのか。それで現地の様子を聞いていたの?」

「いや、あいつは今、マケドニアにいる。現場から様子を聞いていた。」

「え?外国と日本で話していたの?」

「そうだよ。あいつは、このあたりよく行っているからね。本当は、日本でじっくり話を聞きたかったんだけど、時間が合わなくてさ。昨日LINEしたら、出発の一時間前に、二十分くらいなら時間を取れると言ってくれたから、電話した。時差を計算すると、この時間の電話になるんだ。あいつの知識と記憶力は天才的だからな。気になるところを教えてもらった。今はLINEがあるから便利だよな。」

駒形からの情報をノートに挟んだ。あとできれいにまとめて、パソコンにおさめるらしい。

それから残りの電話を全て終えると、夕方四時になっていた。

「あとはスーツケースを詰めれば準備完了か。」

それを聞いて、舞は少しほっとした。彼女が目の当たりにした添乗員の仕事は、想像していたよりも遥かに過酷だった。帰国したら、次の出発まではのんびりできるものとばかり思っていたが、そのようなことは全くなかった。繁忙期で、日本滞在が短い時は、準備だけで、ほとんどその期間が終わってしまうのだ。

終わった旅の余韻に浸っている暇など、とてもなさそうだった。

この前の南米ツアーは、母親の骨折という大トラブルがあったが、舞は、最高の天気の中で、マチュピチュやウユニ塩湖を楽しむことができた。特にマチュピチュ訪問は、高校生くらいからの夢だったので、帰国後もしばらく余韻に浸っていた。そして、国定も、きっとそうであろうと信じていた。だが、現実を目の前にして思った。

「あの南米から帰った時も、余韻なんかなかったんだろうな。すぐに、次のツアーに頭を切り替えちゃったんだよね、きっと・・・。」

自分にとって最高の旅は、国定にとっては、たくさんある仕事のうちの一つでしかないことを思い知らされた。国定が、自分と同じ余韻を味わっていたに違いないと思っていたことが恥ずかしくなり、その現実に悲しくなった。

その感情に、彼の帰国を待つ間に募っていた寂しさと、せっかく帰国してからも、なかなか自分と時間を取ってくれない彼への苛立ちが重なった。でも、ここで怒ってはいけないことも分かっていた。だから、精いっぱい感情を抑えながら、少しだけ我儘を言った。

「出発は、明後日でしょ?スーツケースは明日詰めればいいじゃない。少しは、私の相手をしてよ。」

舞の、なにかを訴えるような表情を見て、鈍い国定も、少しは何かを感じ取ったらしい。

「そうだな。どうしようか?」

「あのね・・・。私、外でご飯食べたい。」

「うん。」

「私、昼はお弁当作っていたし、夜は、いつも家で一人で食べていたの。節約もしないといけないし、一度も外食していないの。だから、隼人君と今からでもデートして、夕食は外で食べたい。」

「分かった、分かった。外で食べよう。」

九歳も年下の舞に、こんなふうに甘えられたら、かわいくて仕方なかった。

「なに食べたい?」

「仕事の帰りにね、素敵なイタリアン見つけたの。そこでワインを飲みながら、生ハムとかピザ食べたい。」

「いや、あの・・・焼き鳥とか、お寿司じゃだめ?」

「え?」

「イタリアンて、この前行ったクロアチアの料理と、多少被るんだ。次の行先もヨーロッパだし。できれば和食がいいんだけど。だめ?」

「そうか。うん。いいよ。」

結局、駅近くの焼き鳥屋に入った。

「これはこれで美味しいけれど・・・」と思いながら、舞は、国定が家にいる時もいない時も、何一つ自分の思い通りにいっていないことに気付いた。イタリアンに行きたかった。ワインで乾杯したかった。

「でも、隼人君は、添乗で日本にいる時間が短いからなあ・・・仕方ないね。」

本当は、自覚している苛立ちを、なぜか自分に必死に隠していた。
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いつか行ったツアーのランチで、精進料理というのが、ツアーの中でひとつの売りになっていた。正直、「やめておけばいいのに」と思った。

