マスター・ツートンの仁義ある添乗員ブログ

自称天使の添乗員マスター・ツートンの体験記。旅先の様々な経験、人間模様などを書いていきます。

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これまた新潟でのお話。舞台は佐渡島。

ホテルの売店で、どんなお土産があるのかチェックしていた時のことだ。かわいらしい朱鷺(トキ)のデザインが入った小さな箱を見つけた。中身はクッキー(ビスケットかも)。なにより値段が安かった。ひと箱250円。店員さんが言うには、

「それは、修学旅行生用に仕入れるのです。ここに置いてある通常の商品は、高校生くらいまでには高すぎますからね。」

僕らが、二泊している間に、高校生のグループが出ていき、中学生が入ってきた。その後は小学生が入ってくると言っていった。みんな新潟市内からだそうだ。港から船で2時間。ずいぶんと近場の修学旅行だ。

「いや、それだけ入ってくるならあっと言う間に売れちゃいますね。」

「それが、今年はいつもほど売れないんです。」

「え?そうなんですか?」

「今年は、みんなクーポン持ってるでしょ?だから、小学生でもあちらにある大きいの買っていくんですよ。」

「あの、大きなお菓子の箱詰め?三千円のをですか?」

「はい。」

「小学生が?」

「はい。」

「・・・・・・生意気ですね。小学生のくせに。」

「・・・はい()

店員さんは、マスクの上に手をあててクスクス笑い出した。

「中学生や高校生になると、知恵がついてきてね、お土産が250円のクッキーで、クーポンでは自分の好きな物を買ってる子もいます。それでも、ここぞとばかりに高いものを買うのは一緒ですね。」

なるほど。地域共通クーポンで小売り事情がこのように変わることがあるのか。

 

「ふーん。これ、余ってるの?安いなあって思ってたんだ。」

そばで話を聞いていたお客さんが会話に入ってきた。

「倉庫にまだまだありますよ。」

店員さんがにこやかにこたえた。

「段ボールひと箱どれくらいなのかな?」

商売が始まった。お客様の男性は、奥様と相談して、ひと箱丸ごと修学旅行生用朱鷺クッキーを購入して、その場で宅配手続きを済ませた。

「よしっ!これでかなりクーポンが片付いた!!」

満足そうなご夫婦。

後からやってきたお客様も、そのご夫婦から話を聞いて、次々と修学旅行生用朱鷺クッキーを購入した。さすがに箱買いされる方はいらっしゃらなかったが、5個、10個をお求めになられた方はたくさんいらした。

一番最初に購入されたお客様が、店員さんに得意気に話した。

「よかったねえ、余ってる品がはけて。」

「ええ。本当にありがとうございます。助かります。」

と、店員さん。

僕は、興味深くその現場を眺めていた。そして、みなさんがお買い物を終えて、お店が静かになった頃、

「よかったですね。品がはけて。」

と、労いの言葉をかけた。すると、店員さんはエレベーターのほうを覗き込んで、お客様が誰もいなくなったことを確かめてから。

「添乗員さんよね?じゃあ、言ってもいいわよね。」

と、言って語り始めた。にこやかな営業スマイルは、少々苦笑に変わっていた。

「この時期だからありがたいのだけどね。大人には、大人の商品を買ってほしいわあ()

言われてみれば、このクッキーを10個買っても売り上げは2500円だ。お菓子の詰め合わせ一つほどにしかならない。この時は極端だったが、実は、大人が修学旅行生用朱鷺クッキーを買っている現象は、今年に限って、多く起きているとのことだった。

「小学生だと、ふだんなら持たせてもらえないお金を持っているようなものだから、買っちゃうのでしょうね。大人だと、お土産を買っていくべき人がたくさんいると、できる限りクーポンの中で済ませようってことになっちゃうのかしら。」

店員さんの分析は、なかなか鋭いと思う。

僕が、店員さんとこんなことを話さなければ、もう少し高いものを買ってくれたのかなあという、多少の罪悪感があったので、その売店で、地酒を買った。佐渡のお酒もまたうまい。

 

以上、地域共通クーポンで発生した小売り現場の逆転現象をお伝えしました。

 

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追加の小ネタ

佐渡から新潟へ渡る船の中で、あるお客様から言われた。

「ずっと気になっていたのですが、今回のクーポンの金額。間違えていませんでしたか?友達が9月に同じツアーに参加したのですが、13000円もらったと言ってました。私たち、12000円でしたよ。同じツアーなのにおかしくないですか?」

