マスター・ツートンのちょっと天使な添乗員の話

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

タグ:ワクチンコールセンター

313日からマスク着用要請が緩和される。

ワクチンコールセンターではどうすべきか。個人的には、業務中はして欲しいと思い、スタッフたちにその旨を伺ってみた。するとこたえは様々。

 

「今さら『こういう顔だったんだ』とか思われたくないから、私は絶対に外しません。」

「化粧が大変だから、今さら外しません。」

「ほうれい線を見せたくないから、絶対に外しません。」

「それらすべてを含めて、諸事情で外しません。」

 

僕が考えていたものとは、どれも全く違うニュアンスの回答だった。

「あの、感染対策上は・・・?」

「それよりもこっちです!」

これ以上聞いたら、みんな不機嫌になるような気がしたので、とりあえずおしまいにした。

とりあえず、「13日以降も職務中は着用」の同意が得られたことだしね。

コールセンタースタッフの九割は女性。それを反映してか、女心丸出しの回答。

でも考えてみたら、今のスタッフはコロナ禍におけるワクチンコールセンターがきっかけで集まった。だからこれまで顔を合わせたのは、ランチの時に、限られた人とのみだ。そんな気持ちになるのも分かる。

 

ふむ・・・。就職面接の時とかどうなんだろう。リモートなら当然マスクを外す。今後、対面での面接があった時、面接官が異性の就職志望者に「マスクをお取りください」と言った時、会話の流れによってはセクハラになってしまったりするのかなあと、少し心配になった。


コロナ禍も終わりだなあ。
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かつて同じベクトルで仕事をしてきたコールセンターのメンバーだが、ここ最近、必ずしもそうではない。

20214月に始まって以来(当初は同年9月で終了の予定だったが、接種回数が積み重なっていくうち、現在にまで至っている)、コロナ収束を願いながら業務を行ってきた。

最近は、マスク着用など一部の例外を除けば、世の中もコロナ禍前とそれほど変わらない状態になりつつあり、それを反映するかのごとくコールセンターも静かだ。

まだ安心できる状態ではないのであろうが、添乗の仕事も着々と増えてきており、僕自身の気持ちは前向きで明るい。

コールセンターの末期は、コロナがおさまりつつある世の中になり、「自分の生活を取り戻そう」と、笑顔で終わるものなのだと思い込んでいた。

 

でも、実際はコールセンター終了後の仕事に困る人もいるそうで・・・。僕が、所属しているチームの内部ではそんなことはないのだが、隣の部屋のスタッフからは、

「ツートンさんはいいよね。ここが終わってもなにも心配ないから。」

と、今週だけで三人から言われた。特に、僕の何かを否定しているわけではなく、自分の悩みを話している過程でそうなってしまったようだが、むっずかしいなあと思った。

 

コロナバブルと言われるビジネスは確かにあった。マスクやアクリル板などが例に挙げられる。

本人たちがどう思っているかはともかく、このコールセンターの現場で、「コロナが落ち着いてきたから心配」と受け取れてしまう言葉を耳にするとは思わなかった。

本当に難しい。これはこれで、コロナバブルだったのかと思うと、少し複雑な気分だ。
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難しいなあと思った。

コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種は認められている。厚労省のHPにもそれが明確に記されている。しかし、最終的にその可否を判断するのは接種現場の医師だ。コロナでもインフルエンザでも、必ずワクチン接種の前には予診がある。そこで医師が止める場合もある。

コールセンターに問い合わせがあった時は、必ずその旨をお伝えすことになっている。

なお、乳幼児の接種の案内には、「かかりつけ医と相談して、計画的な接種をしてください」という注意書きまでされている。

同時接種は可能とは言え、個々の体調や体質などの条件で事情が変わってくるからだ。

これから紹介する方は、まさか自分の子供のかかりつけ医が、同時接種を禁じるとは思わなかったのだろう。

「この前、うちの子が行きつけのクリニックでインフルエンザワクチンを打ちまして。一週間後にコロナワクチン接種の一回目を打つと言ったらだめだと言われました。それぞれの接種を二週間以上空けないといけないそうです。乳幼児接種の案内には、同時接種可能と書かれていたのに納得できません。」