精進料理とは、肉や魚を一切利用しない仏教と密教にちなんだ料理のこと。
「美食や肉食を避けて粗食、菜食によって精神修養をする」というのだから、ある意味、ツアー中に修行の物真似をすることになる。

「うまいのかな?」というのがとにかく心配だった。
恐る恐る、客のテーブルの様子を見に行った。
ところがどっこい。なんという気が利いた美味しそうな盛り付け。そうか。材料のルールを守っていれば精進料理なのか。写真撮らせて貰えばよかった。
「美味しそうですね。精進の賜物ですね。」
と、レストランスタッフに言ったら、
「はい。ありがとうございます。」
と、まったく謙遜がない返事が返ってきた。

ちょっと安心して、添乗員ルームへ入った。僕らには、どんな精進料理が待っているのだろう。

ここでまたびっくり。添乗員には、カレーライス、カツ丼、天丼のチョイスしかなかった。
「僕らは精進させてもらえないのですか?」
と聞いたら、
「添乗員さんたちには、精神を鍛えるより体力をつけていただきます。」
と来た。うーむ。気の利いた言い訳だ。彼らに精進の気配を感じた。
それにしても、添乗員とドライバーの食事場所は、たいていカレーのにおいがする。元々強いにおいだから、チョイスに入っていればそうなるのは当然だ。誰か一人でも注文したらそうなる。
あまりに続くと、自分が食べなくても、そのにおいだけで「うえー」と思うことがある。
国内添乗員の間では、これを加齢臭ならぬカレー臭と言うとか言わないとか。

食事が終わった頃、お客さんに、精進料理の感想を聞いてみた。
「見た目はよかったけど、味はイマイチ。まだまだ精進が足りない。」
とのことだった。

「いや、まあ精進料理ですから。」と言う言葉は飲み込んだ、天使の添乗員であった。
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この前の国内添乗の時の話だ。けっこう有名な海辺のホテルに泊まった。

夕食はビュッフェ。国内のホテルではバイキングと言うことが多い。なかなか本格的で、寿司は職人が握っていた(ただし、ワサビは別盛り)。寿司カウンターの正面には天ぷらを職人が揚げていた。

寿司と天ぷら・・・外国人が喜びそうな組み合わせで盛り上げているなあと、レストランの中を歩いていると、「ビーフの赤ワイン煮」があった。

取るべきか、取らざるべきか悩んだ。地方の海辺のホテルレストランでのバイキングにおいては、その地で取れた海鮮の日本料理が美味しい。

それに比べて、洋風のカタカナ料理は、子供だましのものが多く、あまり期待できない。数少ない国内添乗で、何回騙されたことだろう。

だが、「ビーフの赤ワイン煮」だ。大好物だ。フランスの添乗を思い出す。食べたい・・・。

そう思った僕は、スープ皿を左手に持ち、右手に持ったオタマで鍋の中をすくった。

「あれ?これビーフシチュー・・・。」

そんなものだ。しかも、なんだか市販のルーを使ったものっぽい。ハウスだろうか?しかも、何度すくっても、ジャガイモばかり。肉は先に殆ど取られてしまっていたのだった。

テーブルについて、「ビーフの赤ワイン煮」と言う名の「ハウスビーフシチュースープのジャガイモ煮込み」を食べた。これはこれで美味い。ハウスもなかなかやる。

文句は全然ない。ビーフの赤ワイン煮としては残念だが、ハウスのビーフシチューと思って頭を切り替えれば、それはそれで美味しいものだ。もう少しジャガイモよりもビーフが欲しかったけど。これまでの子供だまし洋風料理とは違った。

 

