少し余裕があるなら、城壁の上を歩きたい。歩く価値があるのは、プレーンライン辺りからレーダー門、ガルゲン門を抜けてシュランネ広場まで。あるいはそのすぐ西にあるクリンゲン門まで。この間の一部だけでもいい。
観光客で賑わう中心地に比べて、城壁から眺める旧市街はとても静か。これは街づくりの条例に関係している。
中世の街を再興させる際、街並みを再現するだけでなく、人が住める環境というものを考慮した。そのため、土産屋やテラス席を設けたカフェやレストランは、一部のメインストリートでしか営業できないようになっている。観光客がうるさすぎて、住民の住み心地に影響しないようにするためだ。
だから、城壁から眺めるローテンブルクは、東京で言うと郊外の住宅地のようになっている。
時々、こんな素敵な庭を持っているお宅もあり、素敵だ。
マルクト広場近くのレストランでディナーを終えた。お客さんたちは、涼しくなった旧市街をゆっくり歩きながらホテルにお帰りになった。夜の街の散策にお誘いしたが、昼間の暑さでお疲れのためか、四組のご夫婦はどなたもいらっしゃらない。
仕方ないから、一人で歩き始めた。というか、この時に限っては自分が歩きたいからお客さんに声をかけた。どなたもいらっしゃらないのいのは、計算通りであった。みなさん、昼間に一生懸命動かれていたしね。
でも、まだ夜の八時半過ぎ。八月の半ばのドイツの西の空はまだ赤い。
後方のマルクト広場を振り返る。この時間ならではに濃紺の空の中に中世の街並みが映えていた。これを楽しまずに帰るのはもったいない。
市庁舎も趣が出てくる。かつて神聖ローマ皇帝から権利を買い、帝国自由都市として認められた時に建てられた市庁舎は、この街の自治の象徴。
この時期は、夜遅くまで仕掛け時計で「ヌッシュ市長の一気飲み」を楽しむことができる。
夜の灯りで街の雰囲気が変わる
正面に見える大きな建物は聖ヤコブ教会。
面白いことに、教会の下の部分の吹き抜けが公道になっている。狭い街で大きな建築物を作る時、このような構造になったらしい。この前紹介した「聖血の祭壇」は、この吹き抜けの上にある。
教会をこの角度から見る機会は、一般のツアーではあまりない。吹き抜けを反対側に抜けると、マルクト広場がすぐだ。ちなみに撮影場所のすぐ背後には、ルーブルという、街で唯一の日本食レストランがある。
そのマルクト広場に戻ってきた時、あるカフェバーのドアが開いた。黒い衣装に身を包んだ彼は、店の壁に寄りかかって、グラスに入ったワインを口に運んだ。思わず声をかけた。
「夜警団の方ですよね?」
中世から近世にかけて実在したローテンブルクの夜警団。この制服に身を包んで、六つに分けられた街を、夜間に交替で回っていた。かつて、この街の治安を守っていた彼らは、現在は夜の街の観光案内をしている。八時からは英語、九時半からはドイツ語でのツアーだそうだ。
一度だけ夜警団のツアーに参加したことがある。ツアーの夕食後、マルクト広場に出向き、料金を払って参加した。日本のツアーでは、ローテンブルクではガイドがつかない。経験不足だった自分のスキルを上げるための試みだった。真面目だったなあ。あの時のガイドは、今でも役に立っている。
当時は、彼の呼びかけにこたえ、その場でお金を払えば参加させてもらえた。たぶん5ユーロくらいだったかな。今のシステムは知らない。
「また参加してください。よかったら、あなたもやりませんか?」
「ぜひ。」
と軽い冗談を交えた立ち話を終えて、広場を後にした。暗くなってきた。そろそろホテルに帰ろう。
こういう時の記憶って、とても大切で、次の添乗に生きることがある。一回夜に歩いただけの道を、「僕のお気に入りの散歩道」として案内することがあるのは内緒。
こんな美しい夜のローテンブルクを全く見ずに終わってしまうのは、もったいないと思う。
あー、楽しかった
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