気持ちは分かる。だが、乳幼児の予防接種については、やはり医師とスケジュールを確認して欲しかった。小児科医師は、特にコロナワクチン接種には慎重であるケースが多い。

母親は食い下がってくる。乳幼児接種は大人と違って三回打って完成だ。

「一人分くらい、どこかでなんとかならないのでしょうか?」

難しい。ワクチンの単位はバイアルというが、乳幼児用の場合、1バイアルで10回分のワクチンを注射器にとれる。ただし、一度開封してしまったワクチンは、その日にしか利用できない。7回分しか予約が入らなかったら、3回分は破棄となる。

逆に一人のために、別日の枠をつくろうとすると、10回分の枠を作らなければいけなくなる。また、そのための新医師とナースのスケジュールも調整しなければいけない。

医師もナースもワクチンのためだけに働いているわけではない。普段は自分の職場で診察や治療などを行い、その合間に時間をつくり、接種活動に協力してくださっている。

しかも、小児と乳幼児に関しては「小児科医、または小児科勤務経験がある医師」が接種している(大人の場合は、ナースも接種する)。また、乳幼児の場合は、すぐに体を動かすからか、ナースが一回の接種につき二人つくことになっている(自治体によって異なる可能性はある)。

つまり、大人の接種に比べて該当医師がかなり限定されてしまうため、枠の追加作成が容易ではない。僕ら一般人が思っているより遥かにハードルが高いのだ。

働いている方や、学校に通っている子供の親たちからは、週末枠の増枠をよくお願いされる。だが、それは、医療従事者たちに「休むな」と言っているのに等しい。

限られた時間の中で、医療従事者たちは、本当によくやってくださっていると思う。たまに「手当をもらっているんだから当然だよ。あの人たちも儲かっているんだよ。」などと、仰る方もいるが、そんなことはない。医師やナースによっては、本業に支障が出ないぎりぎりでやってくださっている方もいる。

 

そんなこんなで、母親には諸事情を説明した。すると、納得したうえで

「それでは、うちの子は接種できないのですか?」

と悲痛に訴えられた。僕らは、乳幼児ワクチンを扱っている医療機関の中で、コールセンターを通さなくとも予約できるところをお伝えし、ご自身で問い合わせていただくようにした。

「もし、三回分を確保できなかったら、こちらの在庫と組み合わせて三回にできるかどうか確認しましょう。」

という言葉を添えて。

今日、その方の予約記録を確かめてみたら、コールセンターでの予約分は、すべてキャンセルされていた。きっと、一般の医療機関で必要分を確保することができたのだろう。

このような問い合わせは、時々ある。事情を理解していただくと、その後はワクチン最優先で動いてくださる方が大半だ。それまで私的用事や一生に一度の学校行事を優先されていた方も、コロナが百年に一度のパンデミックであることを思い出すようだ。

まだまだワクチンを本気で受けたいという方はいらっしゃる。こちらが事情を説明しないでも、事前にそれを分かっていただけるようなシステムはできないものかと、時々悩ましい。

医師たちが、あれだけ市民ファーストでやってくれているのに、それが市民に届いていないのは悲しい。

市民ファーストが自分ファーストになるとは限らない。でも、接種を熱望する市民は、心の片隅でいいから「ワクチンファースト」のマインドを少しでもお持ちなら、接種につながるはずなんだけどなあ・・・と思った寒い冬の夜であった。
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難しいなあと思った。

僕が仕事をしているA市のワクチンコールセンターに、B市の人から問い合わせがあった。

「恐れ入りますが、A市でノババックスのワクチンを打たせていただくことはできませんか?」

基本、自治体が運営している接種会場では、その街が発行した接種券を持っている人しか受けることができない。つまり、住民票がA市にある人だ。単身赴任や学生の一人暮らしで住民票を移していない人、妊婦の里帰りやDVで一時的に避難している人は、一定の手続きをすれば接種できるが、条件をクリアしていないと、なかなか受け付けない。例外としては、通院している病院が接種を実施している場合、そこが受け入れてくれれば自治体関係なしに接種できる。

「その制度のことは知っているのですが、事情がありまして・・・。」

その方は続けた。聞けば母親が医師から、「コロナワクチンを接種するなら、体質上、ノババックスしか許可できない。」と言うことだった。

「でも、私たちの自治体では扱っていないのです。近隣で扱っていたのがB市とC市でした。ただ、母は障害者でもあり、体力もないので、できましたら隣のA市で受けたいのです。」