え?本当にハウスだったかって?そうだと思うけど。でなければS&Bかな。

負け惜しみでなく、本当に美味しかったけど、赤ワイン煮、食べたいなあ・・・。
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ちょっと食べてしまった後だけど。赤ワインの煮込み風・・・
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国定の両親は、舞をとても歓迎した。国定は、三人兄妹の末っ子で、父親が四十を過ぎてから、母親が三十代半ばでできた息子だった。そんな両親にとって、二十代半ばの舞は、考えようによっては孫とも言えるくらいの年齢で、モテた試しがない息子にとっては、いい意味で、とても「もったいない」とさえ思った。この時点で、国定は最高の親孝行をしていたと言っていいだろう。また、舞の両親と違って、こちらは、「一緒に住むなら、早く籍をいれたほうがいい」とすすめた。舞を、早く本物の家族として迎え入れたかった。

舞にとっては恵まれた環境だった。自分の母親に「少し暮らしてみてからにしたら?」と提案されて、それに従ったとはいえ、国定とは、少しでも早く本当の夫婦になりたかった。そういう意味で義両親(正式にはまだだが)がそれに賛成であることはありがたかった。とはいえ、あまり二人の生活に干渉されても疲れる。国定の実家は、東京ではあったが、西部の八王子だったので、そういう意味では「頼りにしたいときだけできる」ありがたい存在だった。

国定の添乗スケジュールと、お互いの両親の都合がなかなか合わず、両家の家族が顔を合わせるのには時間がかかってしまったが、それもようやく済ませた。

こうして、胸をときめかせて始まった二人での本格的な生活だったが、良くも悪くも舞にとって、予想通りだったものは、なにひとつなかった。

週に三回の歯科医の受付の仕事は、単調だった。スタッフは、それぞれの仕事を済ませたらさっさと帰る。昼休みに少し話す程度だ。少しあこがれていた、東京(正確には千葉だが)のオフィスでの女子トークなどなかった。

浦安の住み心地は悪くなかった。ただ、長野の実家は閑静な住宅街にあって庭もあり、常に日当たりがよかったので、今住んでいるマンションが、「南側を向いていて、日当たりがいい」と言われても「この程度で?」と思っていた。「隼人君といっしょならいいか」と、思ったが、いざ一緒に住み始めたら、その隼人君がふだんは、添乗という仕事で、ほとんど家にいなかった。

浦安は、日本橋までは20分くらい。銀座や有楽町も東西線から銀座線に乗り継いで30分以内に行けた。東京歩きは楽しみだったので、一人で何度か行ってみた。とても素敵な街だとは思ったが、舞には、その素晴らしい街を使いこなすことができなかった。なにかしようとしても、物価が高かった。たまにおしゃれな店に入ろうとしても、一人では入りにくかった。

次第に、休みの日は、家にこもるばかりになった舞。そんな彼女を救ってくれたのはテレビだ。実家は地上波とBSの無料チャンネルくらいしか見られなかったが、舞が、ひとりで退屈な時間を過ごすであろうことを想像していた国定は、少しでもそれを和らげるために、映画や海外ドラマを見られる有料チャンネルに加入していた。また、ネットアプリを映せるテレビも購入していた。

ささやかな配慮ではあったが、それは、一人でいることが多い舞の生活を、間違いなく救った。ただし、友達が一人もいない彼女の孤独を打ち消すことはできなかった。

しばらくの間、日常的な会話をする機会は、歯科医での昼休みくらい。寂しい時には、実家の母親に電話した。そうなるであろうと思っていた母親の洋子は、舞のストレス発散に、優しく協力したのだった。

舞が一番楽しみにしていたのは、常に国定の帰国であったが、初めて彼を自宅で迎えた時は、驚いた。長野に会いに来てくれた時は、常に優しい笑顔でさわやかな雰囲気だったのに、帰国時に玄関に現れた彼は、まるでぼろ雑巾のようだった。

同棲してから初めての帰国。真夏のクロアチアから帰ってきた時は、顔は脂ぎり、髭がきたなく生えて、目は生気を失っていた。ドイツ系の航空会社で、朝に帰国した彼が、空港からこんな姿で帰って来たことを想像する、怖くなった。

