マスター・ツートンのちょっと天使な添乗員の話

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

カテゴリ: 世界の風景

翌朝、前日までの天気が嘘のように晴れた。
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12月下旬。朝9時半頃のヴィレの街とスキー場。極夜の時期のスキー場は、いつもライトがついている。
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なお、これ以上明るくなることはない。
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実際よりも少しだけ明るく撮れたヴィレの朝
この時は冬至の直前。一年で番暗い時期。ヴィレは、極夜の時期に当たっていた。太陽は、地平線間際まで近づくが、顔を出すことはない。

ある程度、明るくはなる。「極夜」という響きで、ずっと夜の暗さが続くというイメージをお持ちの方はいらっしゃるかもしれないが、おそらく一般の人が思っているよりも明るい。

とは言え、朝焼けを見たと思ったら、すぐに夕焼けの時間だ。時計を見ていないと時間を掴めない。お客さんたちも、空港に向かう11時半に夕焼けを車窓から眺めて驚いていた。
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空港に向かう途中、だんだんと赤くなっていく空。午前11時過ぎ
お客さんたちの心にも、一度きれいなオーロラが見られて余裕が生まれたようだ。

風景を眺めたり、ヘルシンキに移動してからの自由行動や観光中の表情が、とても柔らかくなった。

「オーロラの他にも、冬のフィンランドってきれいなものがたくさんあるのね。」

という言葉は本音だとは思うが、オーロラが見られなかったら、同じニュアンスでは出てこなかっただろう。

添乗員とは違う意味で「オーロラが見られなかったら」というプレッシャーを背負っていたのだと思うと、それから解放された彼らを、なんとなく優しい思いで見つめることができた。
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早朝でも夕方でもない、昼間のキッティラ空港。ここもまた北極圏の街で、この時期は極夜だった。
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キッティアからヘルシンキまで移動する航空機からの風景。この時期の航空機からの風景もまた神秘的。
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クリスマスの装飾に彩られたヘルシンキの街は、オーロラの余韻に浸りながら楽しむのに、心地よいところだった。

2023
年最後に帰着のツアーは、こうして終わった。

今でも、奇跡的に見られたオーロラを思い出して、鳥肌が立つことがある。
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ホテルを出た。街中は、深夜なのにまだ大盛り上がり。さすがはサタデーナイトだ。

騒ぎをよそに、僕は空ばかり眺めて歩きながら、一度転びそうになった。

「『滑りやすいから、足元に気を付けてください』って、我々の添乗員さんは案内していましたよ。」

お客さんにからかわれた。

「ほんと。添乗員さんに怒られますね。」

とぼけてごまかす。

「なんか、私たち客よりツートンさんが舞い上がっているみたいだ。」

別のお客さんが笑った。

それは認める。目まぐるしく変わる天気。そして、最後にこれほど劇的に天気が回復するなど、ドラマやファンタジー映画だってそうそうない。

初老のご夫婦を説得してから30分。ホテルのロビーに集合するまでの時間。僕らが滞在しているレヴィ辺りを中心にして、うっすらと広がる雲の中に穴ができて、それが大きくなっていた。そのおかげで真上には星空が広がっていた。鳥肌がたつような奇跡的な展開だっただけに、舞い上がっている自覚はあった。

だが、まだオーロラは確認できなかった。オーロラレーダーでは、かなり高い確率で出ることになっているのに、もどかしい。空をちらちら見上げてしまった。
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アプリで見たオーロラマップ。赤い部分が、発生率が特に高いところ。夜中の12時。僕らの滞在地は、この赤いエリアのど真ん中にきた。
「ポイントまでは、まだ歩くのよ。今、気にしたって仕方ないでしょ。落ち着いて。」

まったくその通りだ。我ながらみっともない。でも、気になって仕方がない。これはこれで添乗員心理。

「あ、そうだ。」

僕は、歩きながらS子さんにLINEを送った。彼女は、天候の様子には関係なく、12時には出ると言っていた。

すぐに写真とともに来た。

「南の空にオーロラがあるようです。アプリで撮ったやつで肉眼では見えませんが。」

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S子さんが送ってくれた肉眼で見えないオーロラの写真。ブレているが、なんとか分かる
なんか、すごい写真だ。肉眼で見えないオーロラの写真。どのアプリを使ったんだろう、「星撮りくん」かな。それなら僕もインストールしてある。