「9月と11月では料金が違うのです。クーポンの金額は旅行代金の15%です。申し訳ないのですが、ツアーの種類は関係ないのです。」

お客様は、手元にパンフレットを広げて代金を確かめた後、「失礼しました。」と言い残して去っていった。そう。クーポンは、代金の15%です。よろしくお願いします。

コロナ禍の中でも、修学旅行が近場で実施された地域はあった。例えば新潟県。

県内のあるホテルに宿泊した時、同じホテルで小学生の団体と一緒になった。小学生に限らず、学生の団体と一緒になると、大浴場は、一時的に彼らの貸し切りタイムとなる。そういえば、修学旅行の時には、自分たち以外の個人客は誰もいなかったが、そういうことだったのか。

今回、このホテルでは、お土産屋さんでの貸し切りタイムもあった。館内の売店の様子を見ようと行ってみると、売店近くにあるソファでお客さんたちが座っていた。

「お店に入らないのですか?」

「今、あの子たちの貸し切り時間なんだって。」

なんだか面白そうだったので、お客さんと一緒に様子を観察していた。

20人ぐらいずつのグループに分けて、30台前半くらいであろうか、女性教員が、児童に一生懸命何かを説明していた。

 

「これはお金です!」

そう言って、手に持っていたのが、地域共通クーポンだった。小学生にわかるような言葉で、そのシステムについて説明している。まさに学を修めていた。コロナ禍ならではの修学旅行プログラムだ。

 

GOTOキャンペーンを使って旅行を手配すれば、当然地域共通クーポンは発生する。ただし、前述したとおり、クーポンは、旅行先で旅行期間にしか使えない。

よって、代金を払った保護者ではなく、小学生の子供がクーポンを手にすることになる。

また、クーポンには細かい番号が振られていて、発行時に、誰がどの番号のクーポンを所持しているか分かるようになっている。これは、一般のパッケージツアーでも同様だ。旅行会社は、万が一の不正や不祥事に備えてどのお客様が、どの番号のクーポンを所持しているか把握することが義務になっている。(その把握がかなり大変な作業になっているらしい)

ツアーに参加していて、旅行会社が連れていったお店で、ツアーバッジをつけていれば、クーポンを出すだけで買い物させてもらえるが、完全な個人旅行者の場合、クーポン利用時に身分証明書の提示を求められることがある。

あくまでクーポンは、個人に帰属するものだ。つまり、原則学校や教員がまとめて用途を決めることはできない。

 

以上の理由で、この修学旅行では、「子供のためのクーポンでお買い物講座」が行われたと思われる。

さあ、いよいよ買い物タイムだ。先生たちが見守る中、楽しそうにいろいろなものを見ている。

「俺、これでいいや。」と即決する男子。みんなで集まって「これかわいい、あれかわいい」ときゃいきゃいやっている女子。買い物をしている時のノリは、世代を超えて男性も女性も変わらない。

そのうち、ある児童が先生に声をかけた。

「先生!ここに千円札が落ちています!!」

持ち主は、すぐに見つかった。

「夢中になっている時も、気を付けてね。お金はすぐにお財布に入れて。私の見ている前で。」

男子が財布にお金を入れると、すぐに解放された。

少しして、別の声が聞こえた。

「先生!千円のクーポンが落ちてます!!」

今度は持ち主が名乗り出ない。先生は、手元にあるファイルを広げた。おそらく、クーポン一覧表で持ち主を確かめていた。

「〇〇くん!こっちに来て!!」

落とし主が分かると、先生は男子生徒を呼んでお説教を始めた。大人と子供の違いはあるが、同じクーポンを案内する人間として興味があったので、声が聞こえるところまで行って、話を少し聞いてみた。

「これはお金なんだよ。なくさないでって言ったでしょ?」

「ここにある番号はね、○○君の番号なの。もし、あなたが落としたこのクーポンで、誰かが悪いものを買ってしまったら、あなたがそれを買ったことになっちゃうの。分かる?」

最初、全員に言ったことを、今度は、より細かく教えている。お説教は3分くらい続いた。買い物タイムの中にあって、長過ぎず短過ぎず、正しいことを感情的にならずに言う、完璧に近いものだった。最初、あまり真面目に聞いていなかった男子児童が、きちんと話を聞くようになるまでじっくりと話していた。

「いい先生だなあ・・・。」と、僕は感心していた。

 