「ただいま・・・。」

無表情で、家に上がった彼は、そのままバスルームに向かってシャワーを浴び始めた。

「なにか、大きなトラブルでもあったのかな・・・。」

舞は、心配になった。

「添乗員は、大変な仕事だってお母さん言ってたもんな。いたわらなきゃ。」

彼が話し始めたら、まずはとにかく話を聞こうと思った。一緒に暮らし始めたばかり。彼女のモチベーションは、まだ高かった。

シャワーを浴びて出てくると、国定の顔の脂はとれていた。髭もきれいに剃られていて、目の生気も戻っていた。だが、ひどく疲れていた様子は変わらなかった。髪を乾かした国定は、「ふー・・・」と、大きく息をついて、ビーズクッションに倒れ込んだ。

「おつかれさま。」

「うん・・・ありがとう。」

優しく声をかけてくれた舞に、国定も微笑みながらこたえた。国定は、一度起き上がり、今度は冷蔵庫からペットボトルの炭酸水を取り出して、美味しそうに飲み始めた。そして、再び「ふー・・・」と大きく息をついて、ビーズクッションに体を預けるように倒れ込んだ。

「なんだか、ビールを飲んでるみたい。」

「ある意味、ビールより美味いよ。」

「ふーん・・・。」

以前は、海外添乗員や、外国生活経験のある一部の人ばかりが好んだガス入りのミネラルウォーターだが、最近は、日本人の食生活に馴染みつつあり、普通に飲まれるようになった。だが、舞は、甘くもない炭酸水が美味しいという感覚が全く分からなかったので、美味しそうにそれを飲んでいる国定が不思議だった。なんにせよ口にする度に機嫌が良さそうになるので、それはそれでよかった。

「ツアーは大変だった?」

「夏のクロアチアは暑いからね。それは大変だった。」

「それだけ?なにかトラブルがあったんじゃないの。」

「いや、全然。いつも通りだったよ・・・なんで?」

どんな話でも聞いてあげようと思っていた舞には拍子抜けだった。

「なんでって・・・さっき帰ってきた時は、なんか、死にそうなほど疲れ切っているように見えたから・・・。」

「死にそうなほど疲れ切っているよ。」

「去年、南米に連れて行ってもらった時は、そんなふうにならなかったよ。最後、空港でお別れするまで元気そうだった。」

「元気だったよ。お客様をお送りするまではね。」

「え?」

「空港でスーツケースが、無事に全部出て来てほっとして・・・。みなさんの姿が見えなくなった途端にスイッチが切れるんだ。あー・・・終わったと思って。さっきの俺、そんなにひどい状態だった?だとしたら、きっと南米の時もそうだったね。間違いなく死にそうになっていたよ。あの時は、四つもグループがあってお客様全員集まってのディナーパーティーがあったろ?そのコーディネートがとても大変だった。舞のお母さんも骨折したし・・・いやー・・・ハードだったな。ま、おかげで舞と仲良くなれたけどね。」