対応していたスタッフから報告を受けた僕は、以下のことを知らせる指示を出した。

1.     A市のコールセンターで受け付ける場合、市のワクチン事業部の許可が必要になる。コールセンターから伺ってみるので、お待ちいただきたい。

2.     この方は、まだ一回も接種をしていなかった。コールセンターで扱っているノババックスのスケジュールだと、二回分は提供できない。

3.     A市内で、コールセンターを通さずに、独自でワクチンを接種を運営している医療機関がいくつかある。その中でノババックスを扱っている医療機関がひとつあるので紹介する。最終的な接種可否の判断は医療機関の責任者のに委ねられ、そこに市は介入しないので、接種できるかもしれない。もし、一回分しか確保できない場合は、コールセンターで取り扱っているものと一、二回目として組み合わせられる可能性もあるので、お知らせいただくようにすること。

かくして、市に問い合わせると、「念のため上の指示を仰ぐ」と言われて三分ほど待たされたが、好意的な回答が返ってきた。

「今回は、その方個人の問題ではなく、ワクチンの流通の問題なので受ける。」

よかった。きっと喜ぶだろう。早速電話してみた。でも、医療機関は僕らよりも遥かに寛大で素早い対応をしていた。

「ありがとうございます。でも、医療機関の方から、『受けましょう。行政的な手続きは必要ない。接種券だけ持っていらっしゃい』と仰っていただけました。コールセンターも、親身に対応していただいてありがとうございます。」

この方の対応をしたスタッフは、「そこまで市民に寄り添わなくていいのに」というくらい寄り添う対応をする人なのだが、この件ではその人間性が接種に繋がったと思う。事務的に断らず、話を持ってきてくれてよかった。

本職は、旅行業界で働くその人の丁寧な対応に感謝だ。
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コールセンターのスタッフたちは、「断るまでもない」と送り出してくれた。

一度、自宅に帰ってから故郷に向かい、母が入院する病院に着いたのは午後四時過ぎだった。

ようやく会えた母は、人工呼吸器をつけて言葉を話せる状態ではなく、おまけに苦しそうにしていた。

だが、僕の呼びかけにはかろうじて反応してくれた。

医師の説明によると肺炎とのことだった。高齢になると免疫が落ちて、どうしても癌と肺炎は起こしやすくなる。糖尿病を患っていた母は、特にその傾向が強かったらしい。

かつてストイックだった母は、軽い認知症の症状が出始めてから、自分をコントロールできなくなった。こと食事やおやつに関しては、周りの忠告に一切耳を傾けることがなくなった。

認知症の進行は遅く、時々おかしなことを言う事はあったが、周りとの会話などは普通にできたので、ある意味余計に大変だった。

父が亡くなった直後の頃だ。20203月も半ばを過ぎると、マスクを着用して出歩くのが常識になりつつあった。しかし、母は一切着用せずに、おかまいなしに出かけていた。行きつけの蕎麦屋や喫茶店では、受け入れてくれてはいたものの、僕ら家族は先方への迷惑を心配するようになった。

特に、足利市内に住んで母の面倒を主に見ている弟にとっては、深刻な問題だった。

「それならコロナ禍の間、療養という形で当院にてお預かりしましょう。」

そんな時、日頃お世話になっている病院が、救いの手を差し伸べてくれてので、ありがたく話に乗らせてもらった。その時は、まさかコロナ禍がここまで続き、会える機会がここまで限定されるとは思っていなかった。

筋金入りの病院嫌いの母の糖尿病はかなり進んでいたが、節制された病院食のおかげで症状はおさまった。また、時々背中を痛がっていたが、その原因が背骨の圧迫骨折だったこともわかり、治療することもできた。早い話、入院当初はいいことばかりだった。

第一波がおさまった際、僕と弟が面会できた頃は、明らかに顔色が良く、表情も穏やかになり、「入院させてよかった」と、喜んだものだ。

いつか、お気に入りの蕎麦屋に連れて行き、大好きなそばがきを食べさせてあげられる日が来ると思っていた。

足が弱ってきているから、実家でのひとり暮らしは難しいかもしれないが、環境の良い高齢者施設へ移る事も考えていた。

しかし甘かった。目を閉じて、やせ細った体に抗生剤の点滴を打つ姿が痛々しい。

「まだ意識が戻る可能性はありますが・・・」

と、言いながら医師の歯切れは悪い。

面会は、家族だけでなく、親戚や親しい友人などにも許されるようになった。二年間、家族以外の人間に会っていなかった母だが、思っていたよりも多くの人が見舞いに来た。僕や弟が思っていたよりも、母は孤独ではなかったことがわかり嬉しかった。