翌朝、出発時間が近いせいか、先生チームとロビーで一緒になった。前日のことを少し聞きたかったが、忙しいだろうと思って、遠慮してこちらの準備をしていると、

「おはようございます。昨日は、いろいろご協力いただいてありがとうございました。」

と、あちらから挨拶してくださったので、ついでに少しお話した。クーポンについては、

「まさに今しか学べないですからね。買い物も実習です。システムだけでなく、お釣りの出ないクーポンでいかにきちんと買えるか。」

「現金を落とした子とクーポンを落とした子で、叱り方が違うと思ったんだすけど、あれは意図的だったんですか?」

先生たちが、顔を見合わせた後、笑い出した。

「よく見てましたね()。現金を落とした子は、『しまった・・・』って顔をしていたので、注意で留めました。クーポンを落とした子は、自分が落としたことにも気づいていなかったし、『お金を失くすところだった』という自覚がないように見えたので、それを分かってもらえるまで話を聞いてもらったんです。」

「なるほど。クーポンの説明は、僕ら添乗員も苦労する時があります。落とした時の『誰かが悪いものを買ったら、あなたが買ったことになる』のくだりは参考になりました。」

「そこも聞いてたんですか?恥ずかしいなあ()あれは、クーポンの番号は個人情報の一部なのだから、それを分かってもらうためです。でも、『個人情報を落とすのと同じ』というのは、なかなか小学生ではピンと来ないんです。それでああいう例え話にしました。実際にクーポンで悪いものを買えるかどうかはともかく、個人情報を落とした時の例え話としては、分かりやすいでしょ?」

「確かに。ふーん。ますますなるほど。」

「本当にそう思ってますか?()

「思ってます。とても思ってます。」

 

この時点で、どれほどの児童が、先生が言ったことを全て把握しているかはともかく、真剣に説明してもらった言葉は、記憶に残るだろう。だんだんと成長していった時、様々な場面で「あれはこういうことだったのか」と、思い出す場面がきっとある。僕自身の経験でもそうだ。

地域共通クーポン券の利用は、子供たちにとって、コロナ禍における、珍しく貴重な体験だ。その本来の意味を理解するのは、もう少し後であるだろうけど。

それにしても、いい先生だなあ。小学校の時、ああいう人に教わりたかったな。

 

次回。修学旅行編をもうひとつ。

GOTOトラベルキャンペーンを使って旅行を申し込むと、必ずもらえるのが「地域共通クーポン」だ。今回は、それについてのエピソードを紹介しようと思う。

当初、いろいろと混乱を招いた話は、ここでは割愛。メディアその他が散々悪口を言いまくっていたので、ここでは言及しない。僕が現場に出るようになってから、感染者数が増えてキャンペーンが停止するまで、概ね好評だったクーポンを使った現場について話そう。

 

個人旅行者にとっては、大変便利な代物で、レンタカー代、ガソリン代、その日の食事代などなんでも使えてしまうから、本当に現金の節約になった。利便性で文句を言う人はいないだろう。

逆に、宿泊や移動手段、大半の食事が込みになっているパッケージツアーでは、たまにある自由食とお土産くらいしか使い道がなく、消費に苦労しているお客様もいらした。

 

利用されたことがない方のために、面倒くさくない程度にクーポンを説明する。必要に応じてちょっとずつ案内しよう。そうしないと、それだけで嫌になって最後まで文章を読んでもらえないから。基本的には以下の通り。

・旅行会社か宿泊施設で発券される金券。旅行代金の15%分の金額で発行される。端数が出た場合は四捨五入。なお、お釣りは出ない。

・宿泊ツアーの場合なら、宿泊地の都道府県から発行される。利用エリアは、発行都道府県と隣接する都道府県。この場合の隣接は、海を挟んでもOK

・有効期間は旅行期間中のみ。

・電子クーポンと紙クーポンがある。ツアーでは紙クーポンが配布される。

 

以上。少しずつと言いながら、これだけ覚えておけば、だいたいなんとかなる。金券には違いないが、他に比べて有効期間や有効地域に、かなりきつい縛りがある。

こんなトラブルを聞いた。あるツアーは、島根、鳥取を旅した後、兵庫をに入り、最後は伊丹空港から飛行機で羽田に帰る行程だった。参加客の多くは、伊丹空港で、鳥取のクーポン券を使おうとした。伊丹市は兵庫県。兵庫と鳥取は隣接しているから、普通は有効と考える。