それにしても、S子さんは、この写真をどう使っているのだろう。

「オーロラは出ています!みなさん頑張りましょう!」と、お客さんを励ますのに使っているのだろうか。

だとしたら、けっこう有効かもしれない。-10℃の寒空で逃げる場所もない中、いつ見えてくるか分からないオーロラを待つのはけっこう難行だ。

「肉眼では見えてないけどそこにあり、もうすぐ見えてくるかもしれない」と感じたほうが、モチベーションは上がる。S子さんは単なるベテランというだけでなく、とても頭が切れる。きっと、いろいろ考えながらやっているのだろう。

彼女がお客さんを案内しているであろうと思われる湖の傍を過ぎた。この時期、湖は凍った上に雪が積もっている。森林の中に、一切樹木が生えていない広いエリアがあったら、そこは間違いなく湖だ。空が広く、オーロラ観測に向いている。

僕らは、その先の林道にまで進んだ。湖の上より、少しだけ明かりが入ってくるが、より空が広いところを選んだ。たいてい、オーロラは、空の低いところから出る。どんな僅かしか出なくても、それを見逃したくなかった。どんなオーロラでも「見た」という事実が欲しかった。

そして、願いは通じた。北の低い位置に現れたオーロラは、布を広げるようにふわっと空を包み始めた。

 

暗闇の中で、お客さんたちの顔が晴れ晴れとしていくのが分かる。僕は胸を撫で下ろした。おかしな緊張感から解放されていくのが分かる。そして、その美しさに、しばし仕事ということを忘れた。

「きれいだなあ。本当に何度見てもいいもんだ。また、オーロラのツアー行きたいなあ。」

ツアーが始まる前は、行きたくなくて仕方ないのに、いざ見られてしまうと、また来たくなるオーロラツアー。人の気持ちを一変させる、強烈な魅力がそこにある。

夜中2時まで。繰り返し現れるオーロラを、みんなで眺めていた。
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地平線に現れて、少しずつ広がっていくオーロラ。
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カーテンのように広がっていくオーロラ。この後、少しだけカーテンのような動きを見せた。実際に動くと、カメラでの撮影は難しい。写真は、その一歩手前のもの。
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うっすらとした雲なら、その奥に透けて見える。
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この日、一番きれいに撮れた写真は、お客さんからいただいた。iPhone15Proはすごい。これをきっかけに、僕はスマホを買い替えた。またオーロラツアーが入っているから必要だと思った。
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「よし!」と、小さく声を出しただけで、タバコをふかしたような白い息が出るバルコニーから部屋に入り、僕は、お客さんの部屋に電話をした。

若い一人参加の女性、機内でオーロラを見られなかった女性客は、すぐに反応した。若い女性客は、僕と同じで星空を眺めていた。新婚夫婦は寝ていたのか寝ぼけ声だったが、天気のことを伝えると、テンションがすぐに上がった。

一番反応が悪かったのが初老の夫婦だった。ゆったりとした感じで、

「いろいろ気にしてくれてありがとう。でも、いいんですよ。オーロラが見られなくても、ゆっくりできたいい旅でした。自然が相手ですからね。こんなこともあります。別にオーロラが旅の全てではありませんからね。」

ある意味、素晴らしい心がけではあるが、今は、そんな時ではない。

「ツートンさんも、そんな気負わないでください。オーロラが出ないのはあなたのせいではありません。もういいんですよ。」

なんという優しいお言葉!でも、今は必要ない。僕の「天気が回復している」と案内は、まったく耳に入っていないようだった。作戦変更。

「すみません。奥様とお話しさせてください。」

「はいはい」と言いながら、電話をかわってくださった。

「ツートンさん、本当にもういいのよ。私たちは・・・・」

「奥様!」ゆっくりとお話する奥様の言葉を僕は遮った。

「今、星が見えてます。ベランダに出るときれいに見えますよ。」

「あらそう。じゃあ、見てみるわ。」

なんとのんびりしたマダムだろう。

「いや、そうじゃなくて星が出るくらいだから、オーロラを今度こそ見られそうだという話です。」

「あら、そういうことなの。」

そういうことだ。奥様は、電話の向こうでご主人にそのことを告げた。

「おお!そういうことなのか!」

という声が聞こえた。そうだ。そういうことだ。やっとのことで、全員での出発が決定した。良すぎるくらいの物分かりの良さが、逆に弊害を生むという珍しいケースだった。

12時過ぎ。僕は6人のお客さんと一緒に、最後のオーロラハンティングに出かけた。最後にして、初めて望みのあるハンティングに。
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夜のレヴィの街を行き交う人々。
4
日目の朝。雲は空高くに立ち込める靄に変わったが、相変わらず晴れる気配はなかった。

