マスター・ツートンのちょっと天使な添乗員の話

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

タグ:ゴルバチョフ

二十世紀の終わり。僕が旅行会社に入って添乗員になりたての頃、お客さん同士の会話で、時々ちょっとしたジョークを聞けた。

高齢者ばかりが参加しているツアー中、ある日の夕食時に六十代前半のお客さんが言った。

「私は一応戦前生まれなんだけど、幼かったから戦争中のことはよく憶えていないんですよ。記憶にはありますけどね。」

すると、八十代の方が真顔で言った。

「私も戦中生まれですがね。幼かったから、まったく記憶にありませんねえ。」

とぼけた言い方に笑いが起きる。笑いの中には、発言者の意図を理解しているものと、言い方だけに笑いを誘われてしまったものと二種類あった。その証拠に、

「第一次世界大戦の話でしょ?」

と、おどけるようにその方が続けると、「そういうことですか!」とさらに大きな笑いが起こった。

決して多くはなかったが、1910年代生まれの方は、当時のツアーの中に時々いらっしゃり、みなさんに気遣われながらも「大丈夫!二つの戦争を生き残りましたから」と、勇ましいことを仰っていた。(そして、第一次大戦の時は、日本は戦場になっていないから、戦争に行かなかったら生き残るのが当たり前と、僕に冗談めいて話してくれるのであった。)

 

今となっては、懐かしい二十世紀最後の記憶。

その二十世紀を生きた偉大なる人物が、ここ一か月間で二人亡くなった。

ゴルバチョフさんとエリザベス女王。政治家と君主を並べるのもどうかと思うが、「二十世紀の記憶」ということで、許していただきたい。

ゴルバチョフは、冷戦終結とソ連がなくなった時の記憶の大半を占めており、忘れられない。半世紀近く続いていた冷戦は、当時十代だった僕にとって、ある意味「永遠」を思わせるものだったし、ソ連のような大国が、あのような形で終焉を迎えるなど考えられなかった。

彼が、西側の人間にとって親しみを持てる人間になった一方で、ソ連では「売国奴」のような扱い(現在も)になっていたのも印象深かった。忘れられない二十世紀終わりの記憶だ。

 

エリザベス女王は、世界中の君主の中でも特別な存在だったと思う。日本人を含めて、自国以外の君主の名前いくつ言える人ってどれくらいいるだろう。僕がすぐに出てくるのは、エリザベス女王くらいだ。

七十年間の在位は、本当に歴史だ。即位前は、第二次世界大戦も経験しているし、イギリス経済がIMFの管理下に置かれた時も、サッチャーの時代も、その期間に起きたフォークランド戦争の時も、香港返還も・・・そのほか諸々二十世紀の歴史的出来事の時の君主は、みんなこの方だ。

映画「英国王のスピーチ」の子役二人のうち一人が「エリザベスなんだ」と思った時は、感慨深かったなあ。

夏季には、バッキンガム宮殿の一部を開放して、博物館として様々なものを展示してくださっていた。ツアーに含まれている時には、それをお目当てに参加される方もいて、しかも展示物が優れていたから、お客さんたちの満足度が高かった。そういう意味では、仕事面では、かなりお世話になっていたことになるな・・・。あらためましてありがとうございます。

ちょっと話がそれたかな。

最近は、ジェームス・ボンドとロンドン五輪の開会式で共演するなど、ますます親しみ度が増していたが、それでも、僕にとってエリザベス女王は、偉大なる二十世紀の君主です。

 

ゴルバチョフ、エリザベス女王・・・こうして二十世紀がだんだん昔になってゆくのだなあと実感している。

 

それにしても、イギリス国民は大変だな。国歌の歌詞が変わるのだから。

GOD SAVE THE KINGを、しばらくの間は、ついQUEENとか歌ってしまわないか心配だ。余計な心配かな。

でも、仕方ないと思うよ。七十年もQUEENと歌い続けたんだもの。

 

陛下のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

ゴルバチョフ元大統領のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

これらもまた、忘れらないコロナ禍の記憶になるのであろう。
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稲盛和夫さんが亡くなられた。90歳だった。

ゴルバチョフさんが亡くなられた。91歳だった。

政財界の超大物が亡くなった時に感じる時代の変遷は、とてつもなく大きいですね。慣れ親しんだ芸能人などとは比べ物になりません。

コロナ禍に亡くなったということで、さらに偉人たちの記憶は、僕らの中に強く残ることでしょう。

最近は、長生きする人が多いとはいえ、90年以上生きた彼らには大往生という言葉を差し上げたい。
そういえば、うちの父親も93歳で亡くなったなあ。あ、しまった。父をこのメンツに並べて書いてしまった。
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