ところがどっこい。伊丹空港のターミナルは、実は、大阪府池田市。(空港敷地は、大阪府豊中市、池田市、兵庫県伊丹市に跨っている)。大阪と鳥取は隣接していない。そのため、クーポンは使えないと案内されてしまった。

「ここは伊丹空港ではないのか!?」

と、お客様が怒ったという。気持ちは分かる。でも、ルールはルールだからどうしようもない。挙句の果てに添乗員が

「あんたが、ちゃんと教えてくれないからだ!」

と怒られたそうだ。「理不尽だ。自分で調べろよ。」と思われた読者もいることだろう。だが、添乗員の中には、

「鳥取のクーポンは、伊丹空港でご利用いただけます。」

と言ってしまった者がいたらしい。「言ってしまった者がいたらしい」というのは、このケースは複数あったということだ。おそらく、それを言ってしまったのは、みんな関東の添乗員だろう。関西の添乗員に言わせると、「伊丹空港ターミナルは大阪」は、常識らしいから。

僕は知っていた。知ってはいたが・・・使えるって言っちゃったかもしれないなあ・・・。同じ施設で敷地が跨っていたらセーフと思ってしまう気持ちは分からないでもない。

 

ここは間違えないように、伊丹空港という呼び方を使わないようにしよう。正式名称は「大阪国際空港」だ。これで悲劇は二度と起こらない。まあ、これは添乗員の間では有名な話ではあるけれど。一般参加者の方々、気をつけましょう!

 

と、いうことで次回につづく。

いきなり関係ない話だが、今年の箱根駅伝の展開は劇的だった。駒沢大学の大逆転劇は、しばらく記憶に残るだろう。

その影に、もうひとつ劇的な結果があった。青山学院の復路優勝だ。往路で低迷した際、原監督のコメントが、紙面に小さく載っていた。

 

「復路は優勝を狙う。」

 

その通りになった。復路だけで見たら、二位の駒沢とはたったの二秒差での首位。両校が一緒に走っているわけではないから、見る側に実感こそないが、影のデッドヒートだった。さすが経験豊かな強豪チーム。ただでは終わらない。意地を見せると同時に、往路での悔しさがさらに増したであろう。それを生かして、来年はさらに強いに違いない。復路の優勝は、往路と違ってランナーが先頭でテープを切らないから、人々の記憶にも残りにくい。だから、ささやかながらここでお祝いしよう。青山学院、復路優勝おめでとう!

往路優勝=創価大学 復路優勝=青山学院大学 総合優勝=駒澤大学

全部顔ぶれが違うってのも、珍しくていいものだ。

 

ところで、先日ここで報告した通り、民間のPCR検査で陰性が出たので、帰省を決行した。すぐには動かず、13日の昼過ぎの電車に乗る。ふだん、都内で暮らしてる時もそうだが、いや、コロナ禍以前からそうだが、動くときは人がいない時に限る。結果、有料特急の1車両が貸し切り状態となった。特急料金860円で貸し切りだから、これはありがたい。東京に戻る時も、時間を選んで帰ろう。
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筆者が乗った浅草発急行りょうもう号の車内。足利市駅に着くまで貸し切り状態だった。もちろん、他の車両にはお客さんがいましたよ。
 

実家は、築100年以上の木造家屋なのだが、冬は寒い。とてつもなく寒い。どこをどうやっても隙間風を感じる。父親が亡くなり、母親は入院中なので、家には叔母が一人きり。検査が陰性とはいえ、前回の帰省と変わらず、隔離生活で過ごす。

喪中での年末年始帰省だから、正月らしいことはなし。仏壇に線香をあげて、庭にあるお稲荷さんの社を掃除して、スーパーに買い物に行った。人が少ない時間に行ったつもりが、そんな時に限って知り合いに遭う。というか、人が少ない時に知り合いがいると、広いスーパーでもすぐに見つかる。「見つかる」と感じるということは、後ろめたいことがないつもりでも、遭いたくないなにかが、自分の中にあるのだろうか。

別に冷たく接してくるわけではないが、どこかごきちない感じがした。話の流れの中で、検査が陰性だったことを伝えると、「あ、そうなんだ。よかったですね。」と、いう言葉とともに、急に距離が縮まったような気がする。たぶん、気のせいじゃない。

様々な人と、お互いに精神的衛生を得られるのであれば、PCR検査は、定期的に受け続けようと思った。そのほうが、検査を気にして、日常の生活において気を抜かずに気を付けるようになるし、受けるからには、「陰性という成果」を求めるようになる。国内添乗を始めて、多くの人と接する機会が増えた自分にとっては、決して小さな成果ではないし、なにより心理的な印籠になる。

