202011月。僕は関東と甲信越の紅葉の名所を巡るツアーを担当した。羽田空港で四国、九州からいらしたお客様を出迎えて、栃木・日光、新潟・越後湯沢、群馬・草津温泉、山梨・清里近郊の温泉の順に宿泊しながら4泊5日の旅をご案内した。

関東甲信越にお住まいの方々にとっては、信じられない動きをする旅に見えるかもしれないが、参加客は四国と九州居の住者を対象としたものだ。いざ蓋を開けてみると、関東には、なかなか来る機会がない方々を、効率よく景勝地を案内できるようになっていた。また、どこかしらで紅葉のピークに当たるように、南北、そして標高差も研究されていた。それぞれの観光地でとる時間は、だいだい一時間程度。

え?そんな短い滞在時間でもったいない?いや、だから遠くにお住まいで、滅多に関東に来れない方々のためのツアーだってば。格安の海外ツアーに参加されてる方々に申し上げておこう。欧州とかで、これよりもきつい移動を組み入れてるツアーはたくさんある。というか殆どそうなっている。滅多に来れないところで色々見られるように。

 

おっと、話がそれた。それで本題のクーポンだが、このツアーの場合、宿泊地の関係で4種類のクーポンが発行される。整理すると以下のようになる。

 

1日目 栃木泊 隣接は群馬、茨城、埼玉、福島

2日目 新潟泊 隣接は山形、福島、群馬、長野、富山、石川(海上で能登半島と隣接)

3日目 群馬泊 隣接は埼玉県、栃木県、新潟県、長野県、福島県

4日目 山梨泊 隣接は東京都、神奈川県、埼玉県、長野県、静岡県

5日目 山梨から箱根(神奈川)経由で羽田より航空機を利用。

 

いくら国内ツアーとはいえ、四国、九州から往復航空機を使って45日の旅となると値が張る。旅行代金は16万円。クーポンは旅行代金の15%分発行されるから一人当たり25,000円分となる。それが各県に均等に分けられて発行される。滞在時間が長い栃木が7,000円で、他は6,000円ずつだった。

面倒なのはここからだ。クーポンはツアー期間中有効だ。だから、どのクーポンにも有効期間は1日目から5日目までの期日が記入されている。

だが、栃木で過ごすのは最初の2日間。その後、一度栃木のクーポンは使えなくなる。そして、群馬に宿泊する時、再び有効になる。逆に、山梨のクーポンは、最初の3日間はまったく使えない。つまり、券面の有効日と実質の有効日が一致しない。実に面倒だ。

僕は、これについて最初にバスの中で案内しようとしたが、お客さんがまったくついてこれなかった。話して1分ほどで大半の方が眉間に皺を寄せて、2分すると8割の方が目を閉じた。

 

「どのクーポンがいつ、どこで使えて最後の機会はいつなのかは、その都度お伝えします。」

 

と案内すると、ある男性客の「それがよか!」というお言葉とともに、みなさん頷いたのだった。

かくして2日目に越後湯沢到着後から様々な注意報と警報を出すことになる。

「ここでは栃木のクーポンは使えません。群馬と新潟のみです。」

3日目。草津温泉のホテルにて栃木警報発令

「栃木のクーポンが使えるのはこのホテルまでです。使い切ってください!なお、群馬と新潟のクーポンは、山梨に入ると使えなくなります。そのタイミングは明日お知らせします。まずは栃木のクーポンを余さないように!」

4日目の午前、新潟から長野に入って群馬、新潟警報発令

「長野から山梨に入ると、新潟と群馬のクーポンが無効になります!ここのお土産屋で、必ず使い切ってください!」

「添乗員さん、買う物がないんだけど・・・」

「じゃあ、僕にクーポンくださいっ!」←もちろんジョーク

5日目、山梨クーポンのフォロー。

「箱根で買う物がなかったら、山梨のクーポンは羽田でも使えます。山梨県は東京都と隣接してますから。」

「へー。山梨って東京の隣なんだ。」

 

「旅行好きなのに無知だな」とか「地図見ればいいのに」などと思ってはいけない。お客様は、四国と九州からいらしている。関東甲信越の地理に疎いのは当然だ。

クーポンには、発行県だけでなく隣接県も記載されているが、ツアー内容に関係なくすべて記載されているので、わかりにくい。また、新潟などは表記が多いため、ご年配の方々には読みにくい。実際に、クーポンをお持ちになって「これ、群馬って入ってる?見えなくて」と聞きにくる方もいらした。だから、これくらいのサービスは当たり前なのだ。

とにもかくにもクーポンの案内はよくできたようだ。お客様からもアンケートで褒められていた。

「海外のお仕事が多く、国内業務は不慣れなようだったが、クーポンの案内は完璧だった。」

 

どうもありがとうございます!ちなみに、こんな面倒くさいパターンは滅多にないからご安心を。

 

次回。クーポン修学旅行編