それほど仲がよくない親戚の義理見舞いには無反応。仲が良い親戚や妹、近所に住んでいるおしゃべり友達の見舞いには、力を振り絞って眉毛を動かしたりわずかに指を動かしたりして反応した。はっきりと区別した対応、いや反応は、いかにも母らしかった。しかし、目を開けて言葉を発することはなかった。

金曜日、土曜日と何度病室を訪れたことだろう。長時間の滞在が許されなかったので、そうするしかなかった。

そして、日曜日だけは面会できないということなので、僕は、一度東京に戻り、なにか変化があったらすぐに足利に帰ってくるようにした。

この時、呼吸が穏やかになり、容体が安定したように思えたのだ。医師も「安心はできないが、今は安定しているように見える」と言ってくれていた。

その日は元々、埼玉県の熊谷でラグビーのチケットを取っていた。そのまま帰京することも考えたが、気分転換に熊谷に寄って観戦仲間と気分転換をすることに決めた。

こんな時に、ラグビー観戦など、どう考えても現実逃避だし、多少のうしろめたさはあった。しかし、モヤモヤを抱えて一人で東京に帰るよりはマシだった。

気分転換以上に気持ちを切り替えられた観戦後、みんなで飲み屋に入ってビールを一杯開けた時、弟からの電話が鳴った。胸がザワつく。

「母さんが急変したって。今どこ?」

「熊谷。すぐに帰る。」

友人たちに挨拶して、すぐに駅前でタクシーに乗った。群馬の太田駅からは、ちょうどよい時間の電車がなかったので、そのまま足利まで熊谷のタクシーを走らせた。

心の準備はできているはずなのに、どこか覚悟ができていない。

 

病院に着いた。日曜日なので、緊急用の入り口から中へ案内された。

「こちらです。」

そのままナースに誘導された。

バイタル計測器は止まっていた。人口呼吸器は取り外されて、母の顔には布がかけられていた。

「先ほどお亡くなりになりました。」

「はい。ありがとうございます。」

布をあげて母の顔を見て、そっと触れると、まだ温もりが残っていた。
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十月三十日にイタリアから帰国して、三十一日に無事に報告を済ませた僕は、十一月一日からワクチンのコールセンターに復帰した。

この頃、既にワクチンは従来型からオミクロン対応二価ワクチンにシフトしていたが、その接種対象となっていたのが、この時点で六十歳以下の人たちで、二回以上の接種を済ませている人たちだったのだが、イマイチ反応が鈍かった。接種を真剣に考えている市民はそれほど多くはないように思えた。一部の人たちを除けば、医療従事者などの接種を職場で義務化されている人たちだけが熱心に問い合わせをしてくるくらいだった。

 

それに対して、次第に増えてきていたのが、六十歳以上の市民からの問い合わせだった。しかも、最後の接種からの間隔が五か月から三か月に短縮されたため、コールセンターの対応も急がねばならなかった。

僕も、久しぶりの添乗から帰国したばかりで、ふわふわしている脳みそと精神状態を引き締めながら、仕事に向かっていた。

今いる自治体のコールセンターでは、これでもリーダーなどになってしまっていたから(これもマンパワー不足の例だと思う)、甘えは許されない。引継ぎをしていたスタッフに、様々なことを教えてもらいながら、おそらくワクチン事業で最後の繁忙期になるであろう時に備えた。

実家の病院から、連絡があったのがその週の金曜日。十一月四日のランチ時だった。

「お母さまの様子があまりよろしくありません。一度、こちらへ来ていただけますか?」

「わかりました。」

と、こたえたものの、僕は一瞬迷った。ワクチン事業の最後の繁忙期の出だしは現場にいたい。せめて、この日だけは・・・

「あの、一度来てくださいというのは、明日でもよろしいのでしょうか?」

「お仕事ですか?よほどのことがなければ、すぐにでも来ていただきたいのですが。」

「危篤ということですか?」

「今すぐということではないですが、いつどうなってもおかしくない状態ではあります。」

「・・・わかりました。」

電話を切ると、すぐに弟から電話がかかってきた。

「病院から聞いた?早く帰ってきたほうがいいよ。父さんの時、大丈夫だと思っていたら、死に際に会えなかっただろ?今度は同じ過ちを犯さないことを祈るよ。」
母が死ぬと決めつけているような弟の口調に、僕は少し腹が立った。