 

そうやって、前向きな気持ちを、あらためて作ろうとした時、首相の会見が始まった。

いよいよ緊急事態宣言が真実味を帯びてきた。そうなったら、GOTOトラベル再始動も絶望的だ。首相も記者からの質問に対して、そう答えている。

「遅い。11月にやるべきだった。」

との声が聞こえる。でも、国内旅行業が一瞬でも生き返り、わずかながらでもコロナ禍を生き延びたあの状態を見たら、僕らにとって11月の宣言はありえなかった。たとえ、後々の検証で、それが正解だったとしても、今の僕らには考えられない。始まる時期がいつでも、旅行業界にとってそれは、暗黒期間の始まりだ。

一方で首相は、二月末からワクチン接種が始まると明言した。今は、この成果を祈りながら、次の行動を考えるしかない。

不安だなあ・・・。

 

東京の感染確認者数 28143816、本日4884。重症者数は過去最高の108

山陽と山陰の見どころを巡る2泊3日のツアーから、昨晩帰着した。

1228日から1月11日までGOTOトラベルキャンペーンの停止が決まって以来、年内最初で最後のツアーだった。

すでに多くの影響があり、通年、人で溢れかえっている倉敷美観地区、出雲大社や厳島神社もガラガラ。普段なら嬉しいのだが、こんな時期だから素直に喜べない。多くの旅行会社が、GOTOが絡む年末年始のツアーを潰すだけでなく、「キャンペーンがなくても行きたい!」というお客様の声を押さえてまで、その時期のツアーをすべて潰している。現場で行き交う添乗員の間でも当然話題になり、団体予約が全くなくなったレストランや土産屋、ホテルなどは悲痛な声をあげていた。

「感染者は増えている。でも、うちの施設では出ていないのに・・・」

という思いが透けて見える。

誰も、年明け12日以降にキャンペーンが再開されるとは思っていない。仮に感染者が劇的に減少したら「やはりGOTOトラベルが原因だった。再開すべきでない」ということになるだろう。減少しなかったらしなかったで「人の動きを少しでも止めなければいけない時に再開すべきではない」となるに決まっている。こういうものは、一度止めてしまうと再開は困難だ。だから、政府は引っ張れるところまで引っ張ったという見方もできる。それが、正しいかどうかは別として。今、彼らが言っている「再開」は、あてにできない。

 

観光地の人々は、笑顔で接客していても、泣いている心が、その言葉の中に見え隠れする。

 

僕ら添乗員も追い込まれつつある。派遣添乗員に対する支援金は、来年の2月まで出されることになった(派遣元や添乗員の条件によっては出されていない場合もあるので、全員に当てはまるわけではない)。もし、そこまでもらい続けるとなると、コロナ禍が始まって丸々一年それに頼りっぱなしということになる。

10月くらいまでは、「自分が動かないことで、感染者増のリスクが下がる。自粛のため」と、平然ともらっていた。「不十分な支援金」とマスコミが騒ぐ一方で、それが機能していた現場は確かにあり、僕は、たまたまその中にいた。

「自分たちはただ辛いだけなのに、そちらは随分と恵まれていたのだな」という批判はあるだろう。だが、感染を広めないため、「なるべく動かない」ことを実践するためには、必要な支援金でもあった。

コロナ禍を早く終わらせたい気持ちがあったから、仕事がないストレス我慢したし、正直、ここまで続かないだろうという予測もあった。(あえて甘かったとは言わない。こんな騒ぎ、誰にとっても初めてのことだし、正確に予測できた人などいるわけがない)

 

しかし収束しない。コロナ禍は、一年どころか、このままでは永遠に続く勢いだ。これまでの僕らに対する支援金は、「コロナ禍を広げないために、できるだけ人の動きを止める」狙いがあり、僕らも、それを理解していたから、極力動かなかった(時には、場所や時期を選んで外食や帰省はしたが)。

周りの人々も、それを理解してくれていたが、それもそろそろ終わりだろう。

 

「一年経ったんだよ。どうするの?これまで何も考えていなかったわけではないよね?」

 

と言われる時が、すぐそこにまで迫っている。こういう言葉は、ある日いきなり投げかけられるから怖い。収束後、海外旅行の現場に戻るかどうかはともかく、僕らにとって、本格的な正念場が来た。添乗員にとって、決死の期間がやってきた。さてどうするか?とりあえず、食べられる仕事をしなければ。

 

こんな時でも、僕は海外添乗員に戻ることはあきらめない。それだけは、ここに誓っておこう。
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雪の日の大山。太陽が昇り、山が朝と夜明けの境界線となっていた。
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倉敷美観地区より

ツアーが来た!