現場では、一切大変そうな表情を見せなかった国定が、実は、ツアーが終わるごとにこんな状態になっていると思うと、舞にはとてもショックだった。

「どうしたの?」

複雑な表情をしている舞に、国定が尋ねた。

「添乗員さんて、本当に旅行が好きで仕事をしていて、そんなに疲れているところを想像できなかったから・・・ちょっとショック・・・。」

「添乗中の俺がそう見えていたならよかった。添乗員が疲れているのが分かっちゃったら、お客さんが気を遣っちゃうからね。」

「うん・・・そうなのかもしれないけど。なんか、そんなに大変なのを分かっていなくて悪かったというか・・・。」

「好きで仕事をしているのは本当だよ。楽しんでもいる。そういう意味では、保育士も似たようなもんじゃないか?」

「え?どこが?」

「どんなに子供が好きでも、疲れる時は疲れるだろ?でも、子供の前で疲れた顔を見せる?」

確かに。こういうことは自分の仕事に当てはめるとよく分かるもので、舞はなんども頷いた。

「ねえ、舞。」

「なに?」

「一時間くらい寝かせて。時差ボケと疲れで、ほんと死にそうなんだ。起きてから、俺がいなかった時のことを、いろいろ教えてよ。」

「うん。いいよ。でも、私も一緒に寝ていい?寝るの邪魔しないから。」

舞は、かわいらしく国定にあまえた。

舞は、部屋着のまま、国定と同じベッドに入った。「おかえりなさい」と言って、国定の頬にキスをすると、彼は、腕枕をしながら優しくキスを返して、舞の頭を何度も撫でてくれた。やがて、腕の動きが止まり、ベッドの上に小さく「トッ・・・」と音をたてて手が落ちると、もう寝息をたてていた。

ずっと、一人で寝ていたから、たとえ夏でも、舞にとって国定の体温は心地よかった。その寝顔を眺めながら、もう一度「おやすみなさい」と小声で言うと、国定の腕に軽くしがみついた。

やっと帰ってきた彼が、愛おしくて仕方なかった。
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昨日、旅行会社のオンラインイベントの仕事に行ってきた。

いつも通り、明るくしゃべりまくれたが、開始前に、スタッフの一人から面白い報告を聞いた。

スペインに、視察旅行に行ってきたという(ちゃんとルールの則って、未来の仕事を見据えて頑張っているのです)。数日前に二週間の隔離期間を終えて、出勤できるようになったそうだ。

行程で一番大変だったのは、日本の出入国だったという。これは、海外に行ってきた人はみんな言っているが、なんだかんだで、世界中の水際で有数の厳しさらしい。

そういえば、この前、空港で働いている人と連絡を取った時に聞いたけど、日本帰国時の書類に不備があると、一度出発国に戻って書類を作り直してからでないと、入国できないと言っていた。そこは甘くないらしい。書類があっても待たされるし、本当に大変なのだ。

現地の人々の動きは、驚くほど日常に戻っていたという。レストラン入口にアルコールなどは置かれているが、利用する人はほとんどない。今回の視察では、ワクチン証明の提示を求められることもなかった。視察旅行のメンバーは、自分たちで持ってきたアルコールシートを使っていたそうだ。

マスクは、着用している人としていない人がいて、現地スタッフの話によると、スペイン人の大半は着用していていて、外国からの観光客は、あまり着用していないとか。(僕自身、実際に見ているわけではない、あくまで聞いた話)

観光地は、どこも賑わっている。EUでは、国内または域内旅行を楽しむ人がたくさんいて、そこは国内旅行を楽しんでいる人が多い日本と事情は同じようなものらしい。

 

聞いていて、一番印象的だったのは空港のこと。ヨーロッパを旅行したことがある人はご存知だと思うが、EU域内の空港は、域内エリアと域外エリアに分かれている。今回視察にいらした方は、フィンランドのヘルシンキ経由で旅をしたということだが、EU域内エリアでの賑やかさに驚いたそうだ。お店もカフェもすべて空いている。もちろん、航空機の満席は当たり前。

ところが、パスポートコントロールを過ぎて域外エリアに入ると、域内エリアでの活気が嘘のように閑散としていて、店もすべて閉まっていた。そこから出発する航空機もガラガラ。

話に聞くだけでも、EU域内と域外の壁の高さを強く感じた。

だが、それぞれの地域で、マイクロツーリズム的な動きでありながら、旅行業は生きていることも感じた。現実的に、再開はまだまだ先でも、受け入れてくれる旅先が生きているだけで嬉しかった。

 

ただそれだけなんだけど・・・たとえまだまだだとしても、ここしばらくの生活の中では、一番海外を身近に感じた瞬間だった。
お土産でもらったイチジクチョコレートが美味しかったから、よけいにそう感じたのかもしれない。
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