9時過ぎ頃。ヴィレは極夜の時期ではあるが、太陽は地平線の浅いところまではやってきて、多少は明るくなる。僕は、お客さんたちに、スキー客でなくても乗れるゴンドラを紹介した。

「昨日までと比べると視界は良さそうだから、きれいな景色を楽しめると思いますよ。」

そう言って、乗り場まで行ってお見送りをして帰る途中のことだ。知り合いの添乗員に会った。

S子さん。」

「あ!ツートンさん!」

同じ派遣元の所属ではあったが、会うのは久しぶりだった。僕の記憶では、国内添乗を始めるにあたって、初期研修を受けた際に同席して以来だ。あれは、コロナの第一波が収まって、いろいろ批判されたgotoキャンペーンが始まり、国内添乗員が足りなくなった頃だった。ということは、2020年の10月半ばか。え?3年ぶりってこと?(この話は202312月のできごと)・・・ずいぶんと会っていなかったんだな。オフィスに通勤している会社員ではない添乗員同士ならよくあることではあるけれど。

まずは、お互いが持っている情報を共有しあい、その後、オーロラの話になった。

「ツートンさん、ここ何日目ですか?」

4日目。」

「オーロラ見られました?」

「全然。昨日が一番状態がいいことになっていたけど見られなかったから、かなりやばい。」

「それはきついですね。でも、今晩は可能性あるんじゃないですか?」

「今日の予報は、確か最悪なはず。」

「そうでしたか?」

「僕が見たアプリではね。」

「どのアプリですか?・・・あ、私が使っているのと同じだ。そんな悪かったかなあ。」

言われて確かめてみると、本当に予報が変わっていた。この時点で朝の9時過ぎ。6時に見た時は、一日中曇天だった予報は、夜の11時過ぎには晴れるようになっていた。

「そんな短い間に変わったのか。この後もよくチェックし続けたほうがいいですね。」

S子さんと別れた後の僕は、変に神経質になり、30分おきくらいにアプリをチェックしていた。まるで、翌日に運動会を控えた小学生のようだった。

自由食のランチでは、6人のお客さんのうち5人とご一緒した。みんな、ある程度オーロラを見られない覚悟をしているようだった。

「飛行機の中で見ておいてよかったです。じっくり見られたから、あれでけっこう満足しています。」

と、いう新婚夫婦のご主人の言葉は、「満足すべきなのだ」と、自分に言い聞かせているようだった。奥さんも頷いている。機内でオーロラ鑑賞をできると助言したのは僕なので、お礼も言われた。だが、無念にも見逃された、たった一人のビジネスクラスのお客さんは、

「起きていられなかったなあ・・・」

ひとりごとのわりに、やや大きな声で呟き、それはテーブルを沈黙させた。

「なんとかならないものか・・・」

と、どうにもならない自然を相手に、僕は考え込んだ・・・というよりも祈るしかなかった。

だが、無情にも再び予報は悪いほうに急転した。午後11時以降。雲が空を覆う割合が、一時的に8%に下がったものの、ディナーを食べている時には、70%に上がってきた。雲が流れていかない・・・。

ディナーの際、僕はお客さんたちに、正直に予報の変わり具合を報告した。

「オーロラポイントへは、天気を見ながら深夜に出発することになると思います。もちろん、皆様の判断で、個人的にいらしていただいても構いません。」

休憩所などなく、ただひたすら外で待つしかないビューポイントだから、案内するタイミングには、かなり気を遣った。

これまで、犬ぞり、トナカイ牧場やスノーモービル体験など、気を紛らせてきたお客さんたちも、さすがに元気がない。短い、無言のディナーを終えて、それぞれ一度部屋に戻った。