「そんなにやばいのか?さっき、病院の人はそこまではって・・・。」

「今すぐってわけじゃないらしいけど、今日から一日何度でも面会してかまわないって言われている。それだけで普通じゃないってことが分かるだろ?」

母が入院していた病院は、感染者が劇的に減少した一時期を除いては、たとえ家族と言えども、唯一の例外を除けば面会が禁止されていた。

唯一の例外。それが危篤だ。

「帰る。」

「それがいい。」

僕は、許可を得るためにオフィスへ急いだ。
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八月末日に締め切りのコンテストがあったので、中旬からは、その作業に夢中になっていた。昼間はコールセンターの仕事。夜は帰宅してから執筆。我ながら頑張ったものだ。

その間に、いろいろなことがあった。仕事では、オミクロン株対応ワクチンが導入されるため、ワクチン業務が延長されることが決まった。2021年の4月に始めた時は同年9月までというはずだったのに、11月までとなり、その後2022年の7月までと言われ、さらに9月と言われてから、結局12月まで存続することになった。そこで本当に終わるのか?いったいいつまで続くのか。

とりあえず、9月までは延長濃厚だと聞いていたのだが、それ以降は曖昧だったので、10月の海外添乗のリクエストは受けてしまっていた。「受けてしまっていた」というのは、あくまでコールセンターに気を遣っている表現であって、行きたいから受けていた。

それ以前にも、添乗の話があることにはあったのだが、先に受けていたワクチンコールセンターの仕事を優先しなければいけなかったために、受けられなかった。

さすがに、添乗員として取引先との関係を壊したくないので、10月の海外添乗に出ることについては、コールセンターの運営側に理解してもらっている。

その決定と、ほぼ同時に日本入国時の規制緩和。三回ワクチンを接種していれば、陰性証明書不要という報道が流れた。海外旅行業従事者は、歓喜に沸いた。と同時に、「コールセンターは、本当に12月まで必要とされるのだろうか?」と、疑問がスタッフの間で出る。

そんなこんなで、落ち着かない日々の中で、ようやく執筆に集中しようとしていたら、今度は、子供の頃から自分をかわいがってくれていた叔父が亡くなった。

2020年の3月の父の葬儀の後、脳梗塞を起こした後、懸命のリハビリによりよく回復したことは知っていた。だが、筋力の低下で痰を吐き出すことができなくるなど、様々な体調面での不良が重なり、体調が急変したとのことだった。

もう少ししたら、会いに行けると思ったのに、残念なことになった・・・。

叔父は、やたら広い実家の寺の敷地の中に、自家の墓を建てたいと言っていたので、先週の土曜日は、その取り決めに立ち会うために、僕も足利に行くことになった。うーむ・・・。大切な叔父の墓のためとはいえ、書く時間が減っていく・・・ということで、わざわざ実家近くのホテルに泊まることにした。天気があまりよくなさそうで、帰京する前に布団をほせないであろうと思い、あえてホテルへ。

作家気取りでホテルで執筆だったのだが、これが非常にはかどった。しっかりした朝食がサービスされて、昼は前もっておにぎりを買っていた。夜は歩いて五分ほどのところでラーメンをいただいた。

つまり、トイレと風呂以外は、ほとんど椅子から立ち上がらずに集中できた。

これほど座りっぱなしで、ひとつのことに集中できたのは、受験以来だろうか。作家気取りを試みたことで、「ホテルに缶詰め」の意味を実体験できてしまった。

今回提出した作品は、全部で七万二千文字くらいなのだが、そのうちホテルで朝から晩まで書いた部分が一万文字。四百時詰め原稿用紙二十五枚分を書けたのだから、その意味は大きかった。これがなかったら終わらなかったかも。

叔父の墓のことも無事に終わり、帰京して、無事に八月三十一日の締め切りに間に合ったのだった。

 