 

夢の中で、海外旅行が再開されて、ツアーが僕にも割り振られた。行先は覚えていない。でも、ツアーが来た。夢の中でツアーが来た。

夢の中で、その嬉しさを、ここに書こうと思った。

 

ツアーが来た!

 

ツアーが来た!

 

ツアーが来た!

 

ツアーが来た!

 

ツアーが来た!

ツアーが来た!

 

でも、おかしい。なにか書こうとしても、これしか書けない。違うことを書いたつもりでも、読み返すとこればかりが繰り返されている。

それでも書こうと、指に力を入れたところで目が覚めた。

 

ツアーは来ていなかった。

海外ツアーはまだ来ない。

海外ツアーは、まだまだ来ない。

海外ツアーは、永遠に来ていない。

 

僕の心は、自覚するよりも追い込まれているのだろうか。それとも、たまに噴出するストレスが、たまたまこの夢になったのだろうか。

今日は、年内最後の国内ツアー打ち合わせ。出発は明後日の20日。現時点では出る予定だ。「現時点では」というのは、この時期、出発前日に、いきなりお客さんがいなくなることもあるからだ。どうなるか分からない。

 

でも、少しでも旅に出たいお客様のために、これから打ち合わせに行ってきます。

ツアーよ。来い。

GOTOトラベルの在り方が一気に変わった一昨日。

メディアは、それを含めたコロナ禍一色に包まれた。(夕方になったら、座間の殺人事件の判決が入ってきたけど)

 

そんな中、僕は、20日から予定されている年内最後の担当ツアーのことを考えていた。LINEやメールで携帯が鳴る度に「催行中止」の知らせかと思い、どきりとした。いや、今も継続中だ。この感情は、コロナ禍が本格的に広がった3月に、次々とツアーがなくなった時の不安感、恐怖感とよく似ている。

 

「1月も忙しいからよろしくお願いします!」というアサイナー(派遣元のツアー割り振り担当)の言葉が、虚しく思い出されて、頭の中で響く。ちょっと前までは、そんな状態だった。しかし、今後、ツアーが激減することは間違いない。国内添乗で実績を上げていない僕に、今後仕事が回ってくる確率は、限りなく低い。

 

実は、前々回の北海道ツアーで掴んだものがあり、それを実行した結果、前回の関西ツアーはとてもうまくいった。自信をつけるためにも、あと一本は出ておきたかったが、そんなことを声高に主張することも許されない状況となってしまった。

 

今は、派遣元からの連絡が怖い。打合せは18日。それまでが長い。明後日が、とても遠く感じる。

 

おそらく、忙しい対応に追われている旅行会社の皆様、本当におつかれまです。

凍った空気は、あえてそれを無視したガイドさんの軽快なトークで、和んだように見えた。

しかし、時々バスの後部座席から、コロナの話題が聞こえてくる。こういうことは、一度気になりだすと、なかなか頭から離れないものだ。毎回同じお客様を案内しているわけではないし、旅行先も違うから一概には言えないが、前々回の山陰、前回の北海道、そして今回と、お客様が旅に集中できている時間が短くなってきているような気がする。ここ最近、頻繁に感染者数が最大を更新しているのだかそれは仕方ない。

感染の第三波が来て、GOTOトラベルの是非が問われるようになってから、お客さんの傾向はいくつかに別れる。

    コロナ禍を気にせず旅行されている方。あるいは、一見そう見える方。

    コロナ禍を気にしているが、自分は感染しないと思っている方

    コロナ禍を気にしているが、自分は感染しないと思いつつ、まわりの目を気にする方。

最近多いのは③だ。というより、最初は①か②でも、騒ぎが大きくなるにつれて③に近づいていく人が多いということなのだと思う。「キャンセル料が無料なら旅行を中止していた」というのが、このタイプだ。

どのタイプにも共通しているのは、自分は感染しないと思っていても、旅行会社や宿泊施設が掲げる感染対策には、全面的に、それもかなり前向きに協力してくださることだ。手の消毒などは、みなさん徹底的にしてくださる。それが「感染しないと思う」心の支えや理由になっていると同時に、ツアー仲間に対するマナーのひとつにもなっている。