この時点では、このまま出発しないで一日が終わってしまう可能性もあった。

部屋で、テレビをつけて、音楽番組にチャンセルを合わせて気を紛らそうとしたが、どうにもならない。

「とうとう僕も、オーロラを見られずにツアー終える日が来るのかな・・・。」

この日は土曜日だった。ヨーロッパのサタデーナイトは盛り上がる。レヴィのスキーリゾートでも、それは同様だった。若者たちのはしゃぐ声が聞こえる。アジア系の人たちは、オーロラ目的でここに来るが、ヨーロッパの人たちの多くはスキーをメインにここを訪れる。オーロラは、わりとついでだ。

彼らの騒ぎは、この時の僕には煩く感じず、むしろ救いに感じた。

「そうだよな。僕らは楽しいところに来ているんだよな。」

夜も11時を過ぎてきた。そろそろお客さんたちに、出かけるかどうか結論を求めなければならない。僕は、久しぶりにアプリを開いた。

「・・・あ!」

またもや予報が急転していた。11時以降の雲の割合は30%にまで落ち、12時から1時は10%以下にまで落ちていた。急転の急転の急転だ。

僕は、部屋のバルコニーに出て、空を見上げた。雲の割合が30%という予報を信じて。

そして、このフィンランド滞在中、初めて星を見た。
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超便利アイテムオーロラアプリを手に入れたものの、入ってくるのは悪い情報ばかり。

オーロラの発生に関してだけ言えば、ツアー期間中の条件は良かった。だが、見えるとなると毎晩分厚い雲に邪魔をされた。

「晴れれば、オーロラを見られる可能性が高い」

というアプリの表示が虚しく目に映る。

美しいオーロラが見られることで知られるフィンランドのレヴィでの滞在も3日目を迎えていた。予報では多少晴れ間が出るようなことを言っていたが、アプリでは常に雲が空を覆うと出ていた。そして、実際の天気は後者の通りだった。
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ホテル近くのスキーゲレンデ。サラサラの粉雪が、わずかな風で宙に舞い、薄い靄となっている。オーロラが見えない中での、ちょっとした癒しだった。
それでも、夕食後には片道約10分歩いて、オーロラのビューポイントにやってきた。こんな時は、雲がたちこめていても外に出てくるものだ。お客さんたちも迷いなくやってくる。ほぼ出ないと分かっていてもだ。あきらめきれないのだ。

雪がちらついてきた。ますます条件が悪くなっていく。「雲に隙間ができれば、そこからわずかばかりでもオーロラを見られるかも・・・」という儚い願いは絶望へと変わっていく。

こんな状況でも、空に集中するお客さんたちを横に見ながら、僕は上着のポケットに入れていたiPhoneでアプリをチェックした。上空では、かなり高い率でオーロラが出ているようだ。

本当は、雲が立ち込めた空の下でオーロラを待つなど、限りなく無駄に近い。天の川を見渡せるような快晴の夜空の下、じっくりと発生を待つような環境でないと、きれいなオーロラを見るのは難しい。

きっと、お客さんたちもそれは分かっている。それでもあきらめきれないのが旅人の心理。
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オーロラポイントにて。雲の下でオーロラを待つ。オーロラよりも雲が切れるのを待っているような感じだった。
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別のポイントから。星一つ見えない中で、スキー場の明かりだけが山の向こうから漏れていた。
「ふー・・・」

溜息をつくと、白い吐息が2メートルくらい先まで届いた。気温-14℃。

それを見ていた女性の一人参加客が僕のそばにきた。

「ねえツートンさん。ひょっとして、もう部屋に帰りたい?」

「いや。そんなことないですよ。」

正直に言うと、ホテルを出る前に「こんな悪条件の中、外に出て行きたくないな」とは思っていた。だが、この時のお客さんの様子を見て、帰りたいなどと思えないようになっていた。

「あら・・・そうなの。」

僕のこたえに、少しがっかりしているようだ。

「・・・あのね。」

一度、下を向いた後、その方は続けた。

「私、もういいかな。帰りたい。」

「いいんですか?」

「ええ。まだ明日もあるし。それにこの雪よ?絶対に晴れないわよ。」

他の方もそう思っていたようだ。彼女の言葉は引き金になったらしい。僕に視線が集中した。

「帰りましょうか。」

皆、あきらめの表情の中に、わずかに力のない笑みを浮かべていた。僕らは、ホテルに足を向けて歩き出した。

オーロラチャンスは、残りあと一日。
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日本が大変なことになっており、新年の挨拶を憚りましたが…

