あるスタッフが体験した恐怖を朝っぱらからお話しよう。
オミクロン対応ワクチン受付開始前、今は小康状態のコールセンターにかかってきた一本の電話。
「ワクチンの予約をお願いします。」
と、受話器の向こうで言った90歳を超えている彼女の言葉は、とてもしっかりしていた。
「かしこまりました。それでは、接種券番号をおっしゃってください。」
スタッフは、とても丁寧に対応した。
「え?なに?」
口調はしっかりしているが、少し耳が聞こえにくいようだ。
「接種券はお手元にありますか?」
「はい。」
「そこにあります、●●から始まる十桁の番号です。」
「え?」
「接種券」と「番号」は聞き取れるらしいのだが、「接種券番号」になるとなぜか聞き取れないようだ。
スタッフは、声を高くしたり低くしたり、大きく口を開けながらゆっくり話したり、散々工夫を凝らしているが、なかなか聞いてもらえない。
挙句の果てに、電話主は言った。
「通帳番号?」
「それは絶対に言ってはだめです!」
スタッフの叫びが部屋中に響き渡った。
通常なら5分もあれば終わる対応を、15分ほどかけて電話を切った後、彼女は汗をぬぐいながら言った。
「ふー・・・。とんでもないことを聞いてしまうところだったわ。」
皆で笑ったが、考えてみると怖い。
彼女が優しい、誠実な人でよかった。「聞いておけばよかったのに。ついでに暗唱番号も。」という僕のブラックジョークに、「冗談でもそんなことを言うものではありません!」と、真顔で怒るくらい真面目な人でよかった。
海外添乗中に90歳以上の方を案内することは稀だが、高齢のお客さんはとても多い。一生懸命案内を聞いてくれているのだけど、聞こえない、いまひとつ理解できない方がいらっしゃるのは、珍しいことではない。
そんな時は、個別に対応するのだが、身振り手振りや紙に書くなどの手段がある。口の動きで言葉を読むこともできるし、なんと言っても目を見ながら話ができるのは大きい。
声だけで行う電話でのコミュニケーションは難しい。添乗前の挨拶電話でも、「この方とのコミュニケーションは大変そうだ」と思ったのに、お会いしたら普通だった、という例は多い。
電話で雑談するのとは違うのだ。なにかの手続きの場合は、家族や周りに助けられる人がいればなあと、つくづく思う。
電話をかけてきて、しかもこちらから聞いてもいないのに、自分から「通帳番号」と口に出してくることがあるのだから。「そうです」と言ったらこたえてしまったのではないかと思う。そんなもの聞かされても困るよほんと。本気で困るよ。勘弁してくれよ。
ということで申し上げておきます。
コロナワクチンの予約の際に、皆様の通帳番号は必要ございません。
ワクチンコールセンターでは、お問い合わせの際に、皆様の通帳番号をお聞きすることはございません。
もし聞かれたら、それは詐欺です。
それでも豊洲の夜景は美しい
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