前回の提出の時に、書評をいただた出版社の方に報告したら、労いの言葉をいただいたうえで、

「それで、次に書きたいものは決まりましたか?」

「え?」

「コンテストの結果なんて、待っていてはダメですよ。そんなものに一喜一憂している時間なんて、ツートンさんにはありません。どんどん書いてください。」

厳しい言葉だった。でも、なんか僕は、仕事も遊びも忙しいほうが楽しい。

さて、明日から連載を再開するか!
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泊まっていたホテルからの眺め。鑁阿寺の正門。朝食付きシングル一泊4,200円。
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ついこの前まで、余らないように予約を取る時に工夫していたコロナワクチンが、いきなり足りなくなりそうだ。常に国から供給があるから、いずれは接種できるのだろうが、一回目の接種予約が始まる前のように、いちいち品薄になる状態が予想される。

感染者急増の影響が一番だが、テレビに出ている専門家の先生の影響も大きい。ちょっと前に書いたが、「感染者が減っている今ではなく、感染しやすい冬や、増加傾向にある時に接種するのが効果的」とかいうあれだ。

ああいう発言を、都合の良いようにとらえた方が多かったのだろう。先月半ばまでの予約は、本当に少なかった。そして今、その時に予約を控えた人たちが、遅れてやってきて、直近の時期に接種券が届いた人たちの予約枠を脅かしている。

自治体にもよると思うが、僕のところは、各人の最終接種から五か月後に当たる時期に、小分けにして接種券を送っている。三回目以降は、予約開始可能時期が、最終接種の時期によって異なるのでそうしている。予約混雑を避ける意味合いもおそらくあった。

しかし、感染者数が下降傾向にあった時は、極端に予約数が少なかった。そして、新たな問題が発生した。

前に送られた人が五か月より後に予約してしまうと、その人たちに合わせて設定した分のワクチンが余る。後から送られた人は、前からズレて予約した人たちのお陰で、本来自分達が入ろうとする時期に予約できない。そのうえ、早い時期の余ったワクチンについては、前回の接種より五か月経過していないという理由で、やはり予約できない。

利用できなかったワクチンは、後に回せばいいと思うかもしれないが、ワクチンには消費期限があり、古くなったものは破棄しなければいけないため、どうしても使わずに捨ててしまうものが出てくる。

こうして慢性のワクチン不足が始まるのであった。

 

こんなに正しい理由があっても、ワクチンが切れて、新しいものが入ってくるまでは、「申し訳ございません」と僕らは謝らなければいけない。

昨日も、ワクチンが切れた接種日に関しては、みんなでよく謝った。きっと一生分謝った。そして今日は、生まれ変わった分まで謝ることになるのだろう。

ということで接種希望者のみなさん、病気やなにかしらの何かしらの理由がある人は別にして、ワクチンは、なるべく時期を守って打ちましょう。今は特に流行っていることだしね。


ところで、嬉しいことがひとつある。尊敬している添乗員の方が、今日、コロナ禍後、初めてのツアーに出る。

既に、少しずつあちこちで出発しているツアーがあるとは聞いているが、顔見知りの添乗員が出るのは初めてだ。

きっと「楽しかったよ!」と帰ってくることを期待している。
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そして、この日も夕焼けが美しかった。
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その時、電話がピタリと止まった。

長く続く沈黙は、回線に異常が生じたのかとさえ思った。

コロナ感染者が、増加傾向から急激な増加という状態に移り、ここ数日はワクチン予約の問い合わせが増加していた。数には波があるが、誰も問い合わせに答えていない状況は、ここ最近では珍しかった。

「あ!安倍さんが撃たれた!」

誰かが声をあげた。新型コロナウイルスやワクチンについては、専門家の発言や政府の発表をテレビで見た高齢者たちが、即座にそれについて問い合わせてくることがあるので、時々ニュースサイトでコロナ関係をチェックするよう推奨している。(テレビで言うような情報については、コールセンターのスタッフが先に知っているということは、滅多にない)

その作業をしたとき、真っ先に目に入ったのが、狙撃事件だった。

一瞬ざわついた後、静まり返るコールセンター。それぞれがニュースをチェックし始めた。「心肺停止」という文字を目にして「え?」と、動揺する者がいた。

「本当なの?ここ、日本だよ?」と呟く者もいた。

日本中に走った激震と緊張を、僕らはコールセンターの静寂で感じていた。理由が分かって来ると、静けさの質が違ってくるから不思議だ。

突然のニュースに動揺したスタッフたちが、だんだんと落ち着いてきた頃、少しずつ電話が鳴り始めた。速報から1時間半ほど経ってからだろうか。

気のせいか、スタッフの集中力がいつもより高いような気がした。そうせざるを得なかったのか。

 