今年もよろしくお願いします。
昨年に続き、新年はエジプトで迎えました。
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観光には、アブシンベル神殿の日の出が含まれておりまして、つまりこの日のそれは初日の出に当たっておりました。

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初日の出というお日柄ですかね。この日は日本人と台湾人が多かったです。日の出を待つのが好きな国民性。エジプトといえど、砂漠の朝は寒い。でも、待てます。初日の出ですから。
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雲ひとつない空から昇る朝日の美しさを格別。数えきれないほど来ているけれど、こんな良い条件もなかなかありません。
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振り向くと赤く染まるアブシンベル神殿。
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神殿内にも光が差し込んで神々しさが増します。やはり、アブシンベル神殿訪問は朝ですね!

最後におまけ。2023年最後の日没直後に見たナセル湖の風景。

オーロラを絶対に見る方法。実は、ないこともない。正確にはほぼ絶対。

現在、航空機の欧州線ルートの大半は、北極圏の中を通る。この時が、最高のオーロラチャンスだ。

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上の写真のように、オーロラは北極圏で輪状に発生する。この中を通る航空機に乗っていれば、左右どちらに座っていても、オーロラが見える。少なくとも、僕は通る度に見ている。画像で見る太い部分は1日の中で動くので、左右どちらで大きなものが見られるかは、その時による。

雲の上を飛んでいるから天気は関係ない。地上では、オーロラが発生していても、天気がよくなければ見られない。つまり発生率=見える確率ではないのだが、雲に邪魔されない機上であれば発生率=ほぼ見える確率と言ってよい。美しい星空とオーロラの共演は感動的だ。

ただし、月が出ている時は例外だ。漆黒の闇の中における月明かりは強烈で、星の半分以上はかき消される。そのうえ雲が立ち込めていたら最悪だ。雪や白い砂浜での照り返しが眩しいの同じで、月明かりの効果が増大して、さらに空を明るくしてしまう。間違いなく夜なのだが、ひとたびオーロラを意識してしまうと、昼間のように明るく感じてしまう。

もちろん、そのあたりを旅行会社はきちんと計算している。オーロラがメインのツアーは、必ず新月の時期に設定される。だから、今回のフライトでは、ほぼ間違いなく機内でオーロラチャンスに恵まれると思われた。

航空会社はフィンエアー。航路は思い切り北極圏のど真ん中(稀に南周りの航路を取る悲劇はある)

ビジネスクラスのお客さんが1人。エコノミークラスのお客さんが5人。ビジネスクラスのお客さんは、最初から窓側に割り当てられていた。

エコノミークラスのお客さんは、事前にチケット情報をお知らせしてご自身で席を取っていただく。その際、窓側を取ればオーロラチャンスがあることをお伝えした。この時点でフィンランドの天気予報が良くないという情報を添えて。あとはお客さん次第だ。

お客さん次第というのは、フィンエアーの場合、事前に割り当てられていた席を変更すると、場所に関わらず追加料金が発生する。「お金を払ってまで拘らない」というのであれば、話は別だ。

なお、旅行会社が「機内でオーロラを見られる」という案内をすることはまずない。日本からの往路は、ほぼ北極圏を通るが、稀に南側のルートを取ることがあるからだ。例えば、カムチャッカ半島の火山が噴火した時は、南側を通る航空会社が多かった。

ツアー客が、オーロラ発生時に騒いで他の乗客に迷惑がかかる可能性もある。これは実際、僕がお客さんに知らせてしまったことで、経験したことがある。とても気まずかった。

また、良かれと思って案内したのに、予想しない反応がお客さんから返ってくることがある。

「分かっているなら、どうして旅行会社が最初から席を取っておかないのか。」

「客が寝ている時に出たら、添乗員が起こしにくるべきだ。」

などなど・・・。これらを仰る本人たちの中では、筋が通っているのかもしれないが、お客さんの席を同じ条件でお取りするなど不可能だし、添乗員がオーロラ出現に注意を払いっぱなしになっていたら、機内で心も身体も休まらない。はっきり言って、ご要望を超えたワガママだ。このことに限らず、思わぬ反応を怖れるため、有益な情報を旅行会社が言いたいのに言えないことがよくある。詳しくは言えないが。