 

当然、みなさんGOTOキャンペーンが、槍玉に上がっていることに納得していない。感染者の急増を、GOTOのせいにされることを、はっきりと嫌う。

「それが一番の理由であれば、とっくに増えているはずだ。」

そのとおり。GOTO支持派の多くがそう思っているように、彼らも皆そうだ。

「ツートンさんはどう思いますか?」

出た。時々添乗員は、専門家並みのコメントを求められることがある。その業界で働いているから、ある程度の意見が求められるのは当然かもしれないが。

 

GOTOトラベルが、人数急増の一番の原因と言われたら、それは違うと思います。」

みなさんが頷いた。

「でも、キャンペーンを一時中止したら、感染者は減るような気がします。」

みなさんが、「なぜ?」という表情になった。ここ数日で、僕の考えは、少し変わった。

「経済活動で、今、一番目立っているのがGOTOトラベルですから。『GOTOが認められているのだから』と、それを理由に自由に動いている人たちっていると思います。GOTOが中止になれば、社会の空気が引き締まることは間違いないでしょう。あれだけ政府が頑なに続けていたものを中止すると言うのですから。」

思ったよりも、みなさんが真剣に聞いてるから緊張した。

「つまり、GOTOをやめて人が動かなくなるというよりも、その影響で、国民がより慎重になって、新規感染者が減るんじゃないかと。GOTO中止の影響よりも、その副産物の影響が強いと思います。」

「すごいね。」

ある男性客に言われた。

「なにがですか?」

「実に最もげなことを言う政治家のような発言だ。立候補しない?投票するよ。」

「ありがとうございます。」

「でも、中止になったら、業界もまずいんじゃないの?」

「非常にまずいです。傷口が広がるどころか、間違いなく死ぬところも出てきます。」

「それでもそんなこと言うのですか?」

「これ以上、感染者数が増える中で続けてから中止となると、GOTOどころか旅行そのものの再開まで、余計に時間がかかってしまうような気がして。・・・難しいですよ。」

「難しいものだねえ・・・。」

「本当にねえ・・・。でも、だから業界としては、よけいに感染者を出していないという実績をつくりたいのですよ。こういうのって、後々マスコミで検証されます。今、GOTOを中止にして、感染者数が減ったら『やはり』と、一時的には旅行が悪者になります。しかし、細かい検証の結果、GOTOそのものよりも、副産物の影響のほうが大きかった・・・ということになったら、旅行業界の勝ちですよ。結果が出てから『そう思ってたんだよ』ではダメ。先に予測して『ほら言った通りだ』と言いたいですね。」

「ツートンさん。本当に選挙に出なよ。演説で当選できるよ。投票するよ。」

「ありがとうございます。しません。」

 

「でも、副産物っていうのは、本当にあるかもね。」

別のお客さんが呟くように言った。

「この後予約してあるツアーもあるんだけど、いつまで行けるかなあ。」

「私たちは、一旦これで終わり。この後はキャンセルしました。子供たちが医療関係で仕事をしていて、『お願いだからやめてくれ』と言われまして・・・。だから、本当に今回だけは楽しみたいのです。」

もはや、自分の都合だけで旅行できない人たちも、たくさんいらした。

 

こんな会話は、この時だけ。それでも、旅の中で揺れるお客様の心の中が、少しだけ見えたこの日。

 

姫路城が美しかった。

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今日、ギャラが振り込まれた。我が派遣元では、実働の翌月末日に振り込まれる。
3月2日にアフリカから帰国して、最後の振り込みがあったのが、4月末日。助成金と支援金を除けば、自分の口座に振り込まれる、それ以来の久しぶりの収入だった。
実働3日間だから、わずかなものだが、久しぶりに「稼いだ」という実感があって嬉しい。支援金に頼りっぱなしなのも悔しいし、貯えが減っていくだけなのを眺めているのも悲しかった。お金をもらうべき仕事をこなして、その対価を手にする喜びを、今日は久しぶりに味わった。支援金があって生活できても、ギャラがなければ、こんなにも虚しく悲しいものなのだということを、この半年間で嫌というほど味わっていたし、正直、屈辱だった。それが終わったこの日は、僕にとって大切な日だ。ここから、また始めよう。