そして夕方、仕事が終わった頃「死亡」という速報に溜息をついた。

 

どんな意見の相違があろうと、そこに憎しみがあっても、暴力で解決できることなどなにもない。

スキャンダルも批判も、あれだけ長期政権なら出てくるに決まっている。それらは決して許されないものだが、だからと言って殺して良いはずがない。(もっとも犯行動機はまったく違うということになっているが)

海外では、日本国内でより評価されていたかもしれない。その証拠に、アメリカの雑誌TIMEでは、次号の表紙はスーツ着用して腕を組む安倍さんだという。

いや、そんなことよりも何よりも、単純に、長期に渡って日本のために働いた方が、そんな最期を迎えてよかったはずがない。このテロは、絶対に許されるべきでない。

 

謹んで哀悼の意を表します。

 

「コロナの記録と記憶」のカテゴリーに入れるかどうか迷ったが、こちらに入れた。ウクライナ問題も含めて、僕の中では「コロナ禍」というひとつの時代での出来事なので。
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最近、コールセンターへ面倒な問い合わせが続いた。
「○○先生が、4回目のワクチンは今打っても効果がない。持続性を考えたら、冬の流行前に打つべきだ。接種はなるべく遅らせたほうがいいと仰ってるんだが、あんたらはどう思う?」
先生が仰っていたのは、おそらく午前に放送されているどこかのワイドショーの中でだろう。僕も、自粛期間中は散々お世話になり、勉強させていただいた。

だが、この問合せをコールセンターにするというのは…
そんな朝の番組をスタッフが見ているはずはないのだが、問い合わせを受けた者の中には「お前は勉強不足だ!」と、怒られた人もいるらしい。いや、彼女は勉強しているよ。そんなにいじめないでくれよ。朝のワイドショー見ないくらいでさ。

とはいえ、あまり続くと無視もできない。僕は、
「かかりつけの医師などにご相談ください。こちらは、ワクチンの予約業務が主であり、専門的な知識に関することはお答え致しかねます。」
と、スタッフに応えるように指示していた。
ところが、とうとう一歩も引かない頑固ババ…いや、女性が出てきて、とりあえずリーダーの僕に電話が渡された。しかし、なんとなく勉強して対策を練ってはいたので、すんなりは答えられた。
「○○先生がそう仰ったのは、10日ほど前で、その頃はまだ首都圏の新規感染者が一貫して減少していました。そのご意見は、冬場までは感染者が増えないという前提だったと思います。
ところが、また少しずつ増えていますから、今、先生が同じことをおっしゃるとは限りません。ワクチンは、病気が流行る前に予防として打つものですから、微増とはいえ、増え始めたこの時期にワクチンを打つのは理に適っていると思います。」
「なるほど。冬の感染についてはどう思われるの?」
「そこまで私には答えられません。ただ、冬は冬です。それとは別に今感染しないように気をつけるのに、ワクチンが必要かどうかというお話です。必要ないと思ったら受ける、必要ないと思ったら受けない、ということでいいと思います。」
「わかりました。確かに最近、少しずつ増えていますものね。はい。受けます。今の説明で納得しました。」
「え!?いや、今のはコールセンターでなく、私個人の意見です。説明ではなく意見…」
「分かってます。大丈夫。納得したのは私ですから心配しなくて大丈夫よ。本当に大丈夫だから!」
納得してからも頑固バ…いや、女性だった。
ちなみに、先生のそのお言葉は、今現在、ネットで検索しても探すのが難しくなってきた。
専門家の言葉は、出てきてはすぐに消える。またはよく変化するが、新しい研究結果が出たり、感染状況次第でそうなるのは当たり前だということを、コールセンターに来てから、一層学ん
だ気がする。

先程の女性も、様々な情報に惑わされる中で、背中を押してくれる何かが欲しかっただけのかもしれない。

きっと、僕の知ったかぶりがなくても、4回目のワクチンを受ける決心をしていたと思う。そんなものだ。
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