ところで、今回はたった6人のツアーだった。それならば、ほぼ同じ条件でいろいろと案内できる可能性が高い。幸いなことに、エコノミーの5人中、一人参加の方と、新婚夫婦は窓側に割り当てられていた。年配の夫婦は、中央の座席に通路から席をとっていたが、この日の機内はガラガラだったため、オーロラが発生したら、席の移動も可能だった。

問題は、オーロラの発生時間に、お客さんが起きていられるかどうかだった。北極圏に入っていくのが出発してから6時間前後。フィンエアーの日本出発が22時くらいだから、日本時間の朝4時に当たる。常識的に考えれば、起きていられる時間ではない。添乗員も、現地に着いてからの仕事を考えれば寝ているべき時間だ。

だが、今回は特別だった。オーロラを見られる確率が限りなく低いオーロラツアー。希望に胸を膨らませた新婚夫婦。極端な少人数。通常のツアーなら無理だと思われるものでも、なんとかできるものはしてあげたい気持ちが先走る。

「今回だけ。今回だけ・・・。」

僕は、自分に何度も言い聞かせながら、北極圏に入る時間を計算して目覚ましをかけた。そして、空いている機内で横になり、枕元に置いた。少しでも寝ておきたい。でも、

「オーロラが出たら、お客さんを起こしに行こう。」

と誓って目を閉じた。

 

目覚ましに反応して起きると、窓の外を眺めた。うっすらとオーロラが出ている。5分もしないうちに、どんどん大きくなってくる。今まで見た中でも当たりと言える規模だ。

「来た!」

僕は、5人のお客さんたちを、文字通り叩き起こした。窓側に座っていなかったご夫婦は、感動している一方で

「これ以上見たら、現地での楽しみが減っちゃうから」

と、わりと早く切り上げたが、あとの3人は窓側の席だったこともあり、ずっとオーロラを眺めていた。

心配だったのは、ビジネスクラスにいらした一人だ。フィンエアーでは、添乗員のビジネスクラス立ち入りは禁止されている。僕は、ここ半年で顔なじみになったCAさんに、その方が寝ていたら起こしてくれないかと頼んだ。

「そこまでやるのですか?」

驚き顔のCAさん。一瞬、怯んだ。確かに、僕は過剰なサービスの代行をお願いしている。

「今回だけ。どうかお願いします。」

事情を話してお願いすると、「今回だけ」と受けてくれたが、その後、残念な知らせとともに帰ってきた。

「かなり深い眠りにつかれているようで、何度体をゆすりましたが、まったく起きる気配がありませんでした。さすがにあれ以上は・・・。」

「わかりました。ありがとうございます。」

オーロラは、約2時間半にわたり、大きくなったり小さくなったり、時々波を打ちながら、空で舞い続けた。それも翼の両翼でだ。わずかな時間でも、その方が目を覚まして窓の外を見ることを願った。

 

ヘルシンキに到着した。「まさか機内からあんなオーロラを見られるなんて」とご満悦な5人の先を僕は足早に進み、先に降機してお待ちになっているビジネスクラスのお客さんのところへ急いだ。

「おはようございます。オーロラは出たのですか?」

僕に対するその問いかけは、明らかに見ていないものだった。

「はい。けっこう大きいのが出ました。CAさんに、お客様を起こすよう頼んだのですが、ぐっすりお休みになって起きなかったと・・・。長い時間出ていたけど、ご覧になれなかったのですか?」

「見なかったです。あー・・・確かにぐっすり寝ていました。2回目の機内食も食べなかったもの。仕事で疲れていたしなあ・・・。」

がっかりされている様子を見ながら思った。

「うまくいかないものだな・・・。」
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オーロラのツアーが割り当てられた時は、いつも憂鬱な気分になる。

きれいなパンフレットを見て、美しいオーロラを見られる前提でツアーに申し込む一般客と違い、見られなかった最悪のことを考えてしまうのは、添乗員の性だろう。自然現象だけに、自分の力ではどうにもできないもどかしさもある。

