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2021年7月13日。オリンピックまであと10日の表示が目に入った。


2019年のとある日。

派遣元のメンバー数人で、ダイニングパブで食事を楽しんでいた。売り上げ好調だった当時のセクション。それをさらに伸ばすためのミーティングと称した飲み会でもあった。

話は途中からオリンピックに及んだ。

「チケット申し込んだ?」

「私は野球を狙ってます。」

「俺は、陸上を。」

「バスケットボールとバレーを。」

大イベントへの期待に、誰もが胸を膨らませていた。

 

僕の派遣元では、旅行会社からオリンピックに関する仕事の依頼も受けていた。各国選手団や関係者の空港でのミートや誘導。空港から宿泊施設の輸送、会場でのスタッフのヘルプ。ボランティアではなく、ギャラ付きの仕事もわりとあるものなのだ。

とにかく人手が足りなかったようで、「この時期は、海外ツアーが控えめになるだろうから、オリンピック業務に関わって欲しい」くらいのことを言われた覚えがある。

「ツートンさん、オリンピックは?」

と、飲み会の席で聞かれた僕はこたえた。

「テレビ観戦。今年のラグビーのワールドカップで、ずいぶんとお金を遣うし、オリンピックは、テレビでいいや。」

「関連業務には興味ないの?」

「オリンピックは、参加するものではなく、観るものだと思ってる。」

正直に言うと、夏場に行われるオリンピックの会場で、あちこち動く仕事は、体力的にきついと思い、ツアーがある限りは、添乗をやりたいと思っていた。僕の場合、夏場は北欧やスイスを割り当てられることが多かったので、仕事上での避暑も期待できた。

その一方で、「オリンピックに参加する」仕事仲間の様子を見て、盛り上がるオリンピックに期待もしていた。大会後、彼らからどんな自慢話を聞けるのか楽しみでもあった。

 

まさかあの時、世界規模の感染症パンデミックが起こるなどと、誰が予想していただろうか。

一転して、コロナ禍に覆われた世界の中で、昨年の三月以降、世間では否定され続けたオリンピック。

開催か否か。旅行業界は、それに最も振り回されたものの一つだ。外国からの渡航者の抑制、観客数の抑制。感染対策の徹底。全てのパブリックビューイングの中止。形を変えながら開催にたどり着いた。

振り回されまくった中で、ようやく決まった大会中の仕事に、胸を撫で下ろした派遣元仲間がいた。それが、オリンピックに参加できる喜びだったのか、それとも、その間の食い扶持を確保できる安堵感だったのかは、人によるようだ。


ところが、ここにきて無観客が決定。それにより、彼らの多くが仕事を奪われた。もう少し知らせが早かったら、その時期の収入を得る仕事はあったろうに…。その無念さは、察して余りある。彼らにしてみれば、数少ない収入のチャンスを失ったのだ。


時期が近づくに連れて、楽しみどころか、悲しいことばかりが起こるオリンピック。


大会中、大会後は、僕らの目にどのように映るのだろうか。

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