できる男たちの結婚事情① プロローグと人物紹介 : マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ (livedoor.blog)

登場人物は、上のリンクをご覧ください。

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香織は、月島から自転車に乗って相生橋を渡って帰ってくる。桐生は、夜の8時に、門前仲町側の橋を渡ったところで待ち合わせようとした。

「せっかくだから、月島側まで来てください。橋を一緒に渡りましょうよ。」

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相生橋付近の夜景。久しぶりに会った二人は、このあたりを歩いた。
 

最後のLINEにそうメッセージがあったので、桐生は、相生橋を渡ったところで香織を待った。

12月に入ったばかり。寒くはなってきてはいたが、この日は風がなく、橋の上は歩きやすかった。

「こんばんは。おひさしぶりです。」

「こんばんは。今日はどうもありがとうございます。」

会った瞬間、お互いに笑顔で挨拶すると、香織は、自転車を降りて転がし始めた。

実際に待ち合わせして会うのは、これが初めてだった。積もり積もった話というものはない。ただ、会えたのが嬉しく、お互いに白い息を吐きながら、自然に出てくるトークを楽しんでいた。

時間は夜の8時前だ。

「桐生さん、お腹すいてませんか?もう夕食は食べられました?」

「いえ、まだです。」

本当は済ませていた。

「歩くだけというのもなんだし、なにか食べませんか?」

「いいですね。歩きながら考えましょう。」

きれいな夜景が左右に広がる様子を眺めながら、橋を渡り切った。これを眺めただけで、もう立派なデートだった。

ゆっくりと歩いて15分ほどで、門前仲町交差点に着こうとしていた。

パスタ、肉バル、普通の居酒屋。お寿司屋。どんな夕食にしようか考えていると、香織が提案した。

「交差点を渡ったところの二階に、リンガーハットがあるんです。そこにしませんか?」

桐生は、一瞬、呆気にとられた。

「リンガーハットって、長崎ちゃんぽんの?」

「そうです。美味しいですよ。」

「…はい。知ってます。たまに食べますから。でも…いいんですか?」

「桐生さん、明日出発でしょ?この前みたいに焼き鳥屋に入ったら、長くなっちゃいますよ。」

「出発と言っても、夕方の便だから多少遅くなっても。それと少しならお酒を飲んでも・・・。」

「ダメですよ。体調管理はしっかりしないと。ふだんは出発前日にお酒は飲まないでしょう?私、見てたんですよ。イギリスで案内していただいた時、パブにみなさんと行くまでは、一切アルコールを口にされてませんでした。」

本当は、客がいないところで、こっそり飲んでいたこともあるのだが、ここは黙っておいた。「けっこう、添乗員は観察されているもんなんだなあ。」と思いながら、桐生は頷いた。

「わかりました。リンガーハットにしましょう。寒くなってきたし、あったまるでしょうしね。」

桐生は、香織の気さくな提案を受け入れた。

「はい!私、あそこの野菜たっぷりちゃんぽんが大好きなんです。家に帰ってから食事をつくるのが面倒な時、たまに寄るんです。」

 

二人は店に入った。メニューを広げた香織は、なんだか楽しそうだ。以前、焼き鳥屋の「色鳥々」に連れてきた時よりも嬉しそうに見える。

もちろん、香織の笑顔の原因は長崎ちゃんぽんではなく、桐生との「ディナー」だ。デートのディナーだから、こんなところでも、雰囲気は作りたい。ちゃんぽんをすするだけでは、物足りなくなってきた。

「桐生さん、やっぱりビール飲みません?グラスビールなら小さいからいいと思うんだけど、だめですか?」

「だめです。」

きっぱりと桐生が断った。

「そうですよね。すみません。」

少し、香織がしょげた。

「一杯だけなら、中生にしましょう。グラスビールなんて、小さすぎます。中途半端は、逆に精神衛生的によくないらしいですよ。」

「なにそれ?ずるい!」

桐生が言った、初めての悪戯ジョークに香織は笑った。

「そうですね。中途半端は精神的によくないと、医学的にも証明されています。医師としてそれは間違いないと判断します。」

香織の冗談は、いまいち面白くなかったが、とりあえず桐生は笑った。

二人とも、野菜たっぷりちゃんぽんの小さなサイズと、ギョーザ一枚を頼んだ。

「一人で来たら、ちゃんぽんだけで、手一杯なんです。セットメニューでもギョーザは三つもあるし。二人って便利ですね。桐生さん、私、ギョーザは二つでいいから、あとは召し上がってください。」

意外と香織は、テーブルで仕切るタイプかもしれないと、桐生は思った。ビールから始まり、次々と、彼女がリクエストしたものがテーブルの上にあった。

一番美味しかったのは、再会の乾杯のビールだ。

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「初めての待ち合わせデートが、リンガーハットだったの?」

「まあね。その時は、特にタイミングが悪くて、なかなか会えなかったんだけど、たまたま会えた時、流れでそうなった。今でもたまに行くよ。」

「それさ、今度みんなの前で言ってみなよ。桐生ちゃんと香織さんが、デートでそんな庶民的なところに行くだなんて・・・きっと好感度が上がるよ。・・・でもまあ、リンガーハットでも決まっちゃう二人を思い浮かべると、少しムカつくけど。ちゃんぽんが、高級スープパスタに見えてきそうだ。」

「なんだよ、それ!」

桐生は突っ込みながら笑った。アイスクリームは食べ終わり、テーブルの上には、コーヒーが出て来ていた。

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