僕は、これまでオーロラ見学ツアーを8回案内しており、すべてのツアーでそれなりのものを見られている。これまで運はいいほうだった。

だからこそ、「そろそろ見られないツアーに当たるのではないか・・・」という恐怖感のようなものがある。

時々、「オーロラを見られなかった」と、残念そうに報告してくる添乗員仲間を見ると、「次は自分の番だ」と本気で思う。

その嫌な予感というか心配事が的中するかのように、出発前のフィンランドの天気予報は最悪だった。宿泊地のレヴィには四泊もするのに、太陽マークがひとつもない最悪の予報。極北の天気予報は目まぐるしく変わるので、一喜一憂するのは禁物なのだが、それにしても、快晴どころかはっきり太陽が出る日がないというのは・・・。

出発の遥か前から、なんとかお客さんのストレスを和らげる方法はないものか考え始めていた。敵は天気という大自然だから考えるも何もないのだが、それでも考えてしまった。

そんな時、取引先旅行会社のイベントで、尊敬する先輩添乗員の愚痴を聞いた。

「かわいくないお客さんがいてさ。俺が一生懸命みなさんを励ましているのに、横から邪魔するんだよ。オーロラアプリとかスマホに入れていて、わざわざ見せてくるんだ。『もう出ませんよ』とか言って、一人でスタスタ部屋に帰りやがって・・・。」

他にもせっかくした案内やおすすめに対して冷ややかな反応だったようで、一言で言うと、全く合わなかったらしい。そんな愚痴を言うなど、ふだんならありえない方なのだが、誠意をこめた案内を無下にされて虚しく悲しかったのだろう。同じ添乗員として同情した。

ただし、僕が話の中で興味を持ったのは、別の部分だった。

「オーロラアプリ?そんなのあるんですか?」

「あるみたいだよ。よくわからないけど。」

先輩は、添乗員としては、天才を通り越して神様のような存在だが、文明の利器に関してはからっきしだと言っていたことがある。

「そのお客さんが、部屋に戻った後にオーロラは?」

「出なかった。」

僕は、イベントが終わって帰宅する地下鉄に乗りながら、アプリをチェックした。

「おー・・・。こんなにあるのか。」

パッと調べただけで五つくらいは出てきた。それぞれの特徴を見ながら、一番使いやすそうなものを選んだ。

https://northernlights.online

その中から、一番使いやすそうなものをインストールした。(上のURLからできるので必要な方はぜひ。有料パターンもありますが無料で十分です)

これを入れると、世界のどこでオーロラが見やすいか分かるようになっている。

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黒い部分でオーロラが発生する可能性があり、緑の部分になると発生率が30%に上がる。さらに高くなるとオレンジ色になり、赤くなるとかなり高い確率でオーロラが見られるとのことだ。

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それだけでなく、雲そのあたりの雲の状態も知ることができて、

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雲とオーロラの発生状況を同画面で重ねて見られる。

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別の予報画面では、直近時間のオーロラを見られる確率や雲がどれくらい空を覆うかもチェックできる。もし、このアプリの予報が機能すれば・・・

「ひょっとして僕はオーロラの預言者になれるかもしれない」

と、本気で思ってしまった。

冗談はともかく、貴重なアイテムを手に入れたと。今回の滞在地ヴィレは、きれいなオーロラを見られる場所ではあるが、観察条件は必ずしも良くない。ホテル周辺にはスキー場があり、照明が雪を照らして明るい。

光を避けるには、近くの湖や林道まで歩いていかなければならない。さらに、ポイントを決めたらそこで待ち続けるしかない。休憩所はおろかトイレさえない。どんなに防寒を工夫していても、-15℃くらいの冷たい空気を呼吸し続けるのは、慣れていないとつらい。マスクをしていても、水滴がびっしょり内側を濡らして不快だ。人にもよるが、堪えられるのはせいぜい2時間少々。

だが、このアプリを使って、比較的条件が良さそうな時に出かけて、逐一情報を提供すれば、悪い条件の中でもお客さんのストレスを押さえることができるかもしれない。

「とりあえず『最悪の中での最良対策』は、これでよし。」

僕は一息ついた。

「頻繁にオーロラツアーに行っている添乗員にとっては、当たり前のアプリなんだろうな。」

この仕事。時と場合によっては、持っている情報の量はともかく、質は経験に関係ない時がある。オーロラは、比較的若手が行くことが多い。自分が若手に勝っているとは思わず、教えを乞えばもっと早く対策を考えられたかもしれない。