ところで、国内添乗を始めてから、週に半分近くは温泉に入っている。国内添乗専任の添乗員の楽しみのひとつに、頻繁に温泉につかれるというのがあるらしいが、それをとても理解した。これだけ入っていると、肌がツルツルすべすべするのを実感できるようになる。これが、女性がよくいう「きれいになっている」のを自覚するということなのだろうか。
これが所謂、「見せたい肌づくり」ということなのだろうか(ちなみに見せるつもりはまったくない)。だとしたら、美容ってけっこう楽しいかもしれない。

今日、GOTOトラベルキャンペーンの5月までの延長が提言された。承認されたとして、その先にあるのは?東京の一時的除外?緊急事態宣言?経済を保持しつつ、ウィルスに打ち勝つ動きはこれから始まる。
僕も、きれいになった肌で、すべてを受け止めて戦わなければいけない。

どんなにつらい状況でも、少しはいいことはあるものだ。僅かでも収入を得たり、肌がツルツルすべすべになったり。

昨日、宿泊した玉造温泉のホテルは、実に感染防止管理が徹底していた。チェックイン時の検温や消毒はもちろん、施設が作成した健康チェックシートが配布されて、団体客は、その記入が終わって、健康上問題ないと認められないと、バスから降りることさえできない。

館内のあちこちには、これまで見た宿泊施設以上に消毒用アルコールが設置されていた。大浴場の洗い場も、半分が利用停止でもちろんサウナも禁止。浴室のスリッパは、脱ぎっぱなしにせず、ビニール袋に入れて脱衣場まで持参。夕食時は、夫婦でさえ対面ではなく対角線。今回のお客様にはいらっしゃらなかったが、五人以上のグループは、二つ以上のテーブルに分けるという徹底ぶり。なんだか、無理矢理旅行させてもらってるような感じだった。

温泉でゆっくりしたり、買い物や温泉街の散策を楽しまれたり、一見旅行を楽しんでいるかのように見えるお客様たち。分かっていることとはいえ、息苦しさを感じていないか心配になった。

そんな不安を払拭してくれたのが、夕食会場のスタッフだった。会場の確認に行くと、

「今日は、ゆっくり料理をお出しします。鍋が食べ終わるころに、揚げたての天ぷらをお出しして、デザートもゆっくりと出します。本日は、『ゆったりキャンペーン』です。」

と、張り切って提案してくれた。正直、僕自身利用するのが初めてのホテルで、今までどんなサービスをしていたのかも知らなかったので、「そうですか。よろしくお願いします。」としか言えなかった。

 

ピンと来ていない様子の僕を見て、彼は苦笑しながら説明してくれた。

「コロナ騒ぎのせいだと思うんですけど、最近のお客様は、あっという間に食べてお部屋に帰ってしまうんですよ。会話やお酒を楽しみにくい時勢なのかもしれません。せっかくの温泉での食事ですから、ゆっくり食べて、楽しんでいただけるようなサービスをします。皆様にも、そのようにお伝えください。」

会場入りされたお客様たちにそのことを告げると、にっこりされる方が多かった。

「ゆっくり飲みながら食べられるんだね。嬉しいよ。」

はっきりと、そう言葉にされた方もいらした。コロナ禍の現在、食事は会話とお酒を控えめに、さっさと切り上げなければいけないと思ってる方が、やはり多いようだ。だから、わざわざホテル側からそのような提案をいただけたことが嬉しかったようだ。

「対策は、感染防止が目的ではありますが、みなさんが、安心して楽しめるようにするものでもあります。ゆっくりとお酒と料理を楽しめないなんて、温泉旅行とは言えませんからね。」

もちろん、コロナ禍など関係なく、食事をさっさと終えて帰りたい方々もいらっしゃる。そういった人たちには、融通を利かせて迅速なサービスがされた。

 

カニを含んだ本格的贅沢和食を楽しませた後は、がらりと雰囲気を変えて、まるでパリやウィーンのカフェで出されるかのようなムースケーキが出てきた。ちょっと感動した。料理にもサービスの心意気にも。

 

全ての方々の食事の時の笑顔は、コロナ禍の中での「コロナへの勝利」を物語っていたと思う。それが、たとえ、その瞬間だけであってもだ。

 

と、強がってみたら、今日になって札幌と大阪のGOTOトラベルキャンペーンの一時除外のニュースが飛び込んできた。あー・・・やはり来たか。

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出雲大社に隣接する北島国造館にある神尾の滝。すぐそばに拝殿や本殿があるのに、ここはとても静か。敷地に入った途端に小さな滝の音が響き渡る。
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