それにしても便利になったものだ。僕が最後にオーロラツアーに行ったのは、10年ほど前。その時は、まだこんなアプリはなかった。

そして、打合せの日。僕は、さらなる良い情報を手に入れた。

「え?お客さんは6人だけ?」

「はい。この出発日だけ売れていなくて。残念ながらこの少人数なんです。」

残念ではない。少人数であれば、よりツアーに工夫ができる。少なくとも、僕はもうひとつ出発前にできる対策を思い付いていた。
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ロンドン近郊のウィンザー城。イギリス王家の居城には、いつも観光客が絶えない。

城の素晴らしさは有名だが、空港の近くにあることで、常に低空飛行の航空機が上空を過ぎていうことでも知られている。

観光客の多くは、城を眺めながら、いつも空を見上げているが、この日は特にそれが目立った。冬の美しい空のせいだろう。僕も、お客さんと一緒に写真を撮った。
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エリザベス女王は、ウィンザーをこよなく愛したというけれど、うるさくなかったのかなと、不思議な気持ちになる。風向きにもよるが、けっこうな轟音が響くこともある。
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目で追う分には簡単だけど、スマホのカメラで追いながら写真を撮るって案外難しい。目で見て絵になるって、そのまま写真に映えるわけでもない・・・とお客さんと話していた。
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日没後も楽しい。赤い日夕陽に機体が映えたり、シルエットが美しかったり。
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ウィンザーには、立派な城下町がある。観光客向けの土産屋もあれば、地元の人が使うような商店街も広がっている。クリスマスのイルミネーションもチラホラ。
空はくっきりしているのに、赤と青の境目は柔らかいグラデーションのようになっている。
その上空を航空機が飛ぶと、また絵になるんだなあ。  
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前日に書いたマナーハウスホテルの続き

日帰り観光客がいなくなる夕方。カッスルクームはすっかり静かになる。
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その時間帯を見計らって、僕は四人のお客さんたちと村の中に出た。お目当ては、知られざるケーキの名店。

「そんな素敵なお店あったかしら。」

マダムの一人が首をかしげている。ふふふふ・・・あるんだなあ、それが。で、行きついたのがこちら。

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カッスルクームのマーケットクロスを取り囲む家屋のひとつ。、玄関先にケーキをケースに入れて置いてある。支払いは、日本で言うところの新聞受けに入れる。お釣りが必要な場合は呼び鈴を鳴らすかドアをノックすると、家主が出て来てくれるから、その時に頼む。ケーキの無人販売というか、半無人販売。

どれどれ今日のメニューは・・・レモンケーキとキャロットケーキ。小さいカットだとチョコレートブラウニーもある。
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お値段は、大きいほうが5ポンド。小さいほうで2ポンド
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お気に入りのバナナケーキはなかったが、レモンケーキもしっとりしていて美味しいので、こちらを買うことにした。

「これが名店?」と、半信半疑なお客さんたち。ひとつ小さいほうを買って味見をしていただいた。

「え?美味しい!」

そうなんです。美味しいんです!

だが、イギリスに来たばかりの僕らは小銭を持っていない。仕方なくノックすると、家主さんが出てきた。この村に来るたびに僕は買っているので、彼は僕を覚えていてくれた。
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記念撮影を終えた後、単独撮影に応じてくれた家主さん。接客は、この方でななく、奥様らしき女性がしてくださることもある。ケース内に好みのケーキがなくなくなった場合は、呼び出すと在庫があることもある。ただし、基本的には無人販売方式。在庫確認や釣銭などの用事がないのに呼び出すのは失礼なので控えたい。
「次はバナナケーキを作っておくよ。」

おお!好みまで覚えていてくれた。次に来るときは、前もって連絡しよう。お客さんたちは、家主さんにお会いできて大喜び。はしゃいで記念写真を撮っている。

「でも、こんな美味しいケーキを食べたら太っちゃうわ。」

それを聞いた家主さんは、売り文句が書かれた紙を指差した。

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「重くなればなるほど、誘拐されにくくなる。ケーキを食べて安全を確保しよう」と書かれている。
なるほど。理にかなっている。確かに食べ始めたら気にしていられないね。

さて、次に食べられる機会